再び
「アリスちゃん!?」
ルリは主の土下座に困惑してあたふたしている。
「お願い!!」
「あ、頭を上げて!お願い!」
「地下室に連れていかないなら上げる!」
「うぅ‥‥‥」
ルリはアリスの願いか、バイスの命令か、どちらかを取るかで悩んだ。
ルリは幼少期からずっと共に育ってきた姉妹のような関係。
だが、バイスはルリにとっての恩人、バイスがいなければ今のルリはいなかった。
「アリスちゃん‥‥‥ごめん‥‥‥やっぱり、アリスちゃんのお父様は裏切れない‥‥‥!」
ルリは今にも泣きそうな表情で、頭を床につけるアリスに言った。
「そっか、じゃあ仕方ないっ、大人しく地下室に行くよ」
ルリの言葉に納得したのかアリスは立ち上がり笑顔でルリにそう言うと地下室の方に歩いて行く。
「‥‥‥ごめん」
地下室に向かうアリスの後ろをうつむきながらついていき、アリスに謝る。
「大丈夫だってっ、ルリは悪くない!悪いのはお父様!」
アリスはルリを慰めると、ルリはジト目でアリスを見つめた。
「‥‥‥悪いのは私です、すみません」
「地下室だと脱走はできそうにないので、大人しくしてください」
地下室につくと、アリスは素直に地下室の中に入り、ルリはいつもの無表情でそう言うと地下室の鉄の扉を閉めた。
薄暗い照明に、ぎっしりと本が敷き詰められた本棚に囲まれ、床は赤いじゅうたんがしかれており、殺風景ではない地下室。
だが、読書が嫌いなアリスにとっては退屈な空間でしかない。
すぐにアリスは目の前の本棚の真ん中の本を全て取り出すと、ちょうど本棚の横幅と同じくらいの穴があった。
「地下室に入れられるたびにこのスプーンで掘り続けた抜け道で、会いに行くからねっ、ユリアちゃん‥‥‥!」
そう言うとアリスは穴の中に入り、屋敷を抜け出した。
「ぷはっ!やっぱり、外の空気はいいっ♪」
穴は屋敷の裏の森に繋がっており、穴の外に出るとアリスは深呼吸してダッシュで町の方に向かって行く。
「ユリアちゃん‥‥‥いない‥‥‥」
アリスはいつもユリアがいる噴水がある広場に来たがユリアの姿は見当たらないらしい。
「いつも靴磨いているのに‥‥‥」
アリスは寂しそうに広場のベンチに座り、広場を眺めると様々な人が様々な表情で様々な行動をしていた。
「やっぱり外っていいなぁ‥‥‥」
ボーっと人々を見ていたアリスの視界を暗闇が覆うと共に甘い声がアリスの背後から聞こえる。
「だーれだっ」
「その声は!?」
アリスのテンションが一気に跳ね上がる。