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B男の場合

B男は生後間もなく入所した子だった。

母親が中学生だった。

しかも、強姦による妊娠だったのである。

母親が娘の身体の変化に気付いた時は、中絶が困難になっていた。

このまま妊娠を継続して産み、子どもを施設に預けるしか道は無かった。

産まれてくる赤ちゃんの母親自身が被害者だからだ。

「強姦した男はそのまま変わらぬ暮らしをしていると思うと、はらわたが煮えくり返る。」

そう中学生の父親は言ったそうだ。

母親は「どうして気付かなかったのか……。」と自分を責め苛んでいた。

悪いのは、強姦した男で、中学生の子も、お母さんも悪くない。


中学生の女の子は、ひっそりと遠縁宅から病院に行き出産したそうだ。

出産までは遠縁宅の離れで暮らしたそうだ。

夏休み期間中なら気付かれなかったのだろうが、そうではなかった。

2学期が始まってから出席できなくなったのだ。

両親は苦しんだ。

どうすれば娘を守れるか……と……。

結局、学校の校長先生にだけ話したということだった。

その時に、転校を打診された。

転校せざるを得なかった中学生が、出産後どのように歩んだのかは分からない。


この事実を私たちはB男には告げていない。

今なら、今の児相なら伝えると選択するのだろうか?

あの頃の私達には伝える選択は見えなかった。

B男が苦しみ悲しむ姿を見たくなかったのかもしれない。

B男は素直に育ってくれた。

知らなかったから素直に育ったのか、それとも知っても尚いい子に育ったのかは分からない。

知らないままだったから結婚出来たのかもしれない。

知っていても毛婚で来たのかもしれない。

それは分からない。

常に、「何が一番いいのか」を探しながらやって来た日々だったが、今もあの選択が正しかったと言い切れない私である。


「良かったと思おうよ。」

「そう……。」

「B男は今も笑顔を見せてくれてるからね。」

「そうね。」

「明日来てくれるって聞くと、君はいつも不安になるんだね。」

「だって……。」

「明日、またB男の笑顔を見たら……きっとホッとするよ。」

「そうね。」


B男の笑顔を見たら、私はホッとするのだ。

癒してくれる可愛い笑顔だ。

幾つになってもB男の笑顔は可愛い。

この笑顔を……お母さんは見る気持ちにはなれないだろう。

もしかしたら、父親似かもしれないのだから……。

性被害は被害女性一人の人生だけでなく、赤子の命、人生までも滅茶苦茶にしてしまうかもしれない卑劣な行為だと思う。

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