27話 side 蓮の担当医 春希・静希
side春希
その日はとある少年の健康診断の予定が入っていた。
「今日の検診って誰だっけ?」
「7歳の男の子だろ」
「あー、噂の」
「旧一条家の虐待児だとか。死にそうなところを陛下が助けたらしい」
「陛下、子供関係は特に厳しいもんな。一条家が廃家になったのも納得だぜ。」
彼を担当する医者は僕、静希、翔也、律の4人だ。様々な科がある中で、いくつかを掛け持って患者をもち、なおかつ腕のいい人間が集まっている。しかし…
「みんな、集まって。今日は知っての通り神谷蓮くんが検診だ。しっかり見る必要がある。僕が先行して彼を見たけど酷い状態だった。現時点でわかってることを伝えるから覚えてね。ミーティングを始めます」
「…では最後に。静希、気まずいのはわかるけど一条家での彼の扱いは別に君のせいじゃない。蓮くんのこと大好きだろ?しっかり見てあげるんだ、彼が頑張った証を。」
「…わかってる」
そう。静希は今日の患者、蓮くんの血の繋がった兄。王宮に勤務して、仲良くなってから聞かせてもらった話。
静希には弟が2人いて、そのうちの1人が酷い扱いを受けている、自分はそれに何もできない、と。
静希が部屋を出る。
「静希、ブラコンだからねぇ」
「本人の前では言っちゃダメだぞ」
「はーい」
「あっ、言ってなかったけど検査は朝8時、あと30分後だから用意してきてね。って静希にも言っておいて」
「了解」
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side静希
考えるのは、何もしてあげられなかった大切な弟のこと。
七年前、一条家に誕生した…かのように思われた神谷家の四男である弟は生まれた時から地下牢で過ごし、家族の中でもいつでも会えたのは当主とその妻のみ。年に一度会えるか会えないかくらいだった。
何もわからないような年齢の時からあの環境で過ごしても性格が歪まなかったのは、神谷家の能力の一つ、絶対記憶のおかげだろう。一条優香に拐われた時の記憶も忘れることなく記憶されている。
血のつながりがある大切な弟がボロボロで倒れているのに何もできなかったことも、ちゃんと覚えている。
そんな自分に後悔する毎日だった。
あるとき、一条家が廃家になったと知った。あの地獄の家から抜け出せる喜び、弟たちがもう苦しまなくていいという喜び。
しかし同時に考える。何もできなかった自分が、弟達と同じような待遇で平和に生きていていいのか?何もなかったかのように会うなんて絶対にできない、してはいけない、と。
また後悔に襲われる。弟達と生きたい、僕なんかダメだ、二つの思いが交差してもうどうしたらいいかわからなくなった。
なんの因果か一番下の弟である蓮は王宮に運ばれ、僕と僕の同期の優秀な医者で診ることとなり、今日がその日である。
絶対無理だ。
そもそも蓮が僕のことを兄として認識してくれているかすらもわからない。
あなた誰、とか言われたらもうタヒぬ。わかっていたって悲しいものは悲しいのだ。
そんなことをうだうだと考えているうちに検診の時間が迫る。
よし、流れに身を任せよう。
そんな決意をした兄、時刻は8時3分である。
いつか別視点からの過去編も書きたい。




