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国を創りて何を成す  作者: 灰色人生
I始まり
7/19

7話

 


 数日後王都の見える丘に到着した。


 予め先触れを出していたお陰で大きな混乱は見られなかった。



 グランツはそこから王都の外周に配置されている魔装機兵を大きさはティターンと同じ10mほどでその姿は騎士を彷彿とさせる姿形だ。


 武装はここから見る限り右手には槍を左手に盾を持ち腰には一振りの剣を下げている。


 他の武装はここからでは今の所見えない。


 じっくりと双眼鏡で魔装機兵を観察していると王都の門が開きそこから魔動車が一台やってくる。



 丘に到着した魔動車の中からは騎士服に身を包んだ人物が出て来て跪く。


 隣にいるオルテシアはその騎士服に身を包んだ金髪茶眼の青年を知っているのか一歩前に進み出て「トールソン卿。御父様は何と仰っていましたか?」と質問した。



「はっ!殿下。国王陛下は『フリーデ国の皆様方を心より歓迎申し上げる』と仰っておられましたが何分今は戦時中故に歓迎式典などを挙げる事は不可能だと残念がっていました。それと出来るならば王都へと入るのは少人数でお願いしたいとの事です。民達には援軍に来たと申しておりますが何分今は戦時中の為に不安がっていた民達も援軍に喜んではいますが、この様な大人数を収容出来る施設が今はありませんので控えて貰えないか…と」


 この規模の人数を収容出来る場所と言えば兵舎などだが平時なら兎も角、今は戦時中であり各領地から収集した貴族軍が使用している為に空きがない。


 その為にこの人数を収容出来る施設が今現在王都には存在しない為に心苦しいが王都へは入れないとの事情らしい。


 グランツはその事を快く了承した。


 別に多少の野宿などで士気が低下するほどフリーデ国軍軟弱ではない。


 それにグランツの能力によって多少の怪我や病気ではビクともしない。




 ◇


 遡る事数日前。


 まだオルテシア達がフリーデ国領海に侵入していない頃。


 その日はグランツはスマモを弄りながら何か他に出来る事は無いかなと思っていると下に新機能追加と表示された項目があったのでタッチすると50,000ポイントと引き換えに新たに新能力を獲得出来ます。


