魔族襲撃 後編
「ガァァァァァァァ!!!」
辺り一面が黒焦げになっている場所にとてつもない音量の咆哮が響いた、その咆哮は人間族側の士気を下げ、魔族側の士気を上げるの作戦と分かっていてもそこ場から数歩後ずさってしまう、それほど威力があった。
「ぐっあれが...ドラゴン...」
「魔族に続いてドラゴンもか最悪だな。」
そして立ち向かう者の気持ちを絶望に染めてしまう程の威力もあった、しかしひとつ間違いだったのはこの咆哮が効かず尚且つドラゴンを倒せる力量を持っている者に対してはドラゴンの位置を明らかにしてしまう行為に他ならないということである。
「炎よ、柱となりて敵を焦がせ《フレイムピラー》!!」
ドラゴンの足元から赤い柱が天に向かって突き進みドラゴンを完全に飲み込むと次第に細くなっていき消滅するとドラゴンはいなくなっていた。
「あれ?調節難しいな、素材が残るに温度を下げたつもりだったんだが。ドラゴンといっても火に耐性がない奴だったか?」
『え?』
疑問の声が上がったのを気にせず京太は走り出した、魔族がいる方向に向かって。
「ギャリック様こちらにはドラゴンがいるので勝ち確定ですね。」
「そうだな、暗黒騎士50体分の魔力を注いだドラゴンは下位竜程の力を持っている、並みの冒険者に負ける訳がないからな。」
「そうですとも例えブラックフェンリルを倒したとしてもあのブレスをくらえば死ぬでしょう。」
「ブラックフェンリルは近接戦闘でやられたらしいからな、倒そうと近付いて来たところをブレスで仕留める、我ながら完璧な策だ。」
(ふんっこんな穴だらけの策、策とも呼べないあの時の屈辱今晴らしてやる。)
「ギャリック様あ」
レノスという魔族が何かをいいかけた時天幕に何かが入って来た。
「ドラゴンが!!ドラゴンがやられました!!!」
「何っ!?」
「馬鹿なドラゴンがやられる筈ないだろっ!!!」
「しかし目の前でドラゴンが!!」
「嘘だ!!!あのドラゴンがやられる筈が無い!!」
「本当ですっ!!!本当で」
「ズドォォォン!!!」
天空から凄まじい轟音と衝撃波を伴い降ってきたのは...鎧を着た人間族だった。
「な、なんだ!?」
「お前が大将か?」
「き、貴様は何者だ!!」
「こちらの質問に答えろ、お前が大将かと聞いているんだ。」
「そ、それは....」
「そうです、そいつが大将です!!」
「レノスお前っ!!」
「私達はこいつに命令されて仕方無く!!」
(ここで死ぬわけにはいかない!!この人間族の油断したところをっ!!)
「レノス貴様裏切ったな!!」
「あなたみたいなバカに仕えたいと思うほど愚かではありませんよ。」
「我に仕えるのが愚かだと.......」
「お前がボスか、じゃあ死ね。」
「待てわた」
次の瞬間剣が残像を残さずに振るわれるとギャリックと呼ばれていた魔族の首が飛びレノスという魔族の方に飛んでいった。
「ひ、ひい、お、お助けをっ!!」
「そういえば命令されて仕方無くとか言ってたな...本当か?」
「え、ええ」
「じゃあ嘘か本当か確かめる魔法を使う、火よ、真実を述べない者に死をもたらせ《トゥルースフレイム》」
「それじゃあ問うお前は本当に命令されて仕方無くだったのか?」
「そ、そうだっ、ぐっなんだこれは!?熱い熱いいいいいいい熱いいいいいいい!!やめてくれえええ!!」
「その様子だと嘘だったみたいだな、苦しみながら死んでいけ。」
「分かったあ!!分かったからあああやめてくれえええ!!」
「お前に大切な人を殺される気持ちが分かるのか、炎に焼かれ死んでいった人の苦しみが分かるのか、そしてそれをお前はどうした、止めたのかそれとも笑いながらバカにしたのか。」
「してないっ!!してない!!!グギャアアアアアアアアア!!!」
