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第2話 夢の世界とステータス


朝の光が木々の隙間から差し込む。


川のせせらぎ、小鳥の鳴き声、湿った土の匂い――全てが“リアルすぎる”。


 


結城 慶信は、森の中で目を覚ました。この景色、昨日の夢と同じに見える。


 


まずは、現状の確認と、この世界での生存だ。


 


異世界日記を手に、水を探しに行く。


しばらく歩いて気がついた。

やっぱり昨日の夢と同じだ。異世界日記と照らし合わせても、全く同じ。それなら罠の場所も、拠点にできそうな場所も分かる。


 


数ページをめくる。前回書いた獣道の場所、蜂の巣の注意点、魔獣の出現ポイント。

それらが、ここに“実在”しているように感じる。


 


半信半疑で、森を歩いてみた。


そして、日記に書いた通りの場所に、動物の足跡や蜂の羽音があった。

思わず息をのむ。


 


(マジか……)


 


この夢は、前回の夢、もしくは今までの夢すべてが繋がっている。

そう確信し始めていた。


 


* * *


 


(とりあえず、探索だ)


 


これまでの夢の記録を頼りに、慶信はまず川を見つけて水を確保し、動物の通り道に罠を仕掛ける。


続いて、木の根元に落ちていた大きな葉や枝を集め、簡易シェルターを作る。


薪も拾い集め、火打ち石の代わりに石同士を叩いて火花を飛ばす。

なんとか火を起こし、焚き火の準備を整えた。


 


夢のはずなのに、腹は減るし、喉も渇く。

痛みも寒さもちゃんと感じる。


 


木陰に座り込み、少し休もうとしたその時だった。


突然、視界の端に“何か”が浮かび上がった。


 


――ピコン


 


(え……?)


 


目の前に、まるでゲームのような“ステータス画面”が表示されている。


 


「な、なんだこれ……?」


 


画面には自分の名前と年齢、能力やレベル、筋力や魔力のような項目が並んでいる。


 



名前:結城ゆうき 慶信よしのぶ

年齢:24歳

能力:―(空欄)

レベル:1

筋力:14

俊敏:15

魔力:10

知力:18

幸運:20

所持金:0G


 


「……ゲームみたいだな、いや、夢っぽいっていうか」


 


ステータスなんて、これまでの夢では一度も出てこなかった。

ましてや「魔力」という文字を見たのは初めてだった。


 


(魔力って……まさか、魔法が使える世界なのか?)


 


胸が高鳴る。RPG好きとしてはたまらない展開。


「能力:空欄」――という表示に、この先チート能力が目覚めるんじゃないかとワクワクしてきた。


 


そして何より――


 


(レベル、1……)


 


男なら誰もがワクワクする言葉。

この数字を上げていけば、何かが変わるのだろうか。


 


「上げるしかないだろ!」


 


* * *


 


太陽が傾き始めた頃、慶信は今日の成果をまとめながら、焚き火の火を眺めていた。


水は確保。罠は仕掛け済み。簡易のシェルターもある。


 


(……今回は当たりの夢かもな)


そう呟いて空を見上げた時、気づいてしまった。


 


(……おかしい。もう何時間経ってる?)


 


これまでの夢は、長くても数時間で終わっていた。

なのに、今回は朝から晩まで活動している。


 


(こんなに長く夢を見たこと、ない)


 


――まさか、寝坊か? 仕事は間に合うのか?

それとも……


 


ぞくりと背筋を走る感覚。

だが、慶信はすぐに首を振った。


 


「いや、考えても仕方ない。ここで寝たらどうせ目が覚めるだろ」


 


そう自分に言い聞かせ、寝ることにした。


 


「起きたらまた仕事か……」


 


* * *


 


翌朝。


目が覚めると、そこはまだ夢の中だった。


 


「おかしい。この夢が始まって丸一日が経ってる。今までの夢なら、長くても夕方あたりまでが限界だった」


 


「俺は、この世界から出られなくなったのか?」


 


慶信は不安でいっぱいになるが、父の「今を楽しめ」という言葉を思い出す。


 


「むしろ好都合だ。仕事にも行かなくていい。こんな夢みたいな世界(夢なんだけど)にもっと居られるなんて幸せじゃないか」


 


慶信は、持ち前のポジティブさでどうにかメンタルを整えた。


 


「どうせ出られないなら、ここで生きてくしかないんだ。まずは生活基盤を整えるぞ」


 


シェルターを抜け出して川で顔を洗い、罠を確認すると――見事にイノシシがかかっていた。


 


(よし、朝飯ゲット)


 


解体して火で焼き、朝食を済ませた慶信は、ふと気になってステータス画面を再度呼び出してみた。


 


――ピコン


 



名前:結城 慶信

レベル:2



 


「え? 上がってる……?」


 


心当たりはない。戦ったわけでも、筋トレしたわけでもない。


 


「レベルが上がれば、ステータスも強化されるんじゃないのか?」


 


確認してみたが、筋力も俊敏も数値は変わらない。


 


「……え? 変わってない……?」


 


この“レベル”は一体何なのか。

ただのゲーム的な数字なのか、それとも、まったく違う成長の証なのか。


 


(ステータスじゃない何か……心? 感情? 気づきとか?)


 


モヤモヤしたまま、慶信は日記を開いた。

メモを、いつも通りに書き記す。



ステータス表示


名前:結城ゆうき 慶信よしのぶ

年齢:24歳

能力:―(空欄)

レベル:2

筋力:14

俊敏:15

魔力:10

知力:18

幸運:20

所持金:0G



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