プロローグ4 留学へ
長いプロローグがやっと終わりそうです。次からは学園らしいはなしになるはず!
その後、ウォルターや開発局の人たちに魔法の手ほどきを受け、なんとか蛍光マリモを狩れる程度の実力を手に入れた。私の記憶と計算が正しかったら今私はレベル26程度。最初のほうのステージのボスなら倒せるレベルだ。
タケノコのようににょきにょき伸びる私に、開発局のおじさま方は大喜びだった。成長ぶりと喜んでいる様子はまるで孫の成長を喜ぶ祖父のようにも見えるが、彼らが私の苦悩の原因だってことを私は忘れていない。自由に洞窟に行く許可をもらえたのは嬉しいが。
そういえばレベルあげの過程でウォルターと仲良くなれたのは意外だった。ウォルターが私の暴走、そして爆死に関わっていることは火を見るより明らかなのだが、毎日接している人物を警戒し続けるのは能天気な私には難しい。今じゃあ普通に友達のような雰囲気だ。
彼はどうやら本来は寡黙で真面目な人なようだが、私が機械だからだろうか、軽い調子で皮肉屋ら冗談やらを投げかけてくる。私もそれに軽く返す。そして私の洞窟の修行につきあい、毎回ずぶぬれになる私をドライしてくれるのは彼だった。風邪を引くわけでもないんだからいいと断ろうとしても、彼は決して折れない。確かにワンピースが体に張り付くのは不快だが、歩いていれば乾くのに。
彼は今も魔法を使いドライヤーのように温風を送ってくれている。暖かくて気持ち良くて寝そうだ。機械だから寝れないんだけど。
「ねぇウォルター」
「なんだ」
「もう明日よね、留学に出発するの」
「そうだな。最終調整はどうだ?」
「もちろんばっちりよ。でもウォルターとももう会えなくなるわね」
少し寂しいな、とウォルターを振り返る。しかし彼はいや、と首を振った。
「そうでもないぞ」
「えっ、どういうこと?」
若干身を乗り出して彼を見上げる。ウォルターは私より身長が10センチほど高い。
「俺も留学には参加するんだよ」
「あら、そうなのね。あなたが一緒なら、心強…い…わ……?」
彼がついてきてくれることに一瞬喜んだが、私はとある可能性に思い至った。かくはずのない冷や汗が背中をつたった気がした。
「なんだその半疑問は」
「ウォルター。あなたどこの学科なの」
「もちろん、技術科だ」
「ぎ、じゅつ、か……!」
まずい。非常にまずいぞ。このままでは私の技術科の生徒とお近づきになって爆発を未然に防ごう作戦が実行しづらい。
「ねぇ、ウォルター、悪いことは言わないわ。留学はやめなたほうがいい。女のカンがそう言ってる」
「は?今更やめるなんて無理だ。大体お前は女じゃないだろ」
「うわー女じゃないとか。傷ついちゃったわ~思春期の女の子のガラスハートが壊れちゃうわ~ひどいよウォルター。もう顔も見たくないからぜひ留学は辞退して」
「たかが機械がうるさい。そんなに嫌か」
「いや、そういうわけじゃあ、うん、ないです、サー、ノー、サー」
不機嫌になる彼に若干取り乱しつつ目を泳がしつつ答えると、ウォルターにバグでもあるのかと心配された。メンテナンスしてやると言われたが首をぶんぶん振る。しいて言うなら自爆プログラムが仕込まれてるのでそれをどうにかしてほしいです。なんて言えるわけもなく。
その日は、帰って悶々としているうちに夜が来て、あっという間に留学に出発する日になってしまった。
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