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東方時空伝  作者: こっぴゃん
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第十五話 礫と玄武

奥へと進む訓達、目の前には五つの扉が有る。

「これはどれが正解でしょうかね...」

「左から二番目かな?」

「え?訓さん分かるんですか?」

「いや、なんとなくそんな気がするだけだよ。」

「まあとにかく行ってみようぜ。」

訓が選んだ扉を潜ると、大きな部屋に出た。

部屋は全体が岩の壁で出来ており、広さは二十メートル四方の質素な物。家具などは何も置かれていない。

「さっきから色々な部屋を通って来たが、ここまで生活の色が見えない部屋は無かったな。」

「それは此処に住む者が、何も必要無いからだ。」

何処からか野太い声が聞こえる。

四人が部屋を見渡すと、魔理沙の後ろに大きな岩が有った。

「い、何時の間に!?」

魔理沙が岩から離れると、岩はズブズブと音をたてながら床へ沈んでいった。

「あ、あの姿は...」

「俺そっくりだ、一体......」

岩は礫の足元に突如現れ、礫を吹っ飛ばしながら全体を出した。

「貴殿、本当に俺そっくりだな。」

岩は横に高速回転すると、其の姿は礫そっくりとなった。

「俺は玄武、四神が一人だ。」

「あれ、礫と瓜二つだな。双子か?」

「これはスクープですね!写真撮らないと!」

写真を撮る文の横では、唖然とする礫と訓が棒立ち。玄武は二人を見てクスクスと笑っている。

「お前、何故俺と姿が同じなんだ?」

「其れは貴殿が俺の分身だからだ。以前、『星の赤子』を探す時に幾つか俺の分身を作った。が、内ひとつが何時まで経っても帰って来なくてな。」

「其れが俺ってことか。」

「さよう。

貴殿が俺の分身、つまり『能力』は同じだ。先に言っておこう。」

そう言うと、玄武は床へ潜って行く。

「今回は礫が行ってくれ。

地面に入られちますと俺達は何も出来ない。それに、あいつはお前の元らしいから、きっちりけじめ付けて来い!」

「訓...分かった。」

礫は尻尾を床へ潜らせ、玄武を探す。しかしいくら探しても玄武は見つからない。

突然上から大きな岩の塊がふたつ落ちてくる。しかしただ落ちるわけでは無い、塊は天井と繋がったまま振り子の様に礫へ振られてくる。塊は礫を挟み砕け、破片は四方八方へ飛ぶ。

「礫さん!」

「大丈夫、あいつはあれくらいじゃやられない。」

破片は一カ所に集まり、礫の原型を戻す。

玄武は天井で身体の半分だけを出し、腕を組んでいる。

「さすがは俺の分身、生命力が違うな。」

「ふん、それはどうも。」

両手の中で岩を作る礫、ロックブラストの準備だ。すると玄武は天井から降りてきて両手を礫に向ける。

「貴殿にこの攻撃が避けられるか?」

「ふん、何か分からないが、避けてやる!」

「ならば...くらえ!散岩!」

玄武の指は数えきれぬ程の岩を礫に飛ばす。

「ふ、そんな技...これで十分!」

礫はロックブラストを打ち込み、散岩を押しのけ玄武へ向かう。玄武はロックブラストを避けるどころか片手で止める。

「何だ?今のは...弱いな。」

「な、何!?」

「今のは、全力で無かったから止められたんじゃ?」

「いや、礫は全力で撃ち込んだ。

あいつが...玄武が強いんだよ。」

「お前には...勝つ。」

礫は玄武に向かって走り出した。左手を大きくしてハンマーの様に振り回す。玄武はもう一度片手で止めようとするも、あまりの重さに耐えきれず両手で止めにいく。

「ぬ!?これは俺の技じゃないな?」

「訓に負けてから、己を高める為に新技を作ったのだ!<ストーンハンマー>だ!」

右手も大きくして玄武を叩きつける礫。玄武は受け止めきれずに押しつぶされてしまった。

両手を元の大きさに戻して玄武を見ようとするも玄武が見当たらない、床へ潜ったのであろう。

礫は辺りを見渡すが玄武は出て来ていない、同じく床へ潜ってもさっきと同じ様に捕まらないだろう。

考えている内に玄武は魚の様に、時折床から出てきては礫に体当たりしている。礫は何度も攻撃を受け、既に立ってるのがやっとだ。

よろけながらも何かを待つ礫。

「ほらほら!どうした?このままではやられてしまうぞ?」

「......」

「ふん、そんなに死にたいか?

ならば地獄に招待してやる!!」

玄武は今度は床からではなく、礫の真上の天井から出てきた。

「死の岩流!」

降りてくる玄武、礫はまだ後ろを向かない。

「礫さん!」

「...どらぁ!!」

礫は尻尾を上に振り上げ、そのまま一回転した。玄武はその攻撃を顔面から喰らい、頭から落ちてのたうちまわる。

「では玄武殿が動けぬ様に...

ストーンハンマー!!」

玄武の身体を粉々にすると紅い岩が出てきた。核である。

「な、何だ?あれは?」

「あれは玄武の核、あれが有る限り玄武は身体が粉々になっても元に戻ることができ、あれを破壊しなければ死ぬことは無い。」

礫は玄武の核を訓に渡す。

「復活できぬ様に、訓殿が持っていてくれ。」

「分かった。」

礫は玄武の残骸を少し見つめると、先に行こうと皆に言う。


「何だと!?玄武もやられたのか!?」

水晶を囲む三人の影、内で一番大きな影が立ち上がる。

「玄武、自分の分身にやられるとかマジ弱すぎぃ。」

「次は朱雀が行くか?」

「うん!丁度暇になってきたしぃ、始末してくるね☆」

何時の間にか、影が一つ消えていた。

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