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1 学園到着

あらすじ:機械として目覚めたヴァレリーは自分が爆発死すると知り、現状を打破するべく留学予定の学園の技術者と懇意になろうと画策しています。

私たち総勢十数名の留学者たちは、私が生まれて7日目にタリカス国へ出発した。王宮には、夏のイベントで来るかもしれないが、もうあの鏡とベッドしかない簡素な部屋に戻ることもないだろうとお思うと少し寂しい。


馬力と魔力を組み合わせたハイブリッドカーとも呼べそうな馬車で、アステル国を後にする。


馬車と言っても前世でいう大型バスほどの容積があり、内装もゆとりのあるデザインで、ちょっとした寝台電車のようである。実際一人ひとつ個室がある。青と金を基調としたデザインは、威厳がありつつもどこか楽しげで、魔法がかかっていそうな雰囲気だった。個室の奥にある共用スペースでは、数人の学生がちらほらとグループをつくっていた。


私はウォルターと同じ馬車になったので、ほかに知り合いもいないし、彼にひっついていた。


彼の留学中止は無理だったので、それなら仲良くしておくに越したことはないと考えた。それによく見ると彼以外にも見たことのある人がちらほらいたので、ウォルター一人留学阻止できたとしても意味はなかったようだ。どうせみんな技術科だろう。タリカスまで2日かかるらしいので、知り合いがいてよかったと思うことにした。


「先輩先輩、あっちにほら、風車が」


ウォルターがは私より一学年上になると聞いて、私は彼を先輩と呼ぶことにしたのだった。場所の窓の向こうには、ずんぐりむっくりした風車がゆっくりと動いている。この世界では魔力のほかにわずかながら電力も使われている。石油や核燃料がないために、大規模な発電施設はないようだが。そんなことを考えていると、後ろからため息が聞こえてきた。


「お前、あんなに俺が来るの嫌がってたくせに」


「何言ってるんですかー先輩と一緒で超絶嬉しいですよー。先輩こそそんなすねないでください、こんなにかわいい女の子と一緒にいられるんだから!」


「かわいい……女の子……とは」


「私!私のことです!ウィスタリア先輩!」


はいはい!と手を挙げて飛び跳ねると、馬車が何かに躓きガタンと揺れた。正面に立っていたウォルターに顔面から倒れこむ。鼻を強かに打った。


「痛いです先輩。意外と鍛えてるんですね」


「おい。意外とってなんだ。まず謝りなさい」


「はい、すいません~」


「本当に落ち着きがないな。お前それでも……」


「いいじゃないですか~今どきの女学生なんてこんなもんですよ」


「いやいや、それは全女学生に対する侮辱だ」


「なぁに言ってるんですか!もう」


そんな調子で終始和やかにタリカスへの旅はすすんだ。





アステル国はどちらかと言うと機械技術が発達していたが、タリカスは魔法技術のほうに力を入れて

いる、と知識の上では知っていたし、実際ゲームでもこの国の中を縦横無尽に走り回ったのでどんなところかはわかっていた。しかし実際見ると、全然印象が違う。


予定時刻よりも早くつきすぎた私たちは、今夜のタリカス国の学園前広場に立っている。空中には赤いほおずきのような形のライトが光の花粉を散らしながら浮き、足元ではスズランを模したライトが輝いている。広場の中心にある噴水では、数メートルにも上る高さの水柱が輝き、私たちを歓迎していた。確か噴水の中心部にはクリスタルのネックレスというアイテムが沈んでいたなぁ、なんて考えながら噴き上げ流れる水を眺めていた。


「綺麗ですね~先輩。やっぱり百聞は一見に如かずというか、見れてよかったです」


「そうだな」


「あっ、あそこに屋台がありますよ。向こうには協会がありますよ!ステンドグラスとか素敵なんだろうなぁ」


「そうだな」


「……先輩聞いてます?」


「どう思う?」


じとっとした目でみつめるていると、彼は何かに気付いたようにおい、あれは誰だ、と私の後ろを指差す。その手には乗りませんとにらんでいると、後ろからヴァレリー!と呼ぶ声がした。嫌な予感しかしない。


「ヴァレリー!」


「あら、ベラ」


「もう、せっかくいろいろ仕入れてきたのに馬車が違うんだもの。残念だわ」


仕入とはいたずらグッズだろうか。馬車が違ってよかった。私がそんなことを考えていると、ベラは私の横へ視線をずらした。


「あら~ヴァレリー、そちらの方は?まさか……」


にやにやと笑顔がベラの顔に広がる。私はため息をついて、ウォルターをベラに、ベラをウォルターに紹介した。


「お友達の、ウィスタリア先輩です。それ以上の何者でもないです。ウィスタリア先輩、こちらベラ・ブルーベルさんです」


「うふふふふふ。初めまして、ベラ・ブルーベルです。今後ともよろしくお願いいたします」


そう言って差し出された彼女の手には、私の時のようにいたずらがしかけてあったんだろう、ぺちんと軽快な音ともにウォルターの手に輪ゴムが当たった。驚いて手をさするのウォルターに、私の話を聞かないから罰が当たったんですよと言い、ベラに心の中でサムズアップをする。


そうこうしているうちに、学園側の準備が整ったようで、私たちは学園内に案内された。

読んでくださってありがとうございます!やっと学園ものらしくなりそうです。

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