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最強の職業は俳優?  作者: 永遠の28さい
◆第一章◆ 俳優
11/13

資格取得の旅

長い間、放ったらかしにしておりましたが、執筆再開いたします。

・・・と言ってもなんとか一章を簡潔させたところですが。

ゆっくりとお付き合いいただければと思います。



 5月1の水曜。



 領都の南部にある港は、既に厳戒態勢が敷かれていた。“警護”任務に当たる“従者の金貨団”と本来“自由行動”の“先駆けの剣団”が総出で港内部と南の大通りに掛けて警備網を張っている。



 理由は、明日(5月1の火曜)に本土から『定期便』が到着するからだ。定期便には宮廷貴族も搭乗しており、彼らの滞在期間中、安全に活動してもらうための、辺境伯爵側の配慮。そこには辺境伯爵同士の見栄もある。このため、必要以上に警備を厳重にしたり、歓迎の祭りを開催したり、あの手この手で宮廷貴族に好印象を与えるようアピールしていた。

 フィフス・エクトール辺境伯爵も同様に宮廷貴族が満足するための催しを執り行う。それは次期当主である長子アルフレッドを中心にして、守護騎士と選ばれた商人で執り行っている。宮廷貴族相手に互いに満足するような取引や、歓迎の舞踏会など、華やかなモノだ。

 逆に領兵団(クラン)が執り行うのは周辺の警備と、入国検査、それに『資格取りの旅』など、宮廷貴族の目に触れないモノばかり。その運営担当が次子イーサ・エクトール。知っている人が見れば、長男と次男の役割は光と影その者の様に思えるだろう。

 だが、イーサは自分の立場や役割など全く気にしておらず、むしろ好きなようにやっている。


 この日、領兵団(クラン)の四団長は初日に執り行う演舞の準備で領主館に行っており、副団長兼世話係のエンメッド老がその他雑務の指揮を執っていた。


「ユージは入国検査を担当してもらう。…イーサ殿下のご命令だ。それと彼女も同席してもらうから。」


 エンメッド老に呼ばれてやって来たのはユフィ。守護騎士の軍服に身を包んでいる。軍帽でうまく耳も隠されており、違和感もなかった。


「ユージはこの少女の保護者と聞いているが?」


 エンメッド老の問いにユージはぎこちなく肯いた。ちょっとユフィの軍服姿に見惚れていたからだが、すぐに気持ちを切り替えた。


「はい、団長の命で保護者となっております。」


 ユフィの身分(ランク)は『自由民』なので、領都内で生活するには『保護者』が必要になる。イーサの命令で彼女の保護者になっているのだが、イーサとユージの関係は秘匿の為、ここでは団長の命令としていた。


「彼女には守護騎士として経験を積ませるためにお前の補佐を指せるよう仰せつかっている。しっかり面倒見ろよ。」


 エンメッドはユージの肩を叩き、次の指示を行うため、その場を離れた。


 世話係とは、団の運営を効率よく行うため、討伐時の団員配置や、依頼の団員割振りなど団の仕事を割り振りする役目である。当然団員の資格(ライセンス)技能(スキル)を細かく把握しており、ユージについてもその能力を知っていた。“雑用係”とはエンメッド老が付けたユージの秘密を守るためのあだ名である。なのでユージはあのご老人に頭が上がらない。

 二人でその場を去るエンメッド老に頭を下げた後、顔を見合わせた。


「…殿下からはなんと?」


「…【顔認証】で入国者を全員覚えろ…と。」


 【顔認証】とは執事(スチュワード)の上位技能で相手の名前と顔を完璧に覚える技能(スキル)だ。また認証済の人間であれば【気配探索】でどこにいるかが把握できる。


「つまり、『定期便』で入って来た人間を滞在期間中全員把握しろってことか。」


「ユージは?」


「僕は【真偽眼】で身分(ランク)の判定。…あとはこっそり【鑑定】もする。」


「え!?それって犯罪にならないの?」


 本人の許可なく【鑑定】を行うことは犯罪行為に当たる。だが、入国検査中はユージは【鑑定】の技能(スキル)を持たない真偽官(トゥルーサー)として仕事にあたるため、誰も気づかない。俳優(アクター)ならではの活用方法だ。


