第五話「きみはおとこのこ、わたしはおんなのこ」
彼女は彼といると安心するけど、彼はどうなんだろうか。
男の子たちに「二人は両思い」と囃し立てられて、彼は不機嫌になる。
男の子と女の子はそんなに仲良くしちゃいけないと、彼女は思った。
◇
君がいないだけで
こんなにからっぽ
だったなんて
線を引くように
爪で引っ掻くように
入り込む余地もないくらいに
混ざらない色を知る
言葉の一つ
表情の一つ
心音の一つ
たったそれだけで
君が遠くなっていく
混ざっていけない色が
交じっていけない線が
変わってしまう瞬間に
触れてしまって魔法が溶ける
「オトコノコ」
ト
「オンナノコ」
たったそれだけの言葉の違いで
君が遠くなっていく
言葉の一つ
表情の一つ
心音の一つ
君がいないだけで
こんなにからっぽ
だったなんて
◆
認めたらいいのに
頷いたらいいのに
声にならない声が音にもならなくて
声にしなくても伝わることが多い だなんて
声にしないと伝わらないことのほうが多いのに
雪が降る前のように
悴んだ空気が 君との距離を霞ませる
君の悲しい目を
作ってしまったのは僕で
誰よりも君の事を思っていると
誰よりも思っていたはずなのに
シンプルに言えばi love you?
青臭くて 使い古されて
言葉にすることがコワくて
僕は弱さと醜さに縛られて
声にしなくても伝わることが多い だなんて
声にしないと伝わらないことのほうが多いのに
声にできずに
白い吐息に消えて
君の面影を消すように
声にならない声が音にもならず
雪が降る前のように
悴んだ空気が 君との距離を霞ませる
声にならない声が音にもならなくて