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第2話 異世界侵略者、襲来(3)

・・3・・

 電子黒板に、隣にいた女子生徒に、そこらじゅうに飛び散る女性教師の頭部だった破片。脳漿を撒き散らして、赤色の鮮血は満開と言わんばかりに四方八方に付着する。体の主を失った頭より下は意図が切れた人形のように床に転がった。


「きゃああぁぁあぁぁぁ!!」


 余りにもショッキングを目の前で目撃してしまった女子生徒は金切り声のような叫び声をあげるがしかし。

 大量の銃撃音の直後には体を穴だらけにして命を散らしてしまった。


「いやぁぁあああ!!」


「ああぁぁあああ!!」


 突然の銃撃で二人が死んだ教室内は一気に恐慌状態に陥る。クラス全体に響き渡る悲鳴。凄惨な光景に失神する男子生徒。

 冬斗は呆然とするしかなかった。

 だが、二人の死はきっかけに過ぎなかった。

 詠唱を終えた法衣姿の者達は杖を持った者達は杖をこちら側に向ける。その光景に冬斗は我に返る。

 このままだと、あれに当たる。

 そう思った彼の行動は誰よりも早かった。


「早く逃げるぞ!」


「えっえっ?!」


 窓のすぐ近くにいた夏未の腕を掴んで、走り出す。

 それから僅か二秒も経たなかった。冬斗達のいるクラスの窓だけではない、校舎全体に炎属性の爆発魔法が命中し、その周辺は炎と爆発ととてつもない音に包まれた。

 あまりの衝撃に冬斗と夏未は吹き飛ばされる。


「ぐ、ぁ……」


 廊下側の席まで飛ばされた彼は、机に背中を打ち付けたのか空気が口から漏れる。

 教室は煙で満ちていたが、数十秒後には視界がある程度戻ってきた冬斗。

 彼が目を開けて広がっていたのは。


「う、ぇ、ぁあぁ……」


 窓から二列目まで瓦礫とした教室。

 天井からぶら下がるクラスメイトだったナニか。

 全身が燃え盛り、火だるまになりながら教室から地上へ落下していく女子生徒。

 まさに阿鼻叫喚の地獄絵図に彼は胃の中にあったものをぶちまけた。

 外からは度々と発せられる銃撃音と魔法による爆発音。風属性が何かを切り裂く音も聞こえるが、一番多いのはそこかしこから聞こえる断末魔の声だった。


「逃げ、なきゃ……」


 腹部にあった全てを出し切ってやっと正気に戻った冬斗は周りを見渡す。

 夏未は、それに秋也は……。

 彼は二人を探すが、どこにも見当たらない。

 まさか、もしかして……。


「――斗! 冬斗!」


 肩を強く叩かれ、振り返ると(ほこり)だらけではあるが無傷の秋也と、先程の衝撃で吹き飛ばされたからか頭から血を流しているがなんとか無事であった夏未がいた。


「石原! 長崎! 良かった……」


「良かったじゃねえ! 今すぐ逃げるぞ!」


「あ、ああ! 石原は無事かい」


「すっごく頭痛いけど、なんとか……」


 唇を震わせながらもなんとか話せるといった様子の夏未だったが、冬斗は彼女が無事で秋也も無傷だったことに安心する。

 しかし、彼らの置かれている状況は危機的であることに変わりはなかった。


「んなこたぁいいからとにかく行くぞ!」


 秋也は冬斗に向けて怒鳴り声を発し、それでようやく三人は走り始める。

 教室の外、北側へ向かう廊下はコンクリートなどの破片が散らばっているが、そんなこともお構い無しに大混乱に陥った生徒達が大勢避難を始めて全速力で逃げ出していた。向こう側の教室では魔法の攻撃音の後に死体が吹き飛ぶ姿が見受けられた。


「わかった。――いや、待って! 浜名がいない!」


 しかし、冬斗は廊下に向けて走り出して、晴香が昼の授業から教室におらず保健室にいることを思い出す。教室内の惨状を考えればいない方が良かったのは不幸中の幸いかもしれない。


「どうすんだよ冬斗!」


「あいつらがいたのは南側だろ。だったら北側に逃げればいいんだし、保健室なら逃げる先の道の途中にあるから」


「わぁった! なら早く保健室に行くぞ! 石原の怪我もちゃっちゃと包帯とかも探せるしな」


「ありがと……。血止まんないし、助かる……」


 目的地を決めた三人は、秩序を失った廊下をひたすらに走る。走る。走る。逃げなければ死ぬ現状が彼らをそうさせていた。

 しかし、それがいけなかった。

 冬斗は纏まらない思考の中、気がつく。わずか十数秒の間に二人とはぐれてしまったのだ。彼が周りを見渡しても二人を見つけられない。だが、探す時間などあるはずもない。


「くそっ……。でも、保健室に行けば合流出来るかもしれない」


 冬斗は二人を探し出すことを諦めて、晴香がいるであろう保健室を目指す。

 渡り廊下を過ぎて左へ、中央棟の一階へ。保健室はすぐそこだ。

 保健室の札が彼の視界に映る。逃げ惑う生徒達の数は渡り廊下に比べれば減っているもののそれでも十数人の走る姿があった。

 どうやらドアは開いているようだ。相も変わらず激しい爆発音は続いている。

 お願いだからいてくれ。彼は祈りながら、開きっぱなしの保健室に入った。

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