転機
‥‥‥が、ルリには全く通用していないのか一切表情を崩すことなくじっとソファーに座っている総騎士団長さんを見下ろして対抗しているように見える。
「‥‥‥じゃあ貴女も来るかしら?」
うっすら笑みを浮かべながら総騎士団長さんはルリを上目遣いで見上げてそんな提案をしてきた。
予想外の発言に先程まで殺気に満ち溢れていたルリの表情が驚きによって一気に崩れる。
「しかし‥‥‥」
ルリの言葉をわかりきっているかのように総騎士団長さんは被せるように口を開いた。
「バイス様の許可でしょ?」
「はい‥‥‥」
言いたいことが読まれて少しムッとした表情のルリ。
確かにあの頑固親父を説得しないことには私達は外には出れない。
といっても無理に近いけど‥‥‥
「実はとっくに許可はもらっているわ」
ふふん、と得意気にそんなことを言いながら証拠の契約書的な紙を私達に見せてきた。
本人次第ということだったんだね‥‥‥
私は絶対行きたいけど、ルリはどうだろう?
ちらっと私の横に直立しているルリを見上げると表情は無表情で考えがわからない。
「私は行きたいけど、ルリは‥‥‥」
「いいですよ、バイス様の許可もあり、アリス様が行きたいということでしたら止めることは出来ません。それに私も同行するのであれば私も是非」
ルリは半ば諦めたように言葉を発していたけど、とりあえず、よかった‥‥‥認めてくれた‥‥‥
ほっとした安堵の気持ちとこれから出ていく外の世界へのワクワク感で体がふわふわしている感覚、心地良い‥‥‥
「ありがとう、これからよろしくね」
「はい!」
向けられた笑顔に私も満面の笑みで返した。
この時から私の人生が大きく変わる予感がした。
知らない世界をこの目で見れる、自由が手に入る‥‥‥
この先に待っていることは楽しいこと、嬉しいことだけじゃなくてもちろん怖いことだってあるかもしれない。
けどこんな雨、風、餓えを知らないまま豪華な屋敷に傷のないまま籠るよりは断然良いことだし、きっと経験がこれからの私の人生を彩ってくれるって信じてる‥‥‥