戦慄する関係
ルイ王子により閉じ込められたロイ王子。
まあ、表向きはそなっているけれど……結局客が尋ねるのは自由なわけで。
私達四人は積極的にロイ王子の部屋に遊びに行った。
祭りで仲良くなった獣人達にも、事情を話して顔を出すように言ったので、ロイ王子は退屈はしていない様子だった。
獣人達の写真などをもって訪ねていくと、嬉しそうに対応してくれるロイ王子は、やっぱりロマンヌ国に興味があるらしい。色々な伝記や、風習などの話も興味深く聞いてくれた。
「やっぱり獣人のみんなは穏やかな人が多くて、いいな」
「そうかな、ロイ王子」
「クリス。人間も悪い人は少ないが……選民意識はどうしても高い」
「人間は賢いから、文明も発達しているからね……獣人は逆に自然を望むから、のんびり文化も発達していく。それを送れてると受け取る人間もいるけれど、私はそれがのどかでいいと思ってるよ」
人間の国では電気などがしっかりしているし、色々な器具も売っているようだ。
こちらが魔法で成し遂げていることを、あちらは科学でやっている。
だからこそ誰でもが、魔法のようなことを行うことができていて平等ともいえる。
この前ロイ王子が絵に描いて見せてくれた電気器具は、私の元いた世界では当たり前にあったものたちばかりだった。
「お互いの文化を分け合えば、もっといい国になるはずなのにな」
「……本当だよねー。オレもそう思うよ、ロイ王子」
「チェリー……お前もそう思うんだな」
「僕はあまり……それぞれの国は国でいいんじゃないかと思うけどな」
「ブルーノ……」
私は使用人をあえて入れないようにしたので、今は代わりにハーブティーを入れている。リラックス効果のあるハーブで、気分を穏やかにしようと思って。
チーズのはさんであるビスケットを食べながら、のんびり皆でしゃべる。
本当に、ロイ王子と喋っているとまるで人間と獣人の壁がないように思えてくるけれど、現実はルイ王子を見ると実感してしまう。
人間の大半は、ルイ王子と同じ意見なのだ。
もしかしたら、そうじゃなくルイ王子がそう言っているから、そう言う言意見なのかもしれないけれど。だって彼にはカリスマ性があるようだから。
病弱であまり表に出ないからこそ、神秘性をまとうのかもしれない。
「もちろん、諍いはないほうがいいと思う。僕も」
「だよねー、オレ、そう言うの嫌い」
「騎士団目指してるのにな……」
「ブルーノお兄ちゃん、それはまた別問題じゃ無い?」
「……ボク難しい話よくわかんない」
「ショート君は仕方がないよ」
「でも、ボク王子だし、もっと勉強しなくちゃ……」
「ショートはえらいね」
「クリスおねーちゃん……うんっ、頑張るよっ」
ああ、可愛いなショート……シッポ振りながらにこにこされると、こっちがとろけてしまいそう。ロイ王子もニコニコしているし、同じ気持ちなのだろう。
割と頻繁にショートとロイ王子は交流している。弟気質のショートを撫でたりして、兄弟みたいにふるまうロイ王子を見ているとなんだかほほえましい。
さっきもショートの口についたチーズを、ロイ王子がぬぐってあげていた。
くすぐったそうに笑うショートは、やっぱりシッポを振っていたし。
「そこで何をしてるんだ……」
「兄上」
腕を組んでイライラした様子のルイ王子が現れた。
不機嫌そうにため息をつくと、ショートをロイ王子から引きはがす。
「きゃんっ」
「ショート」
「何じゃれてるんだよ君たちはっ、何のために閉じ込めたと思ってるんだ」
「ロイ王子は部屋から出てないもんっ」
「口答えするなショート王子」
「ひゃんっ」
大人に近い年齢のルイ王子と、中身も見た目も子供なショートじゃ、さすがに勝ち負けは目に見えていた。ショートが半泣きになって私に引っ付いてくるのは、数秒もかからなかった。
「兄上も、もっと獣人と触れ合いましょう。ショート王子は可愛いです。撫でてみませんか?」
「はあ……何を言い出す」
「抱っこもすれば、もっとかわいいですよ」
「ふんっ、理解できないな」
そこで空気を呼んだショートがルイ王子に走り寄っていく。
可愛い顔をして、上目遣いに抱き着くショート。
「!」
おびえながらも、ショートは尻尾を振って可愛くすり寄っていった。
この芸当ができるのは、ショートならでは。
「撫でて、ルイ王子」
「何でだ……」
「ボク、撫でて欲しい」
「……理解に苦しむ! ぼくはお前の敵の国の王子だぞ」
「それでも、仲良くなりたいから……撫でて」
「……わかった。どうせ撫でても何とも……ん……? あ……」
撫でだしたルイ王子は、一瞬顔を緩ませた。そして自分に言い訳するかのように首を振った。しかし、ショートはまだ寄っていく。
「撫でて!」
仕方がなしに、ルイ王子はショート撫で続ける。
ルイ王子のどんどん緩みそうになっている表情に、心の中でガッツポーズしそうになる私。とどめに、ショートが満面の笑顔でほほ笑むと、ルイ王子が飛び跳ねた。
「別に、なんでもないじゃないか!」
「ルイ王子、もっと撫でてー?」
「くだらないな。僕は忙しいんだ。戻る!」
「兄上」
「獣人の良さなんか全然わからないっ」
「でも、今幸せそうでしたよ?」
「気のせいだ!」
顔を赤くするルイ王子。確かに幸せそうだったと思う。
ショートがシュンとしている。
「ルイ王子とも仲良くしたいもん……」
「それは無理だね、ショート王子。そのミミとシッポをとってからでなおしてきたら」
「……ふえ」
「!? 泣くのは卑怯だろう!?」
さすがにぎょっとしルイ王子があたふたする。
大粒の涙を流すショートを、私はなだめる。
「獣人だから、仲良くなれないの? ボク、ルイ王子とお友達になりたいのに……」
「……ショート、よしよし」
ショートをチェリーまででもがあやし始める。
本当、ショートはみんなにかわいがられてるなあ。まあ、可愛いし仕方がないけれど。
「獣人の良さなんかない、だからわかりようがないんだ!」
そう叫んでロイ王子の部屋を飛び出していくルイ王子。
対して、ルイ王子は冷めた目で彼を見ていた。
「……わかろうとしないの間違いだろう、兄上」
そうつぶやくロイ王子は、ため息をついてどこかぐったりした様子だった。