「《トゥルースフレイム》の効果はまだ続いているぞってことは...そういうことか、もういい、死ね。火よ、灼熱と化し触れし者を焼き尽くせ《ブレイズ》!!」
轟々と燃え盛る炎がレノスという魔族に当たると「アアアアア」という悲鳴が唐突に終わりその身を一瞬で焦滅させた。
「これで死んでいった人達は報われたかな。」
京太は後ろを向いて帰ろうとした、がそこに伝達役の魔族がいた事を京太は忘れていた。
「ぁあ、こ、殺さないで、家族が家族がいるんです、だ、から助けて下さいっ!!!」
「殺した人達にも家族がいただろう、まあいい見逃してやる。」
「ほ、本当ですか!!」
「だがひとつ条件がある、それは」
「そ、それは?」
「魔王とやらに伝えろ次攻めてきたらお前の命は無い、ってな!!」
「ハ、ハイ」
「直ぐ帰れるように送ってやる、風よ、彼の者に翼を与え、魔の王の元へ飛ばせ《ウィングエンチャント》!!」
「う、うわああああ!!」
風の翼が生えた魔族は新幹線並みの速度で北へと飛行...というより吹き飛んでいったというのが正しい程、凄まじいスピードで吹っ飛んでいった。
「これで攻めて来られるのは少なくなる筈、後警告したから次からは魔王を倒しに行っても文句は言われない筈だ。っていうかそんな事よりティアが心配だ速く帰ろう。ライトブーツ《起動》!!」
そう言った京太は全力疾走でティアの所へ戻っていった。
「まだ続いてるのか戦は大将とったら終わりじゃないのか?」
京太のいった通り大将と呼ばれていた魔族を倒しているのにまだ戦いは続いていた。
「今だ、突撃ーーーーー!!!!!」
「うおおおおおおおおおおお!!!!」
(もう終わりそうだな、ティアは...彼処か。)
京太は只でさえ速かったスピードを上げティアのところまで一直線に進んでいった。
「ティア!」
「キョウタさん!」
「大丈夫だったか?」
「はい、一回魔法が来ましたけど10メイル先で消えました。」
「そうか、絶対に結界の外に出るなよ、外には魔族がいるからな。」
「分かりました!」
(ティアの笑顔って見ると心が洗われる気分だ、いつまでも見ていたいな。)
「じゃあ行ってくるよ。ライトブーツ《起動》!!」
「行ってらっしゃい!」
一条の閃光となり魔族と人間族が争っている所へ駆けていった。
「ぐっコイツら手強いぞ。」
「斬っても斬っても押し寄せてくるから埒が開かないな。」
「火魔法の《ファイアアロー》を使ってくるぞ、気を付けろ。」
「くそっ後衛が一人やられた。」
「足を狙って動きを止めろそうすれば戦いやすいぞ!」
「みんな黒い影の足を狙って動きを鈍らせるんだ!!」
「動きを鈍らせばいいんだな、土よ水よ、合わさって泥となり黒影の足を止めろ《マッドチェーン》!!」
黒い影の下から泥が湧き黒い影の足を包むと完全に固まり黒い影は全くと言っていいほど動かなくなった。
「動きが止まった今がチャンスだ、奴等を切り刻めえええ!!!」
「おおおおお!!!」
「これで終わりだな感謝するってキョウタじゃねえか!大将の首とってきたのか!!」
「まあな、意外と呆気なかったよ。」
「へえ、魔族の大将が呆気ないねえ、お前ならあり得ない話じゃないな。」
「それは兎も角、俺もあれに参加していいか?」
「おお、是非頼む少し手こずっているからな。」
「癒しの水よ雨となりて降り注ぎ傷を癒せ《ヒーリングレイン》!!」
京太が詠唱を終えると、雨が降り黒い影に止めを刺している冒険者の傷を治していった。
「これで戦闘に参加出来るな。」
「お前そんな高度な治癒魔法を使えるのか、凄えな。」
「光よ、闇から生まれし者を無に帰せ《ライトプリフィケーション》!!」
今度は光が発生し黒い影は装備品を残し消えていった。
「終わった、か」
こうして魔族の襲撃は終わった少なくない死人を生んで....
次は3月29日に投稿します。