 と書かれていたので迷う事なくタッチしてポイントを消費すると項目にスキルと書かれた欄が出来ていたのでそれをタッチすると、以下の項目が表示されていた。


 超回復能力12,000


 超兵化9,800


 魔法取得6,500


 レベルに応じて新たに解放されます。


 と表示されていた。


 そう言えばスマモの左上に確かLevel6と表示されていたな。


 それが関係するのだろうか。



 グランツは表示されていたスキルを全て取得した。


 超回復能力は即死では無い限り自身の魔力を消費して即座に治癒する優れ物だ。


 怪我の具合などにより消費魔力は変わるが有難いスキルである。


 次の超兵化はグランツが召喚した兵士たちの身体能力等が大幅にUP⤴︎するらしい。


 多少の怪我や病気はすぐに癒せる様になり身体能力も常人の6倍にUP⤴︎すると説明文に書かれている。


 更に多少だが魔法も使える兵士が稀に誕生すると書かれている。


 最後の魔法取得はそのまま魔法を取得出来るようになるという事だ。


 だがいかんせん現在のフリーデ国には魔法が使える者は皆無だ。


 その為に悩んだ末グランツは潜入調査部隊に魔法書を持ち帰る様に命令した。


 数日後グランツの元に魔法書が到着した。



 早速読もうとしたがその前に他にも仕事が山の様にある為に其方を優先した。


 現在魔法の取得にはそれほど優先度は高く無い為だ。


 そうこうしているうちにオルテシア達が来た為に未だに魔法書は読んではいないが懸念事項はすでに解消済みだ。


 それは文字の読み書きだが問題なく読めてそして何故か自然とこちらの字が書けた。


 フリーデ国では主に英語だが大陸語を意識すれば難なく書けた。


 その為に調印も滞りなく進んだのだ。


 ♢


 オルテシアはこちらに振り返り「オディウム陛下よろしいでしょう?」と聞いて来たので構わない、と了承した。


「ありがとうございます。……トールソン卿その様に御父様にはお伝え下さい。それといつになれば私達は、中に入れるのかしら?」


 言外にこれ以上グランツと私を待たすな!と告げているのだ。


 それにトールソンと呼ばれた男は「はっ!誠に申し訳ありませんが今暫くお待ち下さいませ」と冷や汗を流しながら伝えた。



 どうせ王宮で揉めているのだろう。


 現在王宮では、徹底抗戦派と講和派、そして同盟派だ。


 徹底抗戦派は主に軍務卿などが中心で最後の一兵まで戦い抜くと豪語し、他国の救援は不要と宣っている。


 講和派は素直に降伏勧告を受け入れ用と動いている。


 主に内務卿達高位貴族が多くその大半は祖国パルミオン王国を裏切り、ラークタウン帝国と裏で繋がっている可能性が高いと出ている。



 同盟派は他国と同盟をしてこの危機を乗り切ろうとする派閥で王を中心に下位貴族達が結成した派閥である。



 この三派閥の三つ巴が現在王宮で繰り広げられており、せっかく援軍に来たフリーデ国を追い出そうと徹底抗戦派と講和派が一時的に手を結び妨害しているのだ。


 このことを諜報員から聞いたグランツはくだらないと鼻で笑い一個中隊を率いて王都の門へと向かった。



 トールソンは今少しお待ち下さいと言って来たが無視を決め込んだ。


 オルテシアも「私が許可をします。今すぐに門を開きなさい!」と門を守っている衛兵に命じて門を開けさせた。




 門が開いて中へと入ろうとすると眼前から騎馬の一団がやって来た。


 皆煌びやかな鎧を着ていることから貴族に関わりがある者達だろうと当たりをつける。




 やって来た一団は止まり馬上から「止まれ!」と命令して来た。


 それに対してアリッサが「貴様ら王女殿下とフリーデ国王陛下に無礼であろうが!」と腰の剣に手を添えて怒鳴る。


 フリーデ国の兵達も険しい顔をして手に持つ小銃に力を込め騎兵達を睨みつける。


 それに怯んだのか馬上の騎士達は素早く馬から降りるとオルテシアに対して跪き「馬上から失礼しました。王女殿下並びにフリーデ国王陛下」


 とチラリとこの中で一番豪奢な服を着ているグランツに目線を向けた。


 彼らもフリーデ国の王が来ているとは知っていても後ろの本隊に居るものと思っていた為に、まさかこの一団に居るとは思ってもみなかった。


 更に言えばグランツの着て居るものは確かに他のよりも豪奢だがそれは"軍服としては"と着く。


 グランツは軍服を着ており軍人然とした、態度をしている。


 その為に彼らもグランツが国王だとは思ってもいなかった。


 高位の軍人という認識程度であった。



 その為に彼らの顔はすっかり青ざめている。


 この国では彼らの親は確かに高位の役職に就く貴族であるが、所詮は役職の及ぶ範囲それも国内に留まる。


 なので他国のそれも王に対して馬上からの態度はマズイ。


 オルテシアに対しても不敬だが、現在は王の立場は度重なる敗戦により極端に弱くなっている為に多少の無礼と黙認されている。


 だがこの敗戦は王と言うよりも徹底抗戦派と講和派が足の引っ張り合いが波及した形でなったと言えよう。


 例えばある戦場では同盟派の参謀が撤退を進言しても徹底抗戦派の将軍がそれを否定し、あまつさえ講和派がこれ以上の戦いは無意味と物資の補給をわざと滞らせたりと酷い有様だった。