「領内に危険人物を入れさせない為だよ。団長や殿下が僕に入国検査をやらせる理由がこれなんだ。」


 ユージは入国検査の流れをユフィに簡単に説明した。

 『定期便』での入国者は5つに大別される。“交易”、“観光”、“要人護衛”、“移住”、そして“資格取り”。入国者の目的と身分(ランク)を確認して、目的毎に宿泊先を案内するのが、入国検査の作業だ。そしてその中で要注意人物を特定するのが、ユージの任務だ。

 ユフィは話を聞いてうんざりした表情でユージを見ていた。そして目立ちたくないと言いながら、何故この世界でプレイヤーたちと関わっているのだろうと疑問に思った。




 翌日(5月1の水曜)、港に3隻の大型のガレオン船が到着した。


 一番豪奢な船に領主を含め多くの人が集まり、タラップからは煌びやかなマントに包まれた、如何にも貴族風の男が降りてきた。同時に向かえた人々は恭しく一礼する。


「余がエルデヒート公爵である。出迎えご苦労。」


 型通りのねぎらいの言葉を発し、男は港に降り立った。フィフス・エクトール辺境伯爵が先導して蜥車へ案内し、数十名の護衛を引きつれ、領都の南の大通りをパレードさながらで行進していった。


 ユージ達はそれを見届けると、すぐに入国検査に取り掛かった。3隻の船からは次々と人が降りてきて、一人ずつ順番にユージの検査を受ける。その横でユフィは【顔認証】で全員の顔を覚えていった。


 今回の入国者は184名。

 交易目的が、37

 観光目的が、8名

 移住目的が、領民30名、奴隷43名。

 そして資格取り目的が、6名だった。

 残りの50名は全員要人警護の公爵私兵であり、そっちはエンメッド老が対応していた。ユージは検査時にチェックしたメモをまとめ、ユフィに手渡した。


「商人3名、准男爵以下4名、領民2名…これは怪しい。気を付けてくれ。」


 この後ユフィは領兵館でエンメッド老と合流し、入国者の監視に入る。ケリルは団長と共に領主館で公爵へのご挨拶を済ませ、ユフィと合流の予定だった。

 ユージは明日の早朝から行われる『資格取りの旅』の準備に取り掛かる。


「ユージ…。」


 ユフィは不安を隠せず、ユージに声を掛けた。気持ちを察したユージは、周りに誰もいないことを確認してから、ユフィの額にキスをした。そして、呆けるユフィに耳栓を渡す。


「…これは、【遠隔念話】を行える魔装具だ。もしもの時はこれで僕を呼んでくれ。」


 そう言うと、耳栓を彼女の耳に着けた。



 アタシは…。彼にもっとすごいことを望んで、隙あらば誘っている…。こ、こんなフレンチなキスで満足するほどじゃない…。でも、これはこれでありか。うん、順序立てていけばいい。



 ため息をついたユージは、顔を真っ赤にしてブツブツ言ってるユフィの手を引っ張り、領兵館まで連れて行った。




 夜が明けて、ユージは起床する。ベッドの側ではマナとディーラが膝を折りたたんで座ってご主人様が起きるのを待っていた。


「おはようございます。」


 二人は声を合わせて挨拶をする。既に着換えは済んでいるようで、後は自分だけが何の準備もできていないことを知ると、ユージは頭を掻いて苦笑いした。


「おはよう。待ってて、準備するから。」


 そう言うと、ユージはベッドから起き上がり、リビングの床に向かって手をかざした。ユージの手に反応して、床が開き、地下へと降りる階段が姿を現した。寝間着のまま階段を降りていくと、真っ暗な大広間に出た。その隣に小部屋があり、ユージは小部屋の中に入った。寝間着を脱いで、壁に掛けられた皮鎧(レザーメイル)を手に取り、感触を確かめてから着込んでいく。最後に黒い金属のついた長靴(ブーツ)を履いてその上から領兵団の袖なし長套外衣(ロングコート)を羽織った。


 ユージが領兵団の活動を行う際の装備は見た目に反して高強度だ。普通の皮鎧(レザーメイル)に見えるが、非常に硬い表皮をもつ地竜の皮を使用して且つ“回避”、“耐性”のエンチャントを施している。長靴(ブーツ)は耐炎鉱石を加工した特注品。そして武器は…


