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 やばい、俺の召喚したライオンに少女が食べられそうになっている。

 なにか、なにか俺にできることはないか?

 あの少女をみすみす死なせてしまえば、俺の沽券は地に落ちるだろう。

 いや、誰に見られているというわけでもないので別に構わないのかもしれないが、やはり男としてみすみす少女に危害が加わるのを許容するわけにはいかない。

 待ってろ、俺が絶対に助けてやる!


「あ……」


 そんな決心を固めていたが、ちょっと考えすぎていたのか、ライオンは瞬く間に少女に襲いかかり、馬乗りにおおいかぶさっていた。ライオンが何かを引きちぎるのが見える。ライオンが顔をあげた拍子に真っ赤な血が舞っていた。ごめん、いろいろ遅かったです。


「ぐるルゥ……」


 そして少女を十分に蹂躙したライオンは食事を終えようとしていた。

 え、ちょっと待って。このモンスター止めるのってどうするの? このままの流れだと俺食われちゃわないか? 待ってそれは聞いてないぞ