 そして破れたらその責任を全て王にあると宣う始末だ。


 王がしっかりとしていないからと責任を押し付け自身らは知らぬ存ぜぬを通すほど腐りきっている。



 そして帝国が大規模攻勢をかけて来た所にフリーデ国という、聞いたこともない国が援軍に馳せ参じたと言う。


 これには講和派も徹底抗戦派も驚いた。


 まさか、要請を受け入れる国があるとは終ぞ思ってもみなかった。


 ただでさえ王女の護衛を限界まで削り帝国に情報を流して海上封鎖までしたのにと徹底抗戦派と講和派は冷や汗を流す。



 そして入って来た情報は信じられぬものだった。


 帝国海軍海上封鎖船団400隻がフリーデ国海軍の50隻に壊滅させられたとの報告がもたらされた。



 なんでもガレオン船の最低でも2倍の大きさの鉄の船だったようだ。


 パルミオン王国とラークタウン帝国にも鉄で補強した装甲船が存在するがあまり装甲を重ねると重くなり、操舵などに支障をきたす為に必要最低限の場所のみだ。



 現在研究所で、魔力炉を活用した軍船を開発中だがその想定の規模よりも大きい船が多数との事だった。


 もし、これが事実ならパルミオン王国とフリーデ国には隔絶とした技術力の差があると言う事だろう。



 更に王国の魔装騎兵よりもフリーデ国の魔装騎兵は装甲が分厚くそれでいて王国の魔装騎兵よりも性能が良さそうとの報告も入っている。


 現在王都の防衛に当たっている魔装騎兵は最新の第3世代型魔装騎兵である。


 それが実はフリーデ国では一番下の性能の第一世代機とは夢にも思ってもいない。




 フリーデ国の一行とオルテシア王女殿下が開門を要求していると聞きすぐさまに講和派は高位の貴族の子弟の騎士を向かわせた。



 時間稼ぎの為だ。


 幾らフリーデ国の技術力が凄かろうと帝国の数とそして勇者には敵わないだろうと思い帝国が王都近くまで来るまでの時間勝負だと行動を移した。


 まずは急いで家財などを魔動車に積んで脱出の準備を進める。


 そして徹底抗戦派を煽りフリーデ国の参入を阻む様に動いてもらう。


 講和派はこの間に帝国軍を手引きして隠し通路に案内して中から制圧してもらうつもりだ。


 その対価に現在の地位の安泰を条件にしてこの国を売ったのだ。



 ◇


 馬上から降りて跪く騎士達はこちらの顔色を伺う様に見ながらもハッキリとした口調で「現在王宮では徹底抗戦派が貴国らフリーデ国の介入を快く思ってはいない次第です。その為もしかしたら最悪何かしらの妨害が起きる可能性がありますので今しばらく王都郊外のあの丘の上でお待ち下さいませ」と告げて来た。


