表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

Allter

どうもお久しぶりです。今回はアルターの話です。アルターの衝撃の事実発覚。


少し心配で、テュークの所まで行ったがあまり心配し過ぎたかもしれない。

蒼い翼を生やし、病院を出た。

急げ。急げ。

『あの子』に会う為に。

 目の前に広がる膨大な青、所々の白いもや。耳に入る、風を切って進む音。風になびく黒色こくしょくのワンピースと同じく黒色こくしょくの長い髪。時折聞こえる真後ろの自分の翼が羽ばたく音。無表情で雲の上や下を行ったり来たりする。


「もうすぐあの子にまたえる…」


 意識もせずに自分の口から漏れたひと言には、私の精一杯の嬉しさを表現していた。頭の中に浮かぶあの子の笑顔、短い茶色かかった柔らかく細い髪をさくらんぼの髪留めでめて一生懸命折り紙やあやとりをする姿。途轍とてつも無く可愛らしい。彼女の事を考えれば考える程私の翼が羽ばたきは素早くなり、みるみる進む速さが速まっていった。

 もうすぐ目的地に着くという頃にゆっくりと下降していき、たどり着く寸前になると急に翼を閉じて垂直降下。そして地面に激突する直前にまた翼を開き、ふわりと足から着地してすぐに翼の力を使って素早く走る。そしてあの子の家が目の前に現れたが、構わずその勢いのままドアに直進した。

 一面ベージュの壁に白い窓枠が数個覗き、ドアはオレンジであしらわれた小さな一軒家。その一室に彼女は居る。

 無音でドアをすり抜け、床すれすれを低空飛行してあの子の部屋へ向かった。階段を上り、すぐ右に曲がる。そして、私の視線の先には真っ青な扉が立ちはだかったがそんな事気にも留めずするりと抜けた。


「帆ノほのかっ!!」


 大きな声でずっと逢いたかった子の名前を呼ぶ。部屋の中のベッドの上の少女は、小さな手をクレヨンで汚しながら一生懸命画用紙に向かっていた。私の声に気付いて、こちらを向いてくれる。私と目を合わせた直後、大きく瞳が見開き顔いっぱいに喜びが表れた。


「あるたー!!」


 私がたまらず彼女に駆け寄ろうとすると、帆ノ華は両手をめいっぱい開いて天使のような笑顔をこっちに向けてくれた。そしてそのまま、私が彼女を抱きしめる。


「逢いたかったよぉ~!」

「わたしも~!!」


 帆ノ華は私の腕の中できゃっきゃと笑っている。

 彼女の髪は、毎日洗える状態でもないというのに可憐な桃の花の香りがした。髪の毛一本一本は少し握ったら溶けてしまいそうなほど柔らかく、つやを帯びている。くしゃくしゃにしないように手つきを気遣いながら、帆ノ華の小さな頭を撫でた。腕の中にあるほのかな温かさを心の芯まで滲ませればするほど私の視界がぼやけていった。それに気付いた帆ノ華は心配そうにこちらに目を向けたが、「大丈夫だよ」と手で涙をぬぐって笑ってみせた。すると帆ノ華は私の頬に手を添えて自身の顔を近づけ、二人の額がこつんと当たると帆ノ華は目を合わせながら声を荒げた。


「かなしいことがあったらだれかにゼッタイいわなきゃだめなの!!」

「帆ノ華…」


 別に悲しい事なんかない、只々(ただただ)帆ノ華に会えた事が嬉しかっただけ。でも、彼女の本気が詰まった言葉は何故が私の胸に突き刺さった。息が詰まりかけて深呼吸をした後、また自然な微笑みを浮かべて帆ノ華に向き直った。


「ううん、本当に大丈夫だから。心配してくれてありがとう。私、悲しい事があったらちゃんと帆ノ華に言う。だから帆ノ華も悲しい事があったら私に言ってね?」

「うん!!ゼッタイいうっ!!」


 さっきと同じような天使の微笑みを私に向けた。

 それから、彼女が本を読み聞かせて欲しいというので私もベッドの中にお邪魔して帆ノ華を膝上に乗せると、満足気な顔を見せて「これよんでっ!」と差し出された絵本を読んでいた。


「あれっ」


 気付くと帆ノ華は私の腕の中で寝息を立てていた。口を少し開けて気持ちよさそうに眠る顔は、見たくても見れなかった。彼女が枕代わりに使っているのは私の右腕だったからだ。

 うう…辛い…でも、帆ノ華が気持ちよさそうに寝てるのに邪魔できるわけがないっ!!

