魔族襲撃 中編
「ま、魔族が死んだのか?」
「何がおきたの?......」
魔族が死んだ後、そんな会話が繰り広げられていた、一体何が起きたのか疑問に思う者、誰が魔族を殺したのか探す者、高い魔力防御を持つ魔族を魔法で倒した事に驚く者等様々な反応をしていた。
「やったのは俺だ。」
驚き、不安、戸惑いが混濁している空間にそんな声が響いた、「やったのは俺だ。」という言葉はこの場では魔族を殺したという意味になる、しかし魔族を魔法で倒した、など普通は信じられない、何故なら魔族は身体能力もあるが一番恐ろしいのはその魔力量と魔力制御の精密さ、そして魔力防御の高さである、つまり魔族に魔法でのダメージを与えるには火魔法Lv5の《フレイムバースト》を使ってやっとダメージらしいダメージを与えられるのだ、そんな真似が出来るのは熟練の魔術師クラス位である、18歳の若手冒険者がいった所で信じられないだろう。そしてそれは彼らにも当てはまった。
「お前がやった?馬鹿な事を言うんじゃねーよ、魔族の魔法防御がどれだけ硬いかしってんのか?」
「そうよ、《ウィンドカッター》に幾ら魔力を込めたって魔族の魔法防御を突破出来ないわ!!」
「いま言った嘘は忘れてやる、だから速く避難しろ、いつまた魔族がやってくるか分からんぞ。」
自分の言った事が信じられていない、又は嘘扱いされている事に腹が立った黒髪の少年...京太は自分の力を示すと共に驚かせてやるといった思いで風魔法を使い自分の声が全体に届く様にした。
「お前らが俺の力を信じられていないというならいまこの場で見せてやる、火よ、その炎で敵を焼け《ファイア》」
「あのねえ、《ファイア》程度で魔族をや」
京太の周りに3つの蒼炎が出現し魔族の死体に触れ「ボオッ」という音と共に消えた魔族の死体を見て一同は沈黙した魔族の死体が《ファイア》という大して威力のない魔法によって焦滅したからだ。
「え?」
(あれ?全部燃え尽きちゃったか、焦がして塵にしてから《ウィンドトルネード》で黒い竜巻を作る予定だったのに、魔力込め過ぎたな、次からは気を付けよう。)
そんな事を思っていると冒険者達がざわつきはじめた、恐らく自分のせいだと思った京太が近付くと、冒険者達は京太が一歩踏み出すごとに一歩後退って行きやがて後退ら無くなると京太は言った。
「お前らは魔族を討伐してるんだろなら俺も混ぜてくれないか。」
遊びに混ぜてくれ、という風に言った京太は魔族の素材が手に入り、冒険者達にも名前が知られ、ギルドには活躍をアピール出来るという一石二鳥どころか三鳥の得が出来る等と考えていた。本来ならば魔族はドラゴンやグリフォンと並ぶような強力な魔物であるそれを金になる素材や活躍をアピールすることに利用するなど愚者の考えである、が京太は神に力を貰い魔族を圧倒する存在になった為、その様な考えをしても仕方ない事なのかもしれない。
「何?俺たちに協力してくれるのか?」
「協力する、だが一つ条件がある。」
「なんだ?」
「素材をくれ。」
「素材?ああ、別にいいが..とても売れる様な状態じゃないぞ。」
男はさっき魔族を焼いた所に残っている焦げ跡を指差しながら言った。
「あ、次からはちゃんと残しとこ。」
「それで仕留め逃すなんてのは無いようにしろよ。」
「ああ、分かった。」
「皆行くぞ!!!!!」
『うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』
こうして京太とティアと冒険者達の魔族討伐が始まった。
「ぐっ人間族風情が魔族の手を煩わせるんじゃない!!!」