 だがグランツはこれは講和派の時間稼ぎだろうと睨んでいる。


 その時グランツのそばに控えていた通信士から「ピポグリフ・ワンから報告が来ました」と告げて来たので一旦失礼、と断りを入れてHMMWVの車内に戻る。


 そこでピポグリフ・ワンからの情報を聞くとグランツは自身らの進路状にいるこの騎士の集団の捕縛を命じた。


 すぐさま部下達が取り押さえ手足を拘束して行く。


「オディウム陛下いきなり拘束とはやりすぎでは?それも貴国の臣では無く我がパルミオン王国の者達ですよ?」オルテシアが抗議の声をあげる。


 それにグランツは「ああ、確かに彼らは私の部下ではないが、もう貴国らの臣でもないぞ?」


 オルテシアは頭?マークをつけ首をかしげる。



「オディウム陛下一体それは、どう言った事でしょうか?」

 とオルテシアの後ろに控える侍従武官のアリッサが疑問を投げかけてくる。


 それにグランツは簡潔に答える。


「彼らはラークタウン帝国に寝返った裏切り者達だ」と告げた。


 その言葉に捕らえられた騎士達は顔を顔面蒼白にしてオルテシアやアリッサ達は驚き騎士達を凝視した。



 そして騎士達の顔が顔面蒼白になっている事に気付き驚きから怒りの感情に変わった。


 騎士の1人が「ま、待ってくれ!私達はただ命令されただけだ!悪いのはそこにいる隊長だ!」とこの騎士達の隊長へ視線を向けると隊長の騎士は「な、何だと貴様!貴様だって分け前を貰っているだろうが!それに知っているんだぞ、貴様街から逃げる事が判明した夜に気になっていた町娘を手篭めにしようとした事をな!残念ながらたまたま巡回の衛兵が来たから諦めたらしいがな」と言い他の騎士達もあいつが悪い自分は仕方なく。など醜い責任の押し付け合いを始め出した。



 オルテシアやアリッサ達パルミオン王国の者達は怒りを通り過ぎて皆呆れ顔だ。


 そしてオルテシアは自国の恥を同盟国の王であるグランツに見られて少し顔が赤くなっている。


 その様子を見て取ったアリッサが「貴様ら!いい加減醜い争いを止めぬか!」と一喝した。



「貴様らは皆後で追って沙汰が下されようぞ!」と言い駆けつけて来た衛兵達に牢屋へ連れて行くように命令した。



「ま、待て!そうだ!証拠はあるのか?なければ我々の名誉を毀損したとして例え王族だろうが相応の罰を受けてもらうぞ!」と騎士の1人が言い、他の騎士達も「そうだ、そうだ!」と同調する。


 そう言われオルテシアはそう言えば-ーとグランツの方に振り向く。


 グランツは「わかった。暫し待て」とだけ言い数分後市民の服を来た諜報員の男がやって来てグランツに証拠の書類を渡す。


「こちらが例の物です」


「良くやってくれた。引き続き頼むだぞ」


「はっ!お任せ下さい。総統閣下」諜報員の男は敬礼して街中へと消えて行く。


 グランツは騎士達やオルテシア達を見渡して「待たせたな。これが証拠の書類と写真だ」


 書類には講和派の貴族と帝国の者とのやりとりが書かれた物や、軍の規模や編成についての物など多種多様の軍事機密などを記した書類に、帝国との取引のサインが書かれた物などが書いていた。


 更には帝国の間者と会っている貴族の写真まである。


 加えて今までの不正の証拠もあった。


 写真は一応この大陸でも数週間前から急にカメラが(その精度は低いが)国の王族や高位の貴族に販売されていた為にすんなりと受け入れられた。


 因みにオルテシアも一台所有している。


 オルテシアはこの不正の数々に驚き、フリーデ国の諜報員の手腕と写真の精度き驚いた。



 ここにいる騎士達の不正の証拠もあった。


「貴方方のこの行いは国家反逆罪です。衛兵連れて行きなさい」オルテシアは自分でもわかるぐらい冷たい声で衛兵に命じた。


 衛兵達も騎士達に憎しみの視線を向けながらも連行して行く。


 オルテシアはグランツの方を向き「オディウム陛下。重ね重ねの無礼とこの国の裏切り者達の証拠を掴んで下さり感謝致します」深々とグランツに頭を下げる。


 オルテシアの後ろではアリッサ達も同じ様に礼をしていた。


「ああ、これは貸し1つだ。それと捕縛するなら今すぐ行動に移さないと逃げられるぞ?」と助言もする。



「わかりました。すぐに手配いたします。……アリッサ貴女に任せるわ」


 言われたアリッサは、敬礼をして「はっ!畏まりました!お任せ下さい!」と言い衛兵を引き連れて問題の貴族達の屋敷へと手分けして向かう。



 その後は何事も無くグランツ達は王城に到着した。




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