6話
パルミオン王国と同盟関係が終結したフリーデ国はパルミオン王国第2王女オルテシア・ミーニャ・フォン・パルミオンの援軍要請を受けて救援部隊を組織した。
今回は速さを重視して駆逐艦隊を第一陣に組み込み用意が出来次第順次出航させた。
駆逐艦に続いて航空母艦や揚陸艦が続く。
グランツは太平洋艦隊所属のジョン・C・ステニアに乗り込み本国の事は副総統のユーネに一任した。
今回がフリーデ国の初めての戦争に加えて大陸にフリーデ国を喧伝する為だ。
グランツに続きオルテシア王女も乗り込む。
彼女にはフリーデ国で待っていて貰うつもりだったが「自国の存亡に関わる一戦になるからと無理矢理にでも付いてく行きます!」と言い放ったのでそれならと許可を出した。
そしてパルミオン王国へ向けて王国救援部隊が旅立った。
約8時間後何事もなくパルミオン王国の領海まで入った。
ここで一旦停泊してオルテシア王女達が持参して来たエーテル通信機による連絡を行う。
『こちら、外交使節団。王城通信室応答せよ』
グランツはそれを側から見ていて何故暗号などを使わないのか疑問に思ったが口には出さなかった。
だがグランツの訝しんだ顔に気づいたのだろうとはビトケンティス准将が話しかけて来た。
「オディウム陛下。どうかなされましたか?」
「ん?ああ。何故暗号やコールサインを使わないのか、と思ってね」
ああ、と合点がいったのか説明してくれる。
「確かに民間のエーテル通信機でしたら傍受される可能性がありますが、軍用のエーテル通信機は各国専用の受信装置がなければ傍受出来ません。さらにその受信装置は口がちゃんと数を把握しているので1つでも無くした場合には取り替えを行いますので大丈夫かと思われます」と説明してくれた。
いまいち納得は出来なかったがこれがこの世界での標準対策なのだろうと口には出さなかった。
「そうか、わかった」とただそれだけ返事をした。
そうこうしているうちに繋がった様だ。
『こちら、王都通信室。やけに早く戻って来たな。問題なくファルラント大陸へと渡れたのか?』
『いや、ファルラント大陸には行けなかった』
そうこちらが答えると向こうの通信室の人間は落胆した声色に変わった。
『…そうか……なら援軍の見込みはなし…という事だな』と今にも泣き出しそうな声色だ。
『いや、ファルラント大陸には行けなかったがその代わりにフリーデ国と同盟が結成され今私たちはその国の艦隊と共に現在パルミオン王国の領海までやって来ている』
『……な、何⁉︎それは本当か⁉︎…良くやってくれた!残念ながら私はフリーデ国を寡聞にして知らないがそれでもありがとう!』
『すぐに王に繋ぐ』
と言い何やらバタバタと聞こえる。
数分後また繋がった。
『お待たせした。今陛下へとお変わりになる』と告げると別の男性の声がした。
『良くやってくれた。外交使節団の者達よ』
『お父様、ありがとう御座います』
代表してオルテシアが言葉を返した。
『おお、その声はシアか?良くやった。それでどのくらいの戦力を送ってくれたのかね?』
と聞かれたのでオルテシアはグランツの方を見た。
グランツは揚陸艦や空母を言ってもわからないと思い船の今現在の船の数を教えた。
『…えっと船の数は約50隻です』
と答えると少し落胆した風な声色になった。
それも仕方ないだろう現在海上封鎖中の帝国艦隊はガレオン船が約100隻キャラック船が約300隻と合計400隻以上が居るのに対して度重なる敗戦で激減したがそれでも約120隻はまだある。
なのでフリーデ国艦隊と合わせても約170隻と2倍以上の開きがある。
『そうか、だが有難い早速で悪いがフリーデ国の司令官殿と話をさせては貰えないだろうか?』
『わかりました。お待ちを』
そう言ってオルテシアは無線機をグランツに渡す。
受け取ったグランツはやり方を簡単に聞いてから言葉を発する。
『こちら、フリーデ国王国救援部隊を率いる。グランツ・オディウム総統と申す者だ』
と返すと返事が来た。
『救援の派遣を感謝する。私はパルミオン王国が王ライザーク・トゥティラ・エスケバウア・フォン・パルミオンだ。そしてすまぬが私は総統という言葉を聞いたことがないのだが具体的にはどのくらいの地位なのかね?』
聞かれたグランツはああ、そうか と納得して説明する。
『総統とは所謂国家元首であり、詰まる所パルミオン殿と同じ王である』と説明すると、一泊の間が空いた後『……な、何と王自らが援軍として来てくれたのか!?有難いが50隻の艦隊で大丈夫だろうか?』と心配の声をかけて来てくれる。
『ああ、心配ご無用だ。我が軍は精強だ。それに随時増援部隊が到着する予定なので大丈夫だ』と返すと『そうか、それならば安心できる』と増援部隊が来ると言うところで安心した声を漏らす。
『では、我々はこれよりラークタウン帝国艦隊と戦闘に突入する。帝国艦隊を討ち破り次第揚陸部隊を派遣して貴国の領土から帝国軍を追い出してご覧に入れよう』と告げるとライザークは『ん?連携はしないのかね?』と聞いて来たので『連携したとしても上手くはいくまい。我が国と貴国は一度も演習などをしたことがないのだから。寧ろどちらかが足掛けになるだろう。それならば初めからバラバラで行動した方が余程建設的だと思うが如何だろうかパルミオン殿?』と問いかけた。