 きゅっと口をしばり、耐えた。もっとマシな姿勢は出来ないかと頭脳を働かせたものの何も思い浮かばず、結局そのままひたすらに耐えた。


「うゅぅ…」

「起きた?」


 十何分経ったかの後、腕の中の天使は私の震えていた右腕から頭を退かせた。片目をこすりながら後ろの私を見て、にこっと笑ったかと思って顔を発火させていると眠気ほとんどの喉を震わせて言った。


「いっしょにねよぉ…?」

「えっ!!」

(よろこんでええええええええええええええええええええええええ!!!)


 ゆっくりと自分も掛布団を被り、横たわる。視線を上げると、天使の寝顔。


(可愛すぎるぅぅぅっ)


 抱きしめたい。考えること全てがその言葉で埋め尽くされた。この幸せすぎる時間がいつまでも続けばいいと、そう思った。だが、私の興奮はある一人の冷めた一言によって掻き消された。


「何をしているのです?」

「!!!?」


 びくっと身体を跳ねらせ、鼓動も大きく鳴った。そして咄嗟とつさに平常心を装いながら声のした方を見る。


「モ、モラエル…人の家に勝手に入ってくるなんて人間の世界では犯罪者よ。まあ前から犯罪者だけどね」

「真面目な事は真面目な態度をして言ってくれないですか、リニアス」


 正論を言われ、仕方がないのでもそもそと温もりの揺り籠(布団の中)から這い出る。

 モラエルは(何か貰えそうな名前な)天国の世界で働く大天使。何故か知らないけど私の場所を把握しているストーカーのくせに仕事がバリバリ出来る訳分からない奴。


「で?そのストーカー兼大天使サマが私に何か?」

「誤解があったから訂正します。僕は『大天使兼ストーカー』なんですよ」

「素直に認めてんじゃないわよ」


 モラエルは「まあ、そんなことは頭の片隅に入れといて」と言って腕を組んだ。私は華麗にスルーする。


「天界委員会から呼び出しを食らっていました、何かしたのですか?」

「呼び出し?何かしたかしら…」


 天界委員会とは、天国と地獄の頂点、要は神様と閻魔えんま様と天界の幹部たち(モラエルも含む)で結成された、あの世の代表委員会的な組織だ。主に何もしない。そんな人たちに呼び出されるのはほぼ初めてだな。少し考えて思い当った、つい「あっ」と声が出た。


「あれかな…」

「何が思い当ったかは知りませんが、早く行きましょう。そのために此処に来たんですから」

「は!?今から!!?」


 モラエルははぁ…とため息をく。


「当たり前です、生憎あいにく僕も暇じゃないんですよ。さあ早く」

「えー…」


 チラリと帆ノ華の方を見る。相変わらず天使の寝顔ですよすよ寝ている。全くここから離れたくない、さっき久しぶりに会ったのにまた離れるのは嫌だ。だからといって偉い人たちに従わない訳にもいかない。しばらく考え込んでいると、モラエルに無線が入ったようで急に黙りこんだ。そして、会話が終わったのか私に向き直って言った。


「遅いとお怒りです。リニアスのおかげで自動転送される羽目になってしまうとは」

「えっそそそそんなっ!!嫌よ!いやっ…」


 その瞬間に駆け寄ろうとした帆ノ華が、私の瞳の中で白く消えていく。それと同時に一瞬で眼前が滲む。まだ、お別れも言ってないのに。最後に頬や頭を撫でたかった。最後にせめて声を聴きたかった。後悔が胸を縛りつける。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「帆ノ華あああっ!!!」


 現れた大広間に私の叫び声が響く。

 私を囲んだ円形の大きな机に肘をついている閻魔様ときょとんとした神様。その二人の間には壁の色が白と黒に仕切られて、閻魔様の隣には私も良くお世話になった閻魔様のお付の閻喝えんかつ(元名:ダイタリュー)さんが椅子の背もたれにもたれかかっている。神様の隣にはモラエルが「よいしょっと」と座った。