「今回はコレで行こう。」


 そう呟いて取り出したのは淡く黄金色に輝く幅広の剣。鍔がなく両刃で柄の部分は両手でも持てるよう少し長めで、『グラディウス』と呼ばれる型の剣だ。これに光属性と風属性がエンチャントされている。

 ユージが曾てソロでダンジョンを攻略しまくっていた時に手に入れた武具の1つ。

 その他予備武器をいくつか【異空間倉庫】に放り込み、更に防寒具や野営具、調理用具を次々と放り込んだ。



 そして副資格(サブライセンス)を設定する。


 まずは俳優(アクター)。この資格(ライセンス)が能力の幅を広くしてくれた神資格。さらに今回は不測の事態に備えて通信手段を持つ僧侶(プリースト)と鑑定技能の豊富な鑑定士(アプライサー)、体力負けしないように重装戦士(ヘヴィ・ソルジャー)俳優(アクター)の【役割】にセットした。


 そして、とっておきの上級資格暗殺者(アサシン)空間術士(ディメンジョナー)を更に副資格にセットする。


「余り見せたくないとっておきなんだけど…。」


 ユージはそう呟きながらも久しぶりの重設定に心を躍らせていた。



 準備を終えてリビングに上がると二人は既に荷物を背負って待っていた。


「…マナちゃん、ひょっとしてお出かけが楽しみ?」


 ユージの質問にマナはプイッと顔をそむけた。


「…あ、当たり前じゃない!」


 ユージはクスクスと笑いマナの頭を撫でて玄関へと向かった。その後を二人がついていく。




 待合せ場所では、同じ袖なし長套外衣(ロングコート)を着た男が6人の男女を従えて待っていた。

 ユージは自分の目を疑った。

 今日の引率予定はベルドール先輩のはず。しかし、待ち合わせ場所にいたのはヴァルバド団長。しかも団長マークを外した袖なし長套外衣(ロングコート)を着ている。…恐らく入国検査結果をエンメッド老に報告して、難易度が上がったから団長自らが出張ってきたということかな?

 ユージはヴァルバド団長に軽く会釈し6人の男女に対峙する。


「おはようございます。引率担当のユージです…と言っても昨日は検査官としてお会いしましたね。」


 ユージは6人を一通り見回し、参加予定者が入れ替わっていないことを確認し、ヴァルバド団長に合図を送った。


「よし、メンバーがそろったので出発しよう。…これより4日間、西の山岳地帯に向かい、魔物討伐を行う。君たちにはその任務の中で『資格』を取得してもらう。それから、討伐した魔物は、ユージが連れて来た奴隷二人が解体、調理を行うので、魔物の味も存分に味わってもらうから。」


 その場で魔物が食えるということに6人は湧きたった。これも本土の心証を良くするための一環。だから、領主からの奴隷二人の外出許可も出ていた。


 一行は西門から山岳地帯に向けて出発した。道中6人と会話し、取得したい『資格』を聞く。


 バグ。16歳、男。身分(ランク)は貴族親類。父親はエルデヒート公爵旗下の男爵位で、箔付けの為に、【騎士】取得を目指している。

 マイヤ。14歳、女。身分(ランク)は領民。本土の騎士団員の娘で、父の跡を継ぐために【騎士】取得を目指している。

 クエル。20歳、男。身分(ランク)は奴隷で、更生目的で【戦士】取得を目指している。

 ユエル。19歳、男。身分(ランク)は奴隷で、更生目的で【戦士】取得を目指している。クエルの弟だそうだ。

 アナスタシア。12歳、女。身分(ランク)は奴隷で、更生目的で【戦士】取得を目指している。

 カイト。24歳、男。身分(ランク)は貴族親類。既に【騎士】の資格を持っているが、上位資格の【軽装騎士】を取得するために参加。エルデヒート公爵の正妻の一族らしく、今回一番の厄介者だった。


 ユージの【真偽眼】で身分を偽っているのは3名。奴隷のクエル、ユエル兄弟の身分は『犯罪者』。どういう経緯で資格取得の旅に参加しているか、エンメッド老が超特急で確認中だが、ユージは階級(クラス)が高いと見て報告しており、そのため、団長が自分の身分を偽って引率に参加したのだ。


 そしてもう一人はアナスタシア。


 これはエンメッド老に報告していない。




 何故なら、彼女の身分(ランク)は『魔王の娘』となっていたからだった。




 実は過去にもユージはこのアナスタシアに出会っていた。4順目の時にダンジョン内で初めて出会い、5順目、6順目も身分を偽ってユージに会いに来ている。そして7順目もこうやって会いに来た。

