23話 玉座の間にて
クロツキ女王と俺達は、アリアのユニーク魔法、『針と糸とは使いよう』で出会う敵兵を次々に行動不能にして最速最短ルートで玉座の間へと向かった。
そしてたどり着いた玉座の間には、魔王ともう一人。
夜のような黒髪で真紅の眼を持つ女性がいた。
「ニュクス……いや、違う……!!ニュクスがこんなところにいるはずがない…………貴様、邪神だな……??」
クロツキ女王は、ニュクスの偽物を睨みつけながらそう呟く。
『ふむ………やはりバレてしまったか。だが、我はまだ貴様らと戦う準備ができていない。魔王、後は任せた………』
『ニュクス様の仰せの通りに…………』
邪神は姿を消し、俺達の前に魔王が立ち塞がった。
『貴様らをニュクス様への供物としてやろう………!!!』
魔王は指先に魔力を集め、巨大な火炎球を創り出す。
「断ち切る者………!!」
俺は先手を打ち、火炎球を制御する術式を斬った。
「助かったよクロード!!もしあんな大魔法を使われていたら、僕の結界でも防げていたかわからない………」
「いや、あれはただの追尾式攻撃魔法だ………」
クロツキ女王は残酷な事実を、どこまでも冷静に突きつける。
「待てよ………なら俺達が勝てる可能性なんて………最初から………」
「その為に私がいる。『常夜裂き咲く彼岸花、極夜の中を緋に染めて、此岸を遍く塗り潰す………!!固有結界、禍津彼岸花殺生石』」
クロツキ女王の固有結界が玉座の間を覆い尽くし、俺達に力を与えてくれた。
すげェ………力がみなぎってくる。これなら、もしかしたら勝てるかもしれねェ…………!!!
「今のお前らならば天界の天使にすら勝てる。魔王の事は任せた」
『小癪な真似をォォォォォォォ!!!』
魔王が再び追尾式攻撃魔法を展開する。またたく間にホールの天井を覆い尽くす無数の巨大な火炎球。
だが、今更その程度では怯まない。
「行くぞ…………!!!」
「はい!!術式並列展開、魔力供給オールクリア。追尾式攻撃魔法1番から600番まで装填完了、照準補正良し。1番から600番まで順次発射せよ!!!」
リゼルが魔王の追尾式攻撃魔法マジックミサイルを迎撃して、俺とアイン、ミユが同時に斬りかかる。
「次はボクの番かな♪上っ面の紙の月………」
『クッ………奴らは、どこだ!?』
ミユが使用した魔法、『上っ面の紙の月』は認識阻害の魔法。
気配や魔力反応の探知、視覚聴覚による認識を阻害して敵に『漠然と気配は感じるが姿を認識できない』状態を付与する。
『ならばまとめて消し飛ばすのみ!!!』
魔王は腰の剣を抜き、膨大な魔力を込めて薙ぎ払う。しかしそれも予想済み。
「光波防盾………!!!」
アインの結界により、魔王の範囲攻撃を無効化して、俺とミユが魔王に肉薄する。
そのままアインは、結界により魔王を押し留めた。
『邪魔だ……!!』
結界に阻まれて前に進む事ができない魔王は、0距離で魔法を連発して悪あがきするがそれすらも結界を破るには至らず、アインにより結界ごと壁際にジリジリと押し込まれていく。
「ミユ、頼んだ!!!」
「OK〜。………と、いう訳で…………」
特に理由のない暴力が魔王を襲う。
ミユは壁を砕きながらのローリングソバットで、魔王を床に沈めた後に、魔王から邪神の呪いを吸収した。
……………今の、ローリングソバット完全にいらなかったよな………
そういえば、クロツキ女王どこ行った?
▷▷▷
リタside
身体がバラバラになりそうな程の激痛。意識を保つだけでも辛い。
もはや権能の制御を維持する事すら出来ない。
「…、……………ッ~~………そろそろ限界かな〜……」
これは本当にマズい………意識が遠のいてきた。今回ばかりは、もう二度とクロツキに会えないかもしれない…………
私は意識を失い、落ちていく。その刹那、何者かに抱き止められた。
「恋人の危機に私、参上………だ♪よく頑張った、リタ」
クロツキ…………来てくれたんだね…………やっぱりクロツキはいつでも私を愛してくれる………
一見素っ気ないようでも冷たいように見えても私は知ってるよ、クロツキは私を大切に思っているって。
信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてた信じてただから今回も来てくれると思ってた。
正直ここで死んで、クロツキの心に一生残る傷になるのも悪くなかったけどやっぱりクロツキは私を愛してくれるし私もクロツキを愛してる。
ああ、このまま時が止まればいいのにそうすればクロツキと私の愛は永遠となるのにもうなんだっていいクロツキとまた一緒にいられるなら。
私はクロツキの腕の中で緩やかに意識を失った。
リタside 終
用語解説
上っ面の紙の月
認識阻害魔法。
視覚、聴覚、魔力反応、気配の全てをぼやかして、『漠然と気配はするけど認識できない』状態を敵に付与する暗殺などに特化した汎用魔法。欠点は持続時間の短さ。
固有結界 禍津彼岸花殺生石
クロツキの得意とする魔法の一つ。範囲内の自身と味方全体に時限式でイカれた倍率のバフを付与する。
この固有結界の中ではただの人間でさえ天界の天使に対抗できるほど強化される。
ちなみに、もしも常夜の国と戦争する事になればクロツキは自軍全体にこの魔法でバフを付与する為、絶対に常夜の国を敵にまわしてはいけない。




