最強の依頼
客室に入ると、金髪で腰まである長い髪のスーツ姿の女性が私を待っていたのか、私の方向を見つめながらソファーに腰掛けていた。
「この方は帝国軍の総騎士団長のフェリア・ナーバレス様です」
ルリの紹介に私は目を見開いた。
総騎士団長、帝国で最も強いものが与えられる地位。
そんな偉い人がどうして私に‥‥‥
「あの、ご用件は‥‥‥?」
私が首を傾げて訊ねると、総騎士団長さんは表情を変えることなく凛とした声で答える。
「アリス・ハーウェルド。貴女のことはよく聞いてるわ」
え‥‥‥?知り合いがいるのかな?
「どうして私のことを‥‥‥?」
「有名だから誰でも知ってるわよ?住所も」
あー、聞いたことある‥‥‥貴族の情報が載ったサイトがあるって、まぁ税金を半分にする代わりに情報公開という条件で公開されてるんだよね‥‥‥
「ハーウェルド家の中で最も魔力のある貴女にお願いがあるのよ」
「はぁ‥‥‥」
「魔導武具の収集をお願いしたいのよ」
魔導武具、確か魔力を注ぐことで力を発揮する武具のことだった気が‥‥‥
「魔導武具を手に入れることで近隣諸国への牽制も出来るということでね、頼めるかしら?」
魔導武具とか帝国の思惑はよくわかんないけど、家から出れるチャンス!!
「是非ともお願‥‥‥」
「お断りさせていただきます」
「ルリ!?」
ルリが私が話している最中に割ってきて勝手に断った。
「そのような危険な依頼をこのような外の世界もろくに知らないアリス様にするのはどうかと思われます。勝手な判断ではありませんがアリス様のことを思ってお断りさせていただきます」
メイドの職業で身に付けた綺麗で手本のような深々と頭を下げる謝罪のポーズをするルリ。
「どうして断るの!?私、行きたいよ!!」
深々と頭を下げるルリのメイド服の袖をぎゅっと掴んで私は理由を訊く。
「理由は簡単、危険だからです」
無表情で冷たく言葉を放つルリ。
機械のように感情を抑えているルリは本当の姿ではないといえ、かなり怖い。
「ふぅん、危険なら私達が剣術やら体術を手取り足取り、教えてあげるわよ?」
甘ったるい声でねっとりとした口調でそう言う総騎士団長さん、ここに男はいないからあまり意味無いんじゃないかな。
「無理なものは無理です、きっとバイス様もそう仰るでしょう」
「あ、そう。貴女の意見はわかったけど一人のメイドの意見なんて聞くかしら?従者である貴女の意見なんて、ね?」
ギロっと鋭い眼光で冷たく言い放つ総騎士団長さん、さすがの威圧感でルリとは違って動けなくなるような感覚になる。