変態
「何だかカバンが重くて‥‥‥」
「え?」
私の言葉に首を傾げたルリはそんなはずはないとカバンを持ち上げる。
「ん‥‥‥、あれ?本当だ‥‥‥」
ルリが持ち上げようとしてもカバンは全く上がらない。
ルリは不思議そうに首を傾げて、私の荷物を準備したことを思い出しているのか無言で斜め上を見ていた。
「そんなに重くはならないはずなんだけど‥‥‥」
そんなことを言いながら私たちが考えているとモゾモゾとカバンの中身が動き出す。
「「え!?」」
私たちは思わず声を揃えてカバンに目線を落とした。
何故、カバンが動くのか‥‥‥恐怖を感じた私だったが、ルリはカバンのチャックに恐る恐る手を伸ばす。
「だ、大丈夫‥‥‥?」
ゆっくりとチャックを開けると勢いよく中のものが顔を出した。
「ぷはっ!い、息苦しいですわ‥‥‥、でもこの苦しさがクセになるんです‥‥‥」
少し頬を染めた金髪の変態が現れる。
「だ、誰‥‥‥?」
若干引き気味の私の隣でガクガク震えるルリの姿が視界に入った。
「皇帝様の娘のレイア様ですよ!」
「え!?」
私はあまりそういう外のことに疎いために知らなかったが、超有名人、そして私たちより遥かに位が高いお方だ。
「い、いきなり名前を訊ねてすみませんでした!」
私は土下座をしながらお許しを貰おうと必死に謝罪する。
「何故、カバンの中に‥‥‥?」
土下座する私をそのままにルリはレイア様に訊ねた。
「我が城にいらっしゃるということで仲良くなりたいと思いまして、こっそり夜中にカバンに入り込みましたの。皆が寝静まった夜に家に侵入するあのスリルはもう‥‥‥」
うっとりとした表情で饒舌に話すレイア様を見て、この国の将来が不安になってしまう。
こんなことは口が裂けても言えないが心の中でなら言える、こいつは変態だ。
私は失礼ながらこの方を蔑む。