第ニ章 その9
街のあちこちでクリスマスソングが流れ、あちらこちらがクリスマス飾り一色であった。
そんな中僕は夏夜と一緒に川内さんの家へ向かっていた。
え?もうすぐ午後5時なのに。と思ったら、なんとクリスマス会を行うとか。
…マジで?
そんな事など色々なことを思っていたらあっという間に着いてしまった。
いやー。歩くと長いな。徒歩約40分。1人だったら自転車で行くのだが、夏夜がいる状態で自転車乗っても夏夜を置いていってしまうので仕方なく歩いている。置いていっても全然大丈夫なんだが。
ピンポーンとインターホンを鳴らす。
ガチャと扉が開く。
…
……
………
「どう、似合うかな…?」
川内さんが着ていたのはそれはそれは素晴らしきミニスカサンタ衣装であった。
「うん。すごい似合うよ。」と言う。
が心の中では
さて、どこからツッコミましょうか。となっていた。
でもツッコンだらそれはそれでダメな気がするのでツッコムのをやめた。
決めた。サンタさんに関するツッコミはやめて今日は楽しもう。うんそうしよう。夏夜が計画立てたのか川内さんが計画立てなのか知らないが今日は楽しもう。
「びっくりした?夏夜ちゃんと2人で考えたんだ。サンタ衣装のことも考えていて――」
自ら名乗り上げてですか!?てか共同計画だと!!?てっきり夏夜が衣装も含めて全てを仕切っていたかと…。
川内さんの部屋に入ると、部屋は暖房が聞いていて、装飾も完全クリスマス一色。この装飾は本気だ。
「はいどうぞー♪」
ミニスカサンタさんは大皿に山盛りの骨付きチキンを持ってきた。
そしてもう一度下に行き、戻ってくると片手にホールのケーキが入った箱と取り皿数枚そして包丁を2本を持ってきた。
「綺麗に切り分けてね♪」
怖い。怖いよ川内さん。
完全に包丁を持ったミニスカサンタの殺人鬼ですよ。
その殺人鬼は丁寧に包丁を机の上に置いた。
「と…とりあえずケーキを切り分けよう!」
そう言って僕は箱の中にあるホールケーキを慎重に取り出した。
英語で『メリークリスマス』と書かれた板チョコとサンタさんの砂糖菓子を一旦端に置き、3分割しようとするが、奇数は分割しにくい。
どのように割るか迷っていると「4分割でいいよ。」と川内さんが言った。
「え、あと1切れどうするの?」と言うと「あと1切れを平和的に取り合うんですよ。」とヘソチラ状態で赤い衣装を着た夏夜が獲物を狙う目をしながら言った。
…お前、いつ着替えた……。
ケーキを4分割して小皿に1切れずつ渡す。
余った1切れ…。
「はーい。この人切れはサンタさんと板チョコ付きでーす。」
川内さんがその余った1切れに砂糖菓子のサンタさんと英語で『メリークリスマス』と書かれた板チョコを載せる。
場の雰囲気的に全員参加らしい。まあ、甘いのは好きだから……
――遠慮せず行かせてもらうぞ。
「せーの――」
「「「じゃんけんぽん!!!」」」
ま、僕は別に1切れで十分だったんだけどな。
勝負は1発で決着した。
夏夜は「あまい~」とめちゃくちゃ幸せそうな顔をしながら小さな小さなサンタさんを│捕食《食べて》していた。
こう、じーっと見ていると夏夜の絵がエグく見えてきた。まるでサンタさんが得体の知れない巨人に食べられている。みたいに見えてきた。
ケーキもチキンもあっという間に無くなってしまい、さあお待ちかねのプレゼント交換!!とはならないらしく(むしろ誰もプレゼントなんて用意してない)、後は少しここでいろんな話して過ごしてお開きらしい。
今年も残りわずか。
それは同時に受験日まで残りわずかということだ。
──追い込みをかけなければ。
そう誓った1日でもあった。




