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4 図書館

本日二度目の更新でございます

次の日もベラは私を迎えに来た。その次の日もその次の日も。もう避けるのもばからしくなってきた。途中で、公爵令嬢に毎日迎えに来てもらうのって失礼なんじゃないかなと悩んだのだが、相手が好きで迎えに来てるんだからいいか、という結論に達した。最近、私はもっぱらベラ専用のいたずらお試し機になりつつある。たまにウォルターも被害に引きずり込んで私もなかなかにエンジョイしてしまってるのだけれど。


ヴァレリーはやっぱり私の中で永遠のヒロインだわぁ、と今日も鏡の前でポージングしている。今日はとっても重要なミッションがあるのだ。そのための精神統一ポージングである。そうやってしばらく鏡に向かってにやついていると、ベラがドアのベルを鳴らした。


「はぁい、おはよう、ベラ-----」


ドアを開けるとそこにいたのはベラと、もう一人。あまり関わりたくない彼だった。


「おはようヴァレリー!見て、今日はなんと王子様も来てくれたよ~」


「やぁ、おはよう」


そういって微笑むのは、スティーヴン第二王子だった。


私は何事もなかったようにドアを閉じた。


「あら?どうしたのヴァレリー?出ておいでよ、ヴァレリー、ヴァレリー!」


ベラがドンドン音を立ててドアをたたく。一息ついて心の中を整理する。


「ベラ。ドンドンしないで。ちょっと忘れ物があったの」


意を決してドアを再度開く。今最も避けたい男ナンバーワンの王子と、にっこりほほ笑む公爵令嬢がいた。


「ヴァレリーがさ、王子のこと苦手そうだったから連れてきちゃった~」


えへへと悪気もなく言い放つベラに、私と王子は思わず視線を交わしてしまった。


「ベラ、それは本人の前でいっちゃだめよ」


「うん。だから、二人に仲良くしてほしいなって。ほら、スティーヴンも君に言いたいことがあったんだってさ」


「あ、そうだ。君にお礼が言いたくて」


「……お礼」


はて、私は彼に何かしただろうか。秘密裏の護衛をさぼったこと以外、彼に関することで積極的に動いた覚えはない。


「そう。ベラのいたずらのみがわ……ごほん。ベラの新しい友達になってくれたそうで。ありがとう」


この王子今身代わりって言ったよね。国民を犠牲にするとは。私機械だから民じゃないけど。


こちらこそおかげさまで楽しい学園生活を送っていますわ、おほほほほと慇懃無礼に返したかったが、あいまいに笑うにとどめた。


「それより、もうすぐ授業が始まってしまいますよ。行きましょう」


そうして私たち三人は走って授業に向かった。






今日の最後の授業は誰とも一緒ではなかったので、私は知人に見つからないよう図書館に急いだ。


フィロ学園の図書館は、かなりの大きさで、すさまじい蔵書量を誇る。建物も、庭に丸く突出した部分は全面魔法で加工されたガラス製で、遠くからは白い壁にしか見えないが、近寄るとガラスが透けて見事な庭園が見られる。さらに、図書館内にも木が植わっていたり、花壇があったり、壁には彫刻が彫ってあったり、学園内の施設でもかなり力を入れられた作りになっている。


私はゲームプレイ時の記憶をたよりに、まっすぐ資料庫に向かう。


ここ数日、私はあるアイテムを探して学園中をめぐっていた。なにもせずに能天気に学園生活をエンジョイしていたわけではないのだ。資料庫の目当ての場所にたどり着き、先日やっと見つけたそのアイテムをローブのポケットから取り出す。


周りに誰もいないことを、熱感知機能つきの目と、その気になれば数キロ先で猫が歩く音も聞こえる耳で確認する。よし、誰も来ない。私は深呼吸をし、手の中にあるアイテムと、目の前の壁に掘られた彫刻を見比べる。


私が今手に握っている、こぶし大の水晶は、失くされた鍵というアイテムだ。その通り、数十年前に鍵の管理人が落としてからずっと誰にも発見されなかった鍵である。何の鍵かと言うと、それは私が今立っている資料庫の隠し扉を開けるための鍵。壁の彫刻の、ちょうど丸くくりぬかれた部分に差し込むと開く仕組みになっている。


ええい!と水晶をはめ込むと、がこんという音とともに、壁が埃を回せつつ、かすかにへこむ。軽く手をあてて壁を押すと、スイングドアにように壁が割れ、水晶が落ちてきた。あわててそれをキャッチし、壁が閉じる前に中に入った。


壁の内側はまっくらだったが、あまり広くなかったのと私の高性能な目のおかげで目当てのものは難なく手に入った。


「これよこれ!本当にあるとは……よかったぁ」


私が手にしているのは、レポートと呼ばれるレアアイテム。しかもこれはヴァレリーに関する書類だ。ゲーム中の名前は確かヴァレリー設計書1とかそんなやつ。なんでこんな異国の図書館の隠された部屋にあるかなんて、きっとそれはゲームのご都合主義なんだろう。そんなことはどうでもいいのだ。このレポート自体に書いてある情報は大したことはないのだが、このアイテムが存在するということは、もっと踏み込んだ内容の設計書4以降のレポートも存在するということ。私は生きる希望を見出した。


ひそかにガッツポーズをし、書類を丁寧にしまい、壁の中の部屋をあとにした。明日からは設計書2以降を探していこう。

読んでくださりありがとうございます!

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