二人きり
「よ、幼女‥‥‥?」
バイスは娘の思わぬ発言に唖然としていた。
しかし、ルリは表情を変えることなくバイスに言う。
「ご主人様、お嬢様が変わり者なのは今に限ったことではありません」
「ちょっと!?」
アリスは納得していないようだが、バイスはやれやれといった様子でため息を吐き、アリスに言う。
「まぁ、お前が恋をするのは構わない、ただ周りが見えなくなるほど夢中にはならず、冷静さを残しておかなければならない、恋に限ったことではないがな」
バイスの言葉にアリスは頷いて部屋を出ようとバイスに背を向けて歩き出すと、バイスに呼び止められた。
「アリス、屋敷を抜け出したことについては反省してもらう。ルリ、アリスを地下室に閉じ込めろ」
「え、ええ!?嫌!!地下室は嫌!!虐待だ!!帝国軍に言いつけてやる!!」
アリスは必死に抵抗するが、ルリに引きずられ部屋を無理矢理出された。
「ルリ、離しなさい!!自分で歩けるわ!!服が汚れるでしょ!?」
アリスはルリに怒鳴るがルリはアリスの言うことは聞かず無言で引きずり続ける。
「‥‥‥お嬢様、何故幼い女性を好きになられたのですか?」
突然のルリの質問にアリスは少し驚いた。
「何?気になるの?」
アリスはニヤリと口角を上げてルリに訊くと、ルリは少し顔を赤らめながら言う。
「そ、そりゃ、長年仕えてきたアリスちゃんの初恋だもん、気になるよ」
さっきまでの落ち着いた雰囲気とは違い、年相応の雰囲気になり、敬語がなくなるルリ。
実は二人は同い年で、アリスの命令により、二人きりの時はこうして友人のように接する。
「‥‥‥んー、何故って言われてもいっぱいあるけど、やっぱり無邪気で大人みたいに無駄に隠したりしないことかな?」
「アリスちゃん‥‥‥」
ルリはアリスが幼い頃から大人と接してばかりで疲れきったことを知っていたので、少し納得できた。
「ルリならわかってくれるでしょ?‥‥‥だから、地下室はやめて!お願い!」
アリスはルリに頼み込んだ。
主の頼みにルリは戸惑う。
「で、でも‥‥‥」
「明日も会う約束したの!だからお願い!」
「め、命令に背くわけには‥‥‥」
「こうなったらこれよ!!」
そう言って、アリスは床に頭をつけて土下座の形でルリに頼んだ。
「お願い!地下室に連れていかないで!!」