「キンッ」という音がして、剣が弾かれた事を知った魔族は苦虫を噛み潰した様な表情をして結界を張ると剣を垂直に立て目を閉じ何やら瞑想をし始めた、しかし剣に魔力が注ぎ込まれ、目を大きく見開いた瞬間に見たのは首がない自分の胴体だった。最後に聞いたのは「収納」という言葉と自分の首が燃やされる「ボオッ」という音だった。
「ふう、終わったか。」
「す、すげえ本当に人間かあの坊主。」
「動きを捉えられなかったぞ。」
「いつの間にか、魔族の首が飛んでたわよね。」
「いちいちそんな事を言っていたらキリがないぞ、何回目だあの坊主の化け物っぷりを見たのは。」
「確かにそうだな、壁走ったり、剣の間合いに入っていないのに魔族が斬れたり、魔族が凍らされてたりいちいち驚いてたらキリがないな。」
当の本人はそんな会話がされていることなど知らずに魔族を斬り、貫き回収していった。
「可笑しい、可笑しいぞっ、なぜ宝や魔道具が来ないのだっ!!」
「ギャリック様、落ち着いて下さい、ブラックフェンリルを倒したキョウタという冒険者が悪足掻きしているかもしれません、ここは暗黒騎士長と暗黒魔竜、暗黒騎士や暗黒魔術師を向かわせましょう。幾らブラックフェンリルを倒したとしても所詮人間族です、持久戦に持ち込めば殺せるでしょう。」
「そ、そうだな、取り乱すのは我らしくない、くそっ確かキョウタといったか人間族にしておくのは勿体ないな、もし魔族だったら魔王様の良き部下となれたかもしれないのにな。」
「もっともですな。では暗黒騎士長を3体暗黒魔竜を2体暗黒騎士と暗黒魔術師を30体ずつ出します。そして、我々の同胞も出すべきかと、」
「分かった。よく聞け皆の者暗黒騎士達を引き連れ出撃するのだ!!そして必ず生きて帰ってこい!!」
『了解しました!!ギャリック様!!!』
「うむ、必ず生きて帰って来るのだぞ。」
こうして魔族たちは出撃していった、悪夢を見る事を知らずに....
「キョウタさんは凄いですね、その若さで剣術は一流、火と風と水と光に適性があって治癒魔法も使える、これがランク1冒険者なんて信じられないです。」
「ずっと剣術の訓練と魔法の訓練をしてきましたからね、正直もっと他の属性が使いたかったですね、火と光って似ててあまり楽しく無かったから。」
「そんな事言っちゃ駄目ですよ適性があって魔法が使えるだけでも感謝しなきゃ適性が6属性全部あるなんてモンスター入れても5しかいないんですよ。」
「へえーそうなのか。」
(やっぱり賢者2人と王様1人ドラゴン1体大精霊1体か、なんか全員極めてそうだな全属性、やっぱり強いんだろうな~まあ戦うつもりは...ドラゴンとは戦うかもしれないな。)
「魔族だっ魔族が来たぞおおおおおお!!!」
「総員戦闘準備、前衛は後衛を守りながら攻撃、後衛は前衛から離れずに状況を見て魔法を使い分けろ、そして死ぬなよ!!」
(アイツも良いこと言うな、おっと感心してる場合じゃない前衛の加勢に行かなきゃ)
「相手は魔族が5人黒い影が総勢60、あれは..皆さん気を付けて下さい竜がいます、それに黒い影にもなにか様子が違う奴がいます。」
(竜?....魔族のついでに倒しとくか、どうせ偽物だろうけど。)
「っ!?魔法!?敵の黒い影が魔法を使って来ます。基本的には攻撃魔法、それに治癒魔法も使っています。」
「んじゃ、行くか!!」
「行ってらっしゃいキョウタさん!!」
「ちゃんと隠れてるんだぞティア」
「はいっ!!」
ティアがそう言うと京太は微笑みを返し、魔族達がいる方向を向いて目に剣呑な光を宿し、走り出した。魔族を一人でも多く倒す為にそして、今まで殺してきた人々の無念を晴らす為に...
次回魔族襲撃編完結です。