 はっとして姿勢を正して涙を拭う。一応、帆ノ華と閻魔様の前以外ではそういうのを隠している。


「ほのか…とは?」

「えっ!?」


 急に聞かれ、慌てる。聞いたのは神様だ、閻魔様は隣で呆れたように右掌を顔に当てている。


「彼女のターゲットだよ、フォルティアーラ」

「おお、そうだったのか」

「それと、これを聞くために呼んだんじゃないだろ」


 「ええと、ええと、」を連呼して冷や汗を垂らしまくっている私を見て、閻魔様が救いを入れて下さった。ほっと息を吐いたのもつかの間、神様が「そうだった」とわっはっはっと私の背丈ほどの掌を頭に当てた。フォルティアーラと言う呼び名は閻魔様が勝手に付けた神様のあだ名だ。


「アルター君…だったかな?」

「はい、アルター・リニアスです」

「最近、死神と天使の名簿を眺めていたら知らない名前の子が出てきたんだが…」

「あ…」

「『テューク・サスティー』とは、どなたなのかな?」

「えー…」


 現在の天界では、天使・死神のスカウトは行っていない。大体はオーディションだ。以前まではスカウトも行っていたが、生前に強い野望を持ったままこちら側に来てしまった人だけが天使や死神になれる、だが、それが見抜ける天人が最近減少してきたのでスカウトは天界委員会で《一時禁止》と決まった。

 きっと神様は私が見抜ける天人と知っときながら聞いている、私が勝手に死神にスカウトしたことを分かっている。深呼吸をして頭の中で一つ一つ言わなければいけない事を整理しながら口を開いた。


「私は生前野望認識が高い今となってはごく少数の人種です」

「うん、知っている」

「そして私は、テュークのただならぬ野望を感じ取り勝手ながらスカウトしてしまいました」

「……」

「誠に申し訳ありませんでした」


 目を瞑り、頭を下げる。天界委員会全員の視線が私の頭に注がれているのは頭をあげなくても分かった。そして、ずっと黙って聞いていた閻喝さんが口を開いた。


「どうして、あなたのオーディションの時に生前野望認識が高い事を言わなかったの?それだけで結構高い位に立てたと思うのだけど」


 少し躊躇ためらったものの、決意する。


「私は生前の母親に、『周りの人々と違うところを持っていることは、大きな恥だ』と頭に叩き込まれました。だから、死んだあとでも母親の教えがそう簡単に消えずに言えなかったんです。恥だと思って」

「ふぅん…」

「償いは受けます。でも、テュークだけは死神の仕事を与えたままにしてあげてください」


 神様の片眉がぴくっと動いた。


「どうしてかな?」

「彼女の野望は、今まで私が見てきた中で一番大きなものなんです。あの膨大さは、確実に死神で役立つ。そう確信できるのです、期待してあげてください」

「そうか……まぁ顔を上げてくれないか、どうもその状態だと話しづらいんだよ。声も聞こえづらいし」

「そうですか…失礼します」


 ゆっくりと顔を上げると、閻魔様が待ってましたと言わんばかりに、目つきが悪いと評判の瞳をかっぴらいて机に乗り出した。


「いいか?お前が悪いと思っているところと、俺らが話し合わなきゃならない議題は違うぞ。しかも、お前に償いを負って貰おうなんて思ってない。むしろ…」

「褒め称えたいぐらいなんだからっ!!」


 閻魔様のお話の途中で、さっきまで顔を硬くしていた閻喝さんが笑顔で割り込んできた。一気に自分の想いを論破され続け、頭がハテナで埋め尽くされる。


「はい?」

「いい?テュークちゃんが生前野望が高いのは皆解ったわよ、それほどオーラが並外れていてね。でも、貴女の反応の方が早かった。私達が気付いた頃にはあなたはもうテュークちゃんをテュークちゃんにしてた。驚いたわよ。まあ、それで私はあなたが生識(生前野望認識の略)だってわかったんだけど」

