第二章 その8
あれから3日後の夕方。
僕はあの洋風の建物のドアを開けた。
「「いらっしゃいませ」」
「あ。天城さん。」
「こんにちは。」
「今日は制服姿なんだね。」
「学校帰りなんで。」
そう言って僕はカウンターの日曜日に座った席と同じ椅子に座った。
「あの、この前のオリジナルブレンドコーヒーをください。」
「はい。かしこまりました。」
雪さんがそう答えるとクルリと回ってコーヒーを注つぐ準備にせっせととりかかった。
「天城君。彼女可愛いでしょ。」
「ええ。はい。」
少し変な受け答えになってしまった。
「実は好きになっちゃったとか。」
マスターが僕に耳打ちでそう言った。
「いやいやいやいやいや……」
僕は慌てて拒否した。ましてやたった1日で惚れることなんて――
…いや、あるか。
「彼女ね、君が帰った後、『また来ないかな?』とか『友達になれるかな』とか言っていたんですよ。」
「ちょ…ちょっとマスター!それ誰にも言わないって約束だったじゃないですか!」
彼女の顔が一気に真っ赤になっていくのがわかった。
「でも雪くんはマスター以外の生きている人間と話がしたい。同年代ぐらいの友達が欲しいって言っていたから…寂しかったんじゃないかな。」
そうなのか…。
で、マスター。
後ろ姿なので雪さん表情は全く読み取れないが、コーヒーカップがすごいカタカタ言ってるぞ。
まっっ赤な顔をした雪さんは俯いた状態で「オリジナルブレンドコーヒーです。」と言って置き逃げして中へと消えていった。
「やれやれ。雪がとんだ御無礼を。」
「いえいえ、大丈夫です。」
マスター。大体貴方のせいだと思いますよ。
「まあ、ゆっくりしていってください。」
「はい。」
彼女の入れたコーヒーを見ると雪さんの表情が脳裏に浮かんだ。
熱々のうちに飲んでみる。
――あれ?
前より味が美味しいような。
「マスター。」
「なんですか?」
「このオリジナルブレンドは日替わりなんですか?」
「そんな頻繁には変えませんよ。1年に1度あるかないかぐらいですけど、なんか満足になりませんでしたか?」
「いや、前回来た時より何故か美味しく感じて…。」
「きっと雪くんの愛情なのでしょう。」
『愛情』か――。
間違ってないかもしれない。マスターが1から作ったコーヒーも飲んでみたいが、雪さんが引いて注いだコーヒーは本当に美味しい。
――ふぅ…。
体が温まる。
雪さんの愛情籠ったコーヒーは僕の心を温めてくれた。




