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6話 大地の国の異変

 氷雪の国を抜けて、アドリビトゥム随一の穀倉地帯『大地の国』へ辿り着いた。

 やたらだだっ広くて、のんびりとした時間が流れていて、大地の恵みが豊富——。幼い頃、師匠に聞いた通りだ。


「ついに来ました~✨大地の国!!新鮮な野菜とか果物とか買わないと……」


 早くも頭の中がショッピングモードなリゼル。とりあえず食材の買い出しは任せて良さそうだ。


「そうだな……まだこれといって、勇者として為すべき仕事はないし大地の国ではゆっくりしてもいいかもな」

路銀も充分にあるし——、


「美味しい地酒……地ビール……」


 ——ただしアイン、テメーは駄目だ。少しは自重しろ。


「いい加減にしろや飲んだくれ勇者!!」


 俺はアインの頭を大鎌の柄でぶん殴る。こんな状態のアインが白夜の国に帰ったら白夜王は頭を抱えるだろうな……ある意味では白夜王、ザマァwwwww(ゲス顔)


「もしや、そちらの御一行は勇者様方でいらっしゃいますか?」


 ——ふと、街中を巡回している兵士の一人が声をかけてきた。


「はい、こちらの黒髪黒眼の大鎌を持った目つきの悪い方がクロードで、もう一人の騎士然とした飲んだくれがアイン。この2人が勇者でボクとリゼルは旅の同行者です」


 ミユが毒舌を発揮しながら兵士の問いに応じる。

 うるせェな、笑ってるような顔の犬(サモエド)がいるんだから俺の目つき悪いのも生まれつきだボケ——。


「やはりそうでしたか………大地王がお待ちです。王都までご同行願います」


 かくして、馬車に乗り込んでだだっ広い大地の国の中枢部、王都グランディアに向かう事となった。

 勇者ってだけでここまで歓迎されるとは白夜の国とは大違いだな……

 もしかすると、早急に勇者の力を借りたい程の困り事があるのかもしれない。

 それだけならまだいいが、どんな無理難題をふっかけられてもおかしくない。

 ミユはともかく、アインとリゼルはこういう他人を疑う事に慣れてない。

こういう時こそ俺の適材適所って訳だ。貧乏くじこの上ないがな——。


「クロードは性格がひねくれてるからね……」


 ミユがやや低音気味のウィスパーボイスで俺にだけ聞こえるように呟く。こいつ…………俺の心の中を見透かしやがった…………



▷▷▷ 



 と、めちゃくちゃ警戒してた俺だったが王都グランディアのアルベリヒ城にて、普通に盛大な食事会が開かれて拍子抜けするのであった。

 肉も野菜もデザートの果物も、他の国とは比べ物にならないくらい上質で、まさにこの世の極楽。至福の時間だった。それはそれとして——、


「それで?回りくどいのは苦手なのではっきり言います。わざわざこうした催しを開くからには、何か勇者の力を借りたい程の頼み事でも?こういう催しだってそれなりに金がかかるでしょう?」


——俺は、城に来る前から思っていた事を単刀直入に尋ねた。


「ホッホッホ、クロード殿は鋭い……実はですな……近頃、大地母神ガイア様の眷属『豊穣の女神マーテル様』の神殿から瘴気が発生して、大地の活力が弱っていましてな……農作物の収穫量にも影響を与えておるのじゃよ……」


やけに恰幅の良い大地王は神妙な表情で語り始めた。


「このまま収穫量が減り続ければ大地の国だけの問題では済まない。既に冒険者ギルドの有志と我が国の騎士団からなる先遣隊を送ったが音沙汰無しじゃ……」


「神殿の調査と、可能なら先遣隊の救助ですね?お任せください!!!」


 アインが即答する。


「待てィ!!!!」


 アインをぶん殴って黙らせた。


「な……、何をするだァーーーー!!許さん!!!」


 某奇妙な冒険譚の伝説的誤植ネタでキレられた。

 (アドリビトゥムには『叙序の奇妙な冒険譚』という娯楽小説がある。主人公、叙序が高度な頭脳戦を繰り広げる冒険活劇)


「許さんのはこっちのセリフじゃボケ!!!後先考えずに引き受けてただ働きする事になったらどうすんだよ!!!」


「すみません、この2人は無視して大丈夫です。それでは報酬の話ですが………」


 後ろで言い争う俺とアインをスルーしてミユが淡々と交渉を進める。


「ミユさん………(したた)かですね………」


 リゼルが感心半分、驚き半分の様子で呟いていた。

結果、依頼成功の報酬で2000万8500リーヴェ貰える事になった。



用語解説


リーヴェ


アドリビトゥムの貨幣単位。1リーヴェで日本円の2円程度。

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― 新着の感想 ―
[一言] >ただしアイン、テメーは駄目だ。少しは自重しろ そんな時代だぞぇ アイン達は止められない >な……、何をするだァーーーー!!許さん!!! 伝説だよねぇホント。 そんでミユさん……君も君で…
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