「は、はぁ…」

「それで…」

「まあそれくらいにしておこうか、閻喝さん」


 勢いが止まらない閻喝さんに神様が止めに入った。私に向き直る。


「それでね、今回君に聞きたいのは【どうして死ぬ間際で生前野望が並外れて高い事が分かったのか】と言うことなんだ」

「あ、そのことですか」

「うん、聞かせてもらえるかな?」

「いいですよ。生前のテュークに憑いていた死神からの情報から把握しました」


 私の返答に、モラエルがやっと口を開いた。


「割り込みお許しください」

「ああ、いいよ」

「アルター、ひとb」

「勝手に呼び捨てないで」

「すみません」


 一瞬で引いた言葉を指摘する。


「リニアス、人々の生前に憑いていた死神の情報は姓名・性別・死因の三つだけじゃないですか。それで分かるのですか?」

「分かる。私ならね」

「どうやって?」

「生前野望認識を察知するとき、勿論その人の姿を見たら分かるんだけどそれ以外の方法でも分かるのよ。『姓名と性別』この二つだけでも、一けたまでは分からないけどそれ以上ははっきりと分かるわ。それでテュークに憑いていたコラートから情報を貰って。それでさっきの説明の通りよ」


 微妙に目を合わせずに私の話を聞いていたモラエルは話を聞き終わると、「なるほど…」と右手をあごに当てて考える姿勢を取った。


「ご納得されましたか、神様」

「あー、ものすごくなんとなくね」

「やっぱりお前もか」


 神様と閻魔様が頷き合った。うむむ…と二人で悩んだ末に、「まぁいいや」と閻魔様が口を開いた。


「俺らが気になってたことがお前のおかげでよく解った(気がする)。ありがとな。もう帰っていいだろ」

「うん、そうだね。あっち(人間界)に帰っていいよ。ありがとね、助かったよ」


 そう言われ、慌てて両手を左右に振る。


「いえいえ!こちらこそ、御二方に疑問付かれるようなことしてしまってすいませんでした」


 「では」そう言って、自分で帆ノ華の部屋へとテレポートした。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 目を開けたそこには、顔を涙でぐしゃぐしゃにした帆ノ華が布団から覗いていた。私と目があった途端、ピタリと涙を流すのをやめた。


「あるたー…?」

「帆ノ華…!!!」


 その顔を見てすぐさま目の前の帆ノ華を抱きかかえる。そのまま、感極まってぎゅっと力を入れた。すると腕の中の帆ノ華は大きな声で泣き出した。顔を私の胸に埋めて、泣きじゃくっている。そのまま日本語かわからないような言葉を私に向けた。


「もうっ、かってにどっかいかない!!?」

「うん、行かない」

「ほんとうにっ!?」

「本当だよ、…ごめんね」


 私の言葉を聴いた後、また大きな声で泣き叫ぶ。「ばか」と「つぎやったらきらいになるから」だけは聞き取れた。その言葉一つ一つが私の心に突き刺さって、その度に腕に力を込めて強く帆ノ華を抱きしめる。もう離さない、何より帆ノ華の事を考えて生きていこう。彼女の事をちゃんと考えて行動しよう。私のすべてを彼女のために使おう。私の中で何かが固まっていった。帆ノ華と一緒に涙を流しながら決めた。


「ごめんね、本当にごめん。もう離れない。もう離さない。これからずっと、帆ノ華を守る。絶対に」

「うんっ…そうして…っずっといっしょがいいよ」

「そうだね」


 ふっと笑って、帆ノ華の頭を撫でた。

いやー、疲れた。割には楽しかった。あー、四書く気力が無いお。

まさかのアルターさんロリコン(ホノコンか)。

何はともあれ、難しいですね。感動の再会とか。アルターにとって彼女(帆ノ華)は何なんでしょうか、妹?親友?……恋人?そんなわけないか。

あ、やばい腹痛い(関係無ぇ…!

帆ノ華の喋った奴は全く漢字を使っていないので、区別つきにくかったら言って下さいね。

あと、閻喝さんは完璧に私の空想の方なので、何か調べたって訳じゃないです。ただ単に、「こんなんいたらいいな~」っていう軽いノリで作りました。


読んでいただきありがとうございました<(₋ ₋)>次回もボチボチ進めてゆっくり上げて行こうと思います。


次回は新キャラ登場します。ご期待下されノシ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