28.5話 血管付近弾丸摘出手術
苦手な人もいるかもしれないので…これからも.5話が入ります
──手術前、準備室にて。
「もしかして、緊張してる?」
春希が優しく問いかける。
「いえ、自分で思ったよりリラックスしてます」蓮はゆっくりと息を吐いた。
「すごいね。じゃあ、麻酔いれてくよ。力抜いて……」
静希の声を聞きながら、蓮の意識はやがて遠のいていった。
──第3オペ室。
「患者の状態は?」 静希が手袋をはめながら問う。
「心拍数は変化なし、血圧は……下降気味だ」律がモニターを確認しながら耐えた。
「わかりました。これより血管付近弾丸摘出術を行います。メス」
翔也がメスを静希の手に眺めていた。無影灯の冷たい光が、手術台の上の蓮を眺めていた。
── 手術開始。
「皮膚切開」静希のメスがスムーズに傷口を広げる。
「出血が多い……春希、ガーゼ!」翔也の声が鋭く響く。
春希がガーゼを渡し、翔也が止める血を試みる。 しかし、弾丸が動脈のすぐ近くにあり、わずかなミスで重大な傷になりかねない。
「心臓の真上だ。慎重にやるぞ」静希が冷静に指示を出す。
「弾丸の位置、確認した」 静希が低く近く呟いた。
「くそ……下手に触れば血が止まらなくなるぞ……」翔也が眉をひそめる。
静希はわずかに息を呑んだが、目の前の患者部から目を離さない。
「俺がやる」静希が鋭い眼差しを向けた。
春希が慎重に鋭い鉤子を手に取り、静希に手渡す。
「静希、止まれ!」律がモニターを睨みながら声を上げる。
「わかってる……」 静希は一瞬動きを止めたが、すぐに呼吸を整えた。
「翔也、血管鉗子」
「春希、追加の止血準備を」
「了解」
静希は慎重に鉗子を移動、弾丸を掴む。
「……抜くぞ」
ゆっくりと、意識して力を込めて。
カツン──
弾丸が外れた瞬間、鮮血が噴き出した。
「クランプ!」翔也が叫ぶ。
春希が先に血管を押さえ、翔也が鉗子を固定する。 静希はすぐに縫い合わせを開始した。
「……バイタル、安定してる!」律がモニターを確認しながら安堵の声を漏らす。
張り詰めていた空気が一瞬で緩み、手術室に静寂が訪れた。
静希は最後の縫い合わせを終え、深い息を吐く。
「……お疲れ」翔也が静かに話した。
春希と律も、肩の力を抜いた。
蓮の心拍は、安定したリズムを刻んでいた。
──数時間後、回復室。
「……ここは……」
蓮がうっすらと目を眺める。
「目が覚めた?」春希が微笑む。
「手術は無事成功。しばらくここで安静にする必要があるけど、歩いたりとかは問題ないよ」 翔也が優しく言った。
「……ありがとうございます」
蓮のかすれた声に、2人は小さく笑った。
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蓮はぼんやりと天井を見つめていた。
痛みはある。 でも、それよりも、心臓の鼓動がしっかりと感じられることに安堵していた。
「……ずっと、ここに?」
隣にいる律に向かって、かすれた声で尋ねる。
「目を覚ましてからも交代で見てたよ」律は優しく答えた。
「……ありがとうございます」蓮は目を閉じた。
「当たり前だろ。死なせるわけがない」翔也が腕を組んで、ほんの少し笑った。
「しばらくは無理しないこと。歩くのは問題ないけど、傷が開く可能性がある。注意してね」律がカルテを確認しながら言う。
もう言われたけど、とか余計なことは言わない。
「喉、乾いてるでしょ?とりあえず飲んで」
蓮はお礼を言い、慎重に口をつける。ほんのり温かい液体が喉を潤し、少しだけ気分が落ち着いた。
「……みなさんのおかげですね」蓮がぽつりと呟く。
「そうだな」 静希がちゃんと安静にと言いたげな顔で返事する。
「しばらくは絶対安静。わかった?」翔也が釘を刺すように言う。
「わかってますって……」蓮は小さく笑った。
──窓の外、夜が明けていた。
蓮は静かに目を閉じ、少しだけ深い息を吐いた。
確かに、ここに。
次回もお楽しみに!




