訪問者
ユリアちゃんとの楽しい一時を過ごして、私はまたこっそり地下室へと戻る。
はずだったが、道中で真っ黒なスーツに身を包み荷台を引っ張る真っ黒な馬に乗った怪しげな男に声を掛けられた。
「こんなところで少女が一人‥‥‥ここは危険ですよ?」
男は不気味な笑みを浮かべながら、私にそう言ってきた。
身体中を舐め回すかのような目線が気持ち悪い。
「大丈夫‥‥‥家近いし」
私は不機嫌な表情を相手に向けてそう言うと、逃げるように地下室へと繋がる穴へと向かい、そこから地下室へと戻った。
戻った後はゆっくり出来ず、本を元の場所に収納し、何事もなかったかのように、床の上で仰向けで寝る。
それにしてもさっきの男は本当に気味が悪い‥‥‥
何かと不吉な色として聞くことが多い黒をあんなにも好んでいるのかわからないが纏っており、そう思わせようとしているに違いない。
そんなことを思っているといつの間にか寝ていたようで、扉が開く音で目覚めた。
「ちゃんと反省されました?」
反省など期待してないような呆れた様子でルリが私の部屋に入ってくる。
こ、こいつめ‥‥‥諦めるなよっ!
「反省しました~もう出してよ~」
床をゴロゴロ寝転がりながら私はルリにお願いする。
「反省、してる?」
ルリは私を見下ろしながら、疑いの言葉を掛けてくる。
「ん?これは‥‥‥」
ルリはふと私の足を見つめて、首を傾げた。
「この汚れは‥‥‥」
その言葉に私はピタッと、金縛りにあったかのように静止して、冷や汗が自然と額から分泌される。
「い、いやぁ‥‥‥」
私は恐る恐る、ルリの顔を見上げた。
「外、出ました?」
ルリは外へと繋がる穴か何かを探しているのかキョロキョロと辺りを見渡しながら私に言ってきた。
「出てないよ~、出れるわけないじゃん‥‥‥ははは‥‥‥」
穴が見つからないことを祈るばかりで私は何の効果も持たない嘘をついて。
「本当ですか?」
じっと私を見透かすように見つめてくるルリの視線に耐えられず、私は目を逸らした。
「‥‥‥まぁ、いいです。こうしてここに来たのは、貴女へのお客様がお見えになったからなのです」
いつもの無表情でそう言ってくるルリ。
私に来客‥‥‥?そんな人がいるの?
私は疑問に思いつつも地下室からの開放で少しばかりの安堵を覚えた。