 別に会う度に何かをするわけではなく、昔話をするわけでもなく、ただユージに会い、他愛ものない会話をするだけの関係。

 ユージからは何も聞かないが、恐らく彼女は4順目、5順目、6順目の事を覚えている。そして自分と同じ人格制御を行ったプレイヤー。

 ユージはアナスタシアを目が合うと、にっこりとほほ笑んだ。アナスタシアは少し照れるようにして視線を逸らした。…普通に可愛い。…だけど正体は『魔王の娘』。ユージはこの旅の間、彼女をどう扱うべきか脳内をフル回転させて必死で考えた。






 半日ほど歩いて、山の入り口まで来たところで一行は休憩を取った。6人は如何にも疲れた風にその場に座り込んだが、ユージとヴァルバドは6人の一挙手一投足を細かく監視した。

 バグ、マイヤの二人は1つ1つの動作が無防備すぎて、素人丸出しなのがわかる。だがクエル、ユエルの二人はユージ達を意識するように振舞っており、資格取得以外の目的があると見ていた。そしてその目的のためにこの貴族親類であるバグやカイトの命を脅かすことになれば、外交問題になりかねない。

 そこで、この山の入り口に拠点を敷き、ヴァルバド、バグ、カイト、マイヤ組とユージ、クエル、ユエル、アナスタシア組に分かれて探索することにした。奴隷であるマナとディーアは拠点でお留守番である。


 ユージが用意した食材を使ってマナが昼食を作り、昼からの予定を聞きながら遅めの食事会を開いた。予定と言っても緻密な予定ではなく、山の中腹にあるダンジョン周辺の魔物を探しては狩るだけだが…。


 昼食後、二手に分かれて魔物狩りを行った。別に大げさな話ではなく、単純に山の中をウロウロして見つけた魔物と戦っていくだけだが、ユージは、常に【気配察知】で周辺を確認しながら、3人に弱いゴブリンなどを狩らせていた。

 特に問題が起こるわけでもなく、夕方になったので拠点へと戻った。狩った魔物の内、ゴブリン、ワーウルフは素材になる部分が無いため処分し、ホーン・ディアという鹿の魔物は食肉用に加工できるため、ディーアに長大な刀を渡して、解体を指示した。そしてユージが取り出した刀を見て、アナスタシアを除く5人が驚いた。

 ビッグ・ホーンを解体する時にも使った刀だが、正式名称は『斬馬刀』。大型の動物を斬るように作られた非常に刀身の長い刀で、ユージ作のディーア専用武器だ。ちなみにマナ専用の武器は牛刀『左近夜討(サコンヤウチ)』と『右近朝駆(ウコンアサガケ)』の二振りでこれも、持ってきている。

 ディーアは持ってきた折りたたみ式解体机を広げ、血抜きからバラし、捌きまでを流れるようにこなしていった。その美しい技にアナスタシアを除く5人が驚愕の表情しっぱなしになっていた。アナスタシアは全くの無表情でぼーっと眺めているだけであった。

 解体が終わるとディーアは鹿肉のお尻に近い背中の部位、サーロインの塊をマナに渡した。マナは肉を受け取ると、これを6等分し、いくつかの香辛料を揉みこんで熱した鉄板の上に置いた。肉の焼けるいい匂いがたちまち辺りに充満し、アナスタシアも含めて6人がマナの焼く肉を注視した。

 焼き上がった鹿のサーロインはミディアムレア。本来であれば魔物のレアはもってのほか。だが、ディーアの解体した肉であれば問題なし。6人は鹿肉にかぶりついた。

 “うまい!”と絶賛を受けたマナははにかみながらも一礼する。そして、団長とユージの分も焼き始めた。




 初日は何事もなく就寝時間を迎えた。マナとディーアに見張りを指示し、ユージは今の内に仮眠を取ることにした。昼間から様々なスキルを並列で使用しているせいで、少し魔力酔いを起していたユージは眠りに入る。だが、すぐに起された。…ユフィから連絡が入ったのだった。


