1話
今年最初の投稿で最後の投稿です。
来年もよろしくお願いします。
来週は久方振りに休暇が取れたので、海外旅行へと行こうと決めた男の名は、グランツ・オディウム。
この国の軍に勤める、三十代後半の将校の1人だ。
◇
数日後予定通りチケットが取れたので、二泊三日の日本へと旅行へと向かった。
温泉を満喫し帰国便へと乗ると、丁度修学旅行達も居合わせ楽しそうな会話が聞こえてくる。
「いやぁ、俺初海外なんだよなぁ」
「へぇ、そうなんだ?」
「何だ、お前は違うのか?」
「ああ、家族旅行で時々な」
「良いなぁ」
と、そんな会話が後ろの席から聞こえてくる。
だが次、の瞬間そんな楽しそうな会話は悲鳴へと変わる。
いきなりボン!と破裂音がしたかと思うと、機体がズン!と急に高度を下げたのだ。
「キャア〜〜!!」
「な、何だ何だ!?」
「お、おい見ろ!エンジンが燃えてるぞ!」
その声にグランツは、しっかりと腰にシートベルトをしている事を確認してから、翼にあるエンジンを見ると、確かに火が見えた。
機長からのアナウンスで、エンジントラブルが起き海に不時着を試みるので安全姿勢になる様にと言われたので従う。
………だが幾ら待っても不時着の衝撃は襲って来ず、辺りを見渡すと其処は一面白に覆われた不思議な空間であった。
周りには自分と同じ様に不思議そうな顔をした他の乗客の姿が見える。
中には助かったと思って、泣いて抱き合っている女子学生達の姿も見えるが、楽観視するにはまだ早いだろう。
一通りここに見える人達が、落ち着いて来たのを見計らったのか不思議な格好をした1人の老人が杖をついて歩いて来た。
その服装は、古代ギリシャの様に長方形のウール布を右肩を露出して体に巻きつけているものだ。
『注目!』と言いその老人は杖を地面につくと、カーン!とした音が空間に響き渡った。
そして皆の注目が集まったのを確認してから、老人は『さて、混乱しているだろうが、先ずは結論を述べよう。お主らは皆死んでおる』
その言葉に女子学生は再び泣き始め、担任の女教師が慰めたり、またある男性は両手両膝を地面につけて頭垂れている。
また、ある不良男子学生は、それを告げた老人に近づき。
「あぁ!テメェ何ふざけた事を抜かしてんだ⁉︎シメんぞジジイ!」と叫んだ。
それに対して老人は『はぁ』と、溜息を吐き。
『最近の若い者はこれだから』
と、呟き軽く杖を振るうと、近づいた不良男子学生は、五メートル程後ろに吹き飛ばされた。
『今のは警告じゃ。次に無礼な態度を取れば消滅させてくれるわ。フォフォフォ』と軽く口元は笑っていたが目は酷く冷めていた。
飛ばされた不良男子学生は、ブンブンと首を縦に振って頷いていた。
『さて、先ずは状況を説明してやろう。お主らはあの飛行機が墜落して運悪く死んだ者達じゃ』と其処で辺りを見渡していた会社員の男性が手を挙げた。
『なんじゃ?』
「はい、私は竹本と言う者なのですが、ここに私の知り合いの姿が見当たりません。と言うことはその人は生きている、と解釈してもよろしいでしょうか?」
『うむ。そうじゃよ』
「わかりました。ありがとうございます」
その会社員の男性は、明らかにホッとした表情を浮かべた事から、その知り合いは大事な人だった事が伺える。
恐らく恋人か家族の類だろう。
その後の説明で、何故自分達が、この空間に居るのか、その理由を話してくれた。
それは本当に、ただの偶然である。
それは、今から向かう世界は絶えず争いが起こり、人口が減って来て居り、度重なる輪廻転生で、その世界の人々の魂が摩耗し、危険な状態になっている。
その為の調整に死んだ、別の世界の人間から魂の補充をしているそうだ。
それで偶然にも飛行機事故で亡くなった、自分達が選ばれただけらしい。
勿論行くか、行かないかは、自由であり行かなければこの世界の輪廻の輪に加わり、魂の洗浄をされ記憶を全て消去してから、再び何かしらに生まれ変わるらしい。
行く場合は、今の記憶を保ったままに、別の世界へと転生か転移をするらしい。
そして、その別の世界についての知識を送られた。
『すこし、頭痛がするが我慢せいよ。ほいっとな』そんな軽い言葉と同時に頭に衝撃が走った。