『うむ。確かにオディウム殿の言う通りだな。そうしよう…か。では我々も反攻作戦を決行するとしよう。御武運を』
『そちらも、では今度は帝国軍を追い出してからお会いしましょう』
と2人は笑いながら通信を切った。
グランツは振り返り「提督。作戦開始!」と命令した。
提督は「了解しました!」と告げて各艦にも伝えていく。
すると空母から次々とF-4ファントムIIやF-8などが発艦して行く。
飛び立ったF-4ファントムIIは敵帝国海軍艦隊に向けて空対艦ミサイルを発射し次々と沈めて行く。
それに続いてF-8も機関砲で次々と蜂の巣にして行く。
敵船からは弓や魔法が迎撃の為に飛び交うが戦闘機のスピードには間に合わず掠りもしない。
そして敵艦隊の旗艦と思わしき船を沈めたところで補給の為に空母に次々と着艦しに戻って来る。
オルテシア達パルミオン王国人達はその光景を目を点にし口を大きく開けて呆然と見つめていた。
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▽ラークタウン帝国海軍艦隊司令官△
その日もいつも通りに過ごしていた。
「うむ。今日もいつも通りだな」と司令官が言うとこの船の船長が答える。
「ええ、そうですね司令官殿。王国海軍はこの艦隊の規模の前に臆しているのでしょうよ。それにもう何度も敗戦を喫していますからな」
ハハハと軽快に笑う。
司令官も違いない、と同意する。
王国海軍は残り全ての船を掻き集めて漸く100を超えた所だろう。
民間船を集めたらそれ以上の数にはなるが邪魔になるだけで役には立たないだろう。と考えていや火をつけて突貫してきたら面倒だなと一応その事の対策も考えとくか、と船長に相談しようと声をかける前に物見台の水兵が「10時方向に未知の艦隊が出現!その数約50!」と叫び声が上がる。
司令官は、懐から単眼鏡を取り出し10時の方向を見ると確かに船が見える。
この距離からでもはっきりと見えるという事からあの艦隊は全てがこのガレオン船団のどの船よりも大きいという事からだろう。
司令官がのるこのガレオン船ターン号は他の船よりも大きく全長70mと大きいがそれの倍以上も大きい船を王国海軍が持っている筈もない。
というとあれは第三国の艦隊に違いないと判断した。
一応戦闘準備はさせるが早まってもこちらからは絶対に先に砲撃や魔法攻撃をするな、と厳命する。
そうこうしていると未知の艦隊は停止しこちらに呼びかけて来る。
『こちらフリーデ国艦隊。パルミオン王国の救援要請に応えてやってきた部隊である。直ちに海上封鎖を解除せよ。さすれば沈めずにおいてやる』ととても傲慢な返事が来た。
それに対して司令官は『ふざけるな!解除できる筈がない。そちらこそ直ちにこの海域から出て行かなければ沈めてやるぞ?』と返した。
司令官は全船団に砲撃準備と発するよりも早くに敵の特に大きい船から次々と鉄の塊が空へと飛び立って行く。
それを唖然と見つめていると、その鉄の塊から棒状の何かが発射されて一隻の船に当たると爆発した。
その爆発音はまるで天を引き裂いたかのような凄まじい爆音と火柱をあげた、
それで漸く我に返った司令官は撃ち返せと号令を下すが、その空飛ぶ鋼鉄の塊は動きが早くとても砲弾では当たらず、かといって弓矢では届かず魔法攻撃も難なくかわされる。
なので目標を敵船に変えるがこちらの射程よりもだいぶ遠くの敵船からの砲撃で次々とこちらの船が沈められて行く。
その光景に司令官は「や、やつらは悪魔か…」と呟くと同時にF-4ファントムIIから発射された空対艦ミサイルが旗艦であるこの船にあたり木っ端微塵とかし、司令官も肉塊へと変わりバラバラに吹き飛んだ。
◆◆◆
その後の第二陣により帝国海軍の船団は全て海の藻屑とかした。
生き残った帝国海軍を数名捕虜として捕まえて尋問を行い。
帝国軍の配置情報を得る。
衛星からもある程度の情報は得ているがそれでも、どんな些細な情報も大事だとグランツは知っているからだ。
その後近くの港に揚陸艦隊を派遣して制圧させる。
その時には増援部隊も空と海から運ばれて来た。
一個機甲師団とティターンの第一世代機のアルサース型を主軸とした一個連隊を現在この港から一番近い位置にいる敵帝国軍の補給基地に向かって派遣した。
彼らの任務は補給基地の破壊とその周辺からの帝国軍の一掃だ。
初の他国との戦争に皆気合が入っている。
グランツ達フリーデ軍はこの港を拠点にして侵攻する帝国軍を迎え撃つ腹積もりだ。
まずはこの港の要塞化と敵の情報員が潜入していないかの捜索を行う。
それに伴って各地へとフリーデ国の情報員を派遣する。
次々と入る情報を精査していき敵の次の行軍路を予想して待ち伏せ部隊の配置などを行なって行く。
グランツとオルテシア達は一個旅団の護衛を付けてパルミオン王国王都へと向かう事にした。
その間のこの港の指揮官をハルマーク中将に一任した。
「では、後のことは頼んだぞ。ハルマーク中将」
「はっ!お任せ下さい。総統閣下」
と見事な敬礼をする。
それに返礼してHMMWVに乗り込む。
そして王都へ向けて出発した。