「ユージ!ゴメン!どうしたらいい!?」


 ユフィからの全く意味不明の連絡にため息をついた。【遠隔念話】で彼女をなだめ、落ち着かせてから、何があったかを聞く。

 どうやら、交易目的の商人数名が無許可で宿を抜け出したらしく、追いかけて確保しようとしたところを逃げられたらしい。【顔認証】しているので、【気配探索】することで逃亡先はすぐに見つかったのだが、激昂した一部の商人によって人質を取られて、立て籠もられたそうだ。


 ユージは冷静になって聞いた話を考察した。…おかしい。無許可で宿を抜けた理由がわからない。亡命が目的であれば、手順に従い領兵団から『亡命の割符』を貰って、領主館に駆け込めば良い。だが、今回はそれを断られた。亡命が目的でないとしたら、何のために人質までとって領兵団から逃れようとする?ユージはユフィに逃げた商人たちから目的を聞き出すよう指示した。

 連絡が来るまで寝るわけにはいかないと、起き上がってマナとディーアの様子を確認した。


 今はディーアが仮眠を取っており、眠るディーアの側でマナが尻尾をピンと立てて警戒をしていた。


「マナちゃん、寒くない?」


 マナの恰好は晒に袖なし皮服(レザージャケット)で湿気の多い夜では冷える服装だ。【異空間倉庫】から、防寒着を取り出したが、マナはそれを一瞥すると遠くを警戒した。

「…。」


「え?何?」


 マナが何か言ったようだが聞き取れなかったので、ユージは聞き返した。


「…足りない。」


「足りない?」


「角バカ女の分…。」


 ユージが見ると、ディーアはアンダーシャツだけで蹲って眠っていた。その様子を見てユージは笑みを浮かべた。

 なんだかんだと二人はお互いを思いやっているんだと感じた。

 二人分の防寒着を取り出し、羽織らせると、マナの横に立った。マナはチラッとだけユージを見て、ユージと目が合ったことに驚き、やや頬を赤らめてから遠くを見直した。その様子を眺めだからユージは小声でマナに話しかけた。


「さっき、ユフィから連絡があったよ。…街で問題が発生したようでね。今は連絡待ちだけど、多分救援に行くことになる…。」


マナは無言で遠くを見ている。


「…かなり混乱した様子でね。これが終わったら、ちょっと鍛えてあげる必要があるね。」

 マナがニンマリと笑った。


「マナちゃん、多少は手加減してよ。…でもマナちゃんのお蔭でディーアも図太くなったし。ユフィの精神も鍛えてあげて。」


 マナは隣に立つユージにもたれ掛った。

ピンと張っていた尻尾がゆらゆらと揺れている。それは猫獣人が機嫌のいい証。ユージはマナの頭をやさしく撫でた。そしてさりげなく気になっていたことを聞いた。


「…ユフィのことについて、何も聞かないのか?」


「…アンタが守らなければいけないヒトなんでしょ?……それだけで十分よ。気になるなら直接あの耳長女に聞くわ。」


 うん、マナちゃんらしい答えだ。でも、僕にもたれ掛らないで、ちゃんと見張もやっといてね。


 マナに目で訴えると、マナはつまらなさそうに元の体勢に戻って夜の暗闇に意識を移した。


「…ユージ。アナスタシアっていう奴隷には気を付けてよ。なんかあの幼女、底が見えない…。不気味なのよ。」


 マナちゃん、いいところに気づくね。それは僕も感じてるから大丈夫だよ。


「…何より、あの女…幼女のくせしてアンタに惚れてるのが気に食わないわ。」


 え?




 ええ!?





 そうなの、ディーアさん!?



 ユージは、びっくりして思わず寝たふりしているディーアを見た。急に目を合わせられたディーアはびっくりしたが、すぐに落ち着きを取り戻してコクンと肯いた。




 …これまで目立たないようにしてきたつもり合ったけど……。今回は、マナちゃんを手に入れてからいろいろと目立ってしまってる…。

 複雑な表情をしたまま、しっかりと二人の奴隷に手を握って求められる愛情にさり気なく応えるユージであった。


暗殺者アサシン

 偵察型□の最上位で、忍者の技能を全て受け継ぎ且つ強化された資格。

『取得条件』

 忍者で殺人を100人実行する(確率1%)

『取得技能』

 ・瞬間移動

 ・沈黙

 ・流水無双

 ・???

『取得恩恵』

 ・無気

 ・赤眼

 ・???


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