救いようがない
「レイア様、また協力者を脅したのですね?」
昨日とは違い、明らかに不安そうな私の様子を見るなりフェリアさんはレイア様に呆れたような声で言った。
「ふふ、人をからかうというのは楽しいですわっ」
この人はネジ曲がった変態だ‥‥‥
「そして、また勝手に家に入り込んで‥‥‥牢屋に入れられてしまいますよ?」
「大丈夫ですわ!私の権力で捻り潰します!」
得意気な顔でそう言うレイア様をまるでゴミを見るような目で見つめるフェリアさん。
大丈夫‥‥‥?相手は皇帝の娘だけど‥‥‥
「な、なんですの‥‥‥?その目は‥‥‥」
ほら、レイア様は私に背を向けているからわからないけどぷるぷる震えている。
きっと怒ってるんだろう。
「た、たまりませんわ‥‥‥」
あれ?
「え?」
思わず声が出てしまった、聞き間違いかな?
「あ、いえ‥‥‥何も」
一瞬空気が凍ったことに気づいたらしく、レイア様は何事もなかったかのように澄ました顔をするが、ほんのり頬が赤いのが横顔から分かる。
しばらく沈黙が続くと早くこの空気を変えたいレイア様が、迎えに来た馬車に無理矢理私たちを乗せ、フェリアさんに城へ向かうように命じた。
「‥‥‥こほん、改めて今回の依頼を受け入れてくださってありがとうございます」
城へと走る馬車の中でレイア様は私たちの方に向いてお礼の言葉を述べてくれたので思わず私たちは頭を下げる。
「ふふ、そんなにかしこまらなくてもいいですよ?」
素敵な笑顔だなぁ‥‥‥でも、離れない‥‥‥さっきの『たまりませんわ』が離れない‥‥‥
「でも‥‥‥」
「私、こんな綺麗な服を着て人々に慕われるような人間ではないですもの‥‥‥お父様やお母様のように立派な方々の足下にも及びません」
この人‥‥‥何だか私と似てる気がする。
「外に出れば私をレイアではなく、お姫様扱い。少し転けただけで人だかり‥‥‥こんな扱いは本当は嫌ですの‥‥‥国民の皆様には申し訳ないですが‥‥‥」
「私もです!」
突然、感情が抑えられず無意識に体を前のめりにさせて私の口が開く。
「貴族だからって外に出してもらえないし、したくもない学業を押し付けられ、成績が悪ければ説教‥‥‥うんざりです!」
いつのまにか声が大きくなってしまって怒鳴るような感じでレイア様に話してしまった。
「あ、すみません!つい、熱が入ってしまって‥‥‥」