別の世界の世界は、この世界と異なり科学ではなく、魔法が発展した世界であり、魔物と呼ばれる危険生物が存在する世界だ。
その事に顔色を悪くする者や「異世界転生キタァ〜!!」と叫ぶ男子学生がいたりと、十人十色の反応を示した。
だが、こんな危険な世界にイキナリ放り出されたらすぐにthe endと言うことは老人もわかっているのか、力を授けてくれるらしい。
異世界へ行く者は右の門へ、元の世界で輪廻転生する者は左の門へと言われたので、グランツは迷う事なく右へと進んだ。
今の生活には満足していたが、最近は紛争などもなく平和な時代に成りつつあり、多少退屈していたのだ。
なので戦乱の世界へと、向かう事に決めた。
今は辛うじて、各国が停戦状態だが、針の一突きですぐに破裂する様な、脆い状態らしい。
そして、全員が別れた事を確認すると、そのまま門を潜る様に言われて全員が潜り終えると、門は1人でに閉まった。
目の前には再び老人が姿を現して、『では新たな門出の餞別に力をくれてやろう』
そう言って杖を一振りすると、空中に数百枚のカードが出現した。
その中から、徐に老人は一枚手に取りこちらにカードの内容を見せて来た。
其処に書かれていたのは【身体能力強化・小】と書かれその下には【☆】と書かれていた。
『これは見た通り身体能力が、少し上がるだけの力だ。そしてこの☆は力の凄さを現しており☆1つが1番価値が低くなっとる』そう言ってカードを消すと、此方を見渡して
『それと、1つ良いことを教えてやろう。他の転移者や転生者を殺めると、其の者が保持している力を奪う事が出来るぞ』
『では、早い者勝ちじゃ。各々この空間にある好きなカードを一枚手に取れ』と告げて腕をプラプラ振って来た。
最後に飛んでもない爆弾発言をしたが、周りの者は他の者を見てどうするか、困惑しているところに、再び老人が『ほれ、どうした?早くせんと良いものは他の者に取られてしまうぞ?』と告げて来た。
それに1人の男子学生がカードに向かって走って行くと、後は堰を切ったよう様に、他の者達もカードに群がる。
それをグランツは冷静に観察する。
カードを手に取った者から、順に消えて行く。
そしてグランツ以外の全ての人間は、カード手に取り消えた。
老人はグランツの方を向き『どうしたんじゃ?お主も早よ選ばんか?』と問いかけて来たので、グランツは老人の方へ歩み寄り。
「この空間にある好きなカードを取って良いんですよね?」
このグランツの問いかけに、老人は笑みを浮かべて『ああ、そうじゃよ』と答えたので、グランツは失礼します。と答えて老人の懐を漁ると其処には一枚のカードがあった。
それに対して老人は『ほほぉ、よく儂がカードを持っていると思ったの?』と聞かれたので「いえ、貴方は"この空間に"と答えたのが、気になっておりましてね。普通ならここに浮かんであるカードや、目の前にあるカードと、そんな言葉を使うはずなのに、この空間にと、曖昧な表現をしましたので、気になりましてね。もしかしたら貴方もカードを所持しているのでは?と考えた次第でして、案の定此処にありました」
『フォフォフォ。そうか、そうか。では達者でな』
とその言葉と同時に景色は一変する。目の前には広大な海が広がっており、足元は砂浜で後ろには原生林が生い茂っている。
そして手元にはカードが握られており、それを確認すると、其処には【創造】と書かれ星は色違いの★で数は【★★★★★★★★★★】である。
これをどうしたら良いんだと思っていると、カードの形が変わりスマートフォンみたいに成り画面に〈貴方は何を求めますか?〉と表示されていた。
そして、画面に反射して映る自分の顔を見て驚く。
何と若返っていたのだ。
見た目からして二十歳ぐらいになっていたがまあ、若返って損する事も特に無いし、寧ろ得しか無いか、と判断して画面に表示されていた事について考える。
グランツは暫し考えてから「そうだな。戦争だな」と答えると次に〈その為に何が必要ですか?〉と表示されていた。
「それは俺の為の国であり敷いては軍事力だ」と答えると画面には〈ベースはどれにしますか?〉と表示されており色々な国の名前が書かれていた。
中には、見た事も聞いた事も無い国の名前があり質問してみると、この世界に存在する国の名前だと判明した。
