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Assassin  作者: Aoi
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Prologue

 木々の生い茂る薄暗い森の中、顔を隠す迷彩色のフードマントを身に付けたソルアは木の枝上を音を立てぬようにしながら飛び移ることで移動をしていた。全身で体が見えている所はほとんどなく、その風貌からは性別すら確認できない。

 

地上を進むターゲットに接近するには、森の中では地上を行くよりも樹上を行った方が圧倒的に隠密効果は違う。現に追跡を始めてから二組ほどの集団の上を通り過ぎたが気付かれることは無かった。樹上を移動できるほどの身体能力値と消音のスキルをこれほどの高レベルまで上げている者などそうそういないため、彼らが注意を払っていなかったことも気づかれなかった理由なのだが。樹上移動など普通のだったらプレイヤーだったら音を立ててしまいバレるのが落ちである。

 

任務は今のところ順調に進んでいる。ターゲットが集団で行動している点を除けば不安要素はないし、ターゲット自体も強いプレイヤーではない。比較的簡単な部類に入る。しかし、いくら簡単そうに見えるからといって油断をすることはありえない。


 「いかなる状況でも油断をしないこと。」これがソリアの所属するギルドの基本かつ最大の方針だからだ。

 

 黙々と移動を続けている内に、しばらくして前方の木々の合間に10人ほどのフードマントの集団が立ち止り何やら話し込んでいるのが見えてきた。ソルアはすぐに集団全体に視線を走らせ、ターゲットの所属するパーティだと確認する。

 気づかれない距離と角度に位置する木の枝まで移り、そっと木の幹から顔を出し、じっと息を潜めながら会話に耳を傾けターゲットの情報を探る。さすがに全員が同じ格好をしているので視覚だけではターゲットを確認できない。他の要素からの情報を集め確認する必要がある。


 集団の話し声は、現実では到底聞き取れないような小さな声での会話で行われている。しかし、鍛えた集音スキルにより彼らの会話は丸聞こえである。

 集音スキルというものはレベルを上げるのがとても難しく持っているものが少ないというのもあるが、持っている者もスキルを保有していることを隠すので必然的にプレイヤー全体の認知度は高くない。

 アサシンの基本スキルは消音といい、集音といい通常のプレイヤーがあまり上げないスキルが多い。恐らく彼らも集音スキルへの警戒心はほとんどないだろう。しかし、それでも声を下げて会話をしているのは一応程度の保険のつもりか、もしくは人間の心理というものだろう。


 話を聞いていると、どうやら彼らは行先のことで話し込んでいるようだ。彼らの先には分かれ道があり、それぞれ別の街に続いている。街ごとに物価は異なり、様々な要素でその物価は変動するため、どちらの街でアイテムを売れば利益が大きくなるかで話し合っているようだ。

 

 そのまましばらく会話に耳を傾けていたが、延々と行先について話すのみで特にこれといって貴重な情報は話さない。もしかしたらターゲットの情報以外にも貴重な情報が得られるかもしれないとわずかながらに期待して聞いていたが、そうそう上手い話が転がっているわけはない。しかし、だからといって落ち込んでいる暇はない。今必要な情報は手に入ったのだから次の行動にすぐに移らなくてはならない。

 

 会話の中でターゲットの名前が出た時の彼らの視線の動き、フードから見え隠れするわずかな顔の造形からターゲットはすでに判別し終えている。

 ターゲットの木の真上まですばやく移動すると息を抑え、腰からダガーを抜く。精神を集中させ全身から力を抜き、そしてふっと軽く枝を離れ、一気に音が立たぬように落ちていく。

 滞空している間の短い時間で体勢を整え、ターゲットと重なる瞬間、右手のダガーを脳天へと突き刺す。落下による力をその威力にプラスされたダガーの一撃はクリティカルヒットと不意打ち判定も合わさり、たやすくターゲットのHPを削りきり、ターゲットは赤色のポリゴンとなって消え去った。

 ターゲットが死亡したことを確認すると直ぐに周りのプレイヤーの状況を確認する。皆一様に何が起きたのか、という泡を食ったような表情をしている。仲間が一人やられたというのにまだ状況を飲み込めていないようだ。ソルアはこの隙にすばやく離脱を始めた。

  

 ソルアが走り出し、近くにいたプレイヤーを突き飛ばした段階でようやく集団の一人がソルアに向かい攻撃を仕掛けてきた。手に持った長槍を突き出し貫こうとするが、それをソルアは身を低くすることで躱す。さらに長槍の柄を握り、捻りながらさっと引き抜くことでプレイヤーの手から奪い取る。そのまま止まらず走り続け、近くの木の傍まで行くと長槍の刃を地面に刺し、石突きを踏み台とすることで一気に樹上に飛び移る。あまりの一連の動作の素早さに敵のプレイヤー達は阻むことすら出来なかった。そしてあっという間にソルアの姿は木々の枝の影へと消え去り、後を追いかけることはもう不可能であった。

 

これが、ソルアの『アサシン』としての最初の任務であった。


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