そして、どれにしようかと悩んで一覧を眺めていると、気になる文章を見つけた。
それは〈WORLD・WAR・7〉と言う前の世界で良く遊んでいたオンラインゲームのタイトルだ。
これは、第七次世界大戦をモチーフにしたゲームで、架空の武器や兵器が多数存在していた。
そしてグランツは、そのゲームのトップランカーでもあったのでそれを押した。
画面には〈本当に宜しいですか?YES/NO〉と表示されていたのでYESを押すと。
〈了解いたしました。これにて初期設定を終わります〉と表示がされた。
そして、画面が光眩しくて腕で目を覆い隠して、次に目を開けると、グランツの服装がWORLD・WAR・7で使用していた指揮官の服装に変わっていた。
この軍服は、全ての箇所に対刃対弾の特殊な繊維を駆使した物から、作られており例え、至近距離から対戦車ライフルの20mmを超える口型の銃に撃たれても、無傷というトンデモ性能を持つ服だ。
そして、このゲームの肝は何と言っても、ロボットであろう。
ロボットの名称はティターンと呼ばれる二足歩行のロボットだ。
それに、この世界にも魔装機兵と呼ばれる似た様な存在がある。
これは魔力炉と呼ばれる物を動力としており人工筋肉には魔物を使用している。
そして魔力炉にはエネルギーとなるエーテルクラフトと呼ばれる物が必要でありそれを巡り各国は争っている。
グランツはこのスマートフォン擬き(これからはスマモと呼ぶ)に表示されているメニューをタッチしてそこに表示されている。召喚と書かれた項目を開く。
中には施設・兵器・兵士などが表示されている。
その中から兵士を選び召喚する。
地面に魔方陣が描かれそこから一個中隊200名が現れた。
彼らの装備はパワードスーツにWORLD・WAR・7(以降WW7と表記する)オルジナルのレーバー銃L-IIを装備して現れた。
そして大尉の階級章を付けた中隊長が一歩前に進み出て「全体!気をつけ!」と号令を下しこちらに「総統閣下に敬礼!」と言い見事な敬礼して来た。
それにグランツは長年の軍生活で身に付いた模範的な答礼をする。
「休め」と伝えて休ませる。
「諸君らの最初の任務はこの周辺地域の偵察任務だ。まず貴官らの部隊名は第1中隊とする。そして第1中隊を4つの小隊に分割して1小隊はここに残り私の護衛へ。他の小隊に偵察を行ってもらう」
「はっ!了解いたしました」
「大尉、貴官の名は?」
「はっ!私の名はユーネ・ミスロバです」
ユーネは金髪碧眼の美しい女性士官で豊満な胸を持ちウエストはキュッと細く締まっており手足はすらっと長い美人だ。
見た目も二十代程と若い
「では、ミスロバ大尉の率いる小隊は私の警護に付け」
「はっ!光栄であります」
その後ユーネに部隊の編成の諸々を任せてグランツは簡易基地を作る。
まず作ったのは兵舎でその次に弾薬庫、食料庫などを召喚していった。
最後にコンクリートの塀と監視塔を設置して完成だ。
そしてこの召喚の横には数字が書かれており召喚する度にそこに書かれた数字文、保有ポイントと書かれた項目の横の数字が減っていく。
最初に10,000,000とあったポイントも今では8,974,500と減っていた。
ポイントを増やす方法についてスマモに聞くと方法は大きく分けて3通りあり一日経過毎に1,000ポイント加算される。
他にはレベルが上がる度に増え、最後に敵性生物を倒す事にポイントを獲得するらしい。
他にも細かい条件により獲得出来るらしいがこれは後々課題だな。
簡易基地が出来上がった頃合いにミスロバ大尉が編成を終えて戻って来た。
「閣下、編成を完了致しました」
「御苦労。では第1小隊はここから北方方面へ。第2小隊は東方方面へ。第3小隊は西方方面へ偵察へ赴け」
「「「了解」」」
「では、行動を開始せよ!」
3小隊はそれぞれ配分された地域へと散って行った。
残った第4小隊に基地の守りを任せてグランツはこの基地の自身の私室へと向かう。
グランツの後をユーネと部下2人が続く。
部屋の前へ来ると振り返り「ミスロバ大尉。私は暫く横になる。それまでの指揮を任せる」
キリッとした顔をしたユーネは元気よく「はっ!お任せ下さい総統閣下」と言い敬礼する。
それに答礼して部屋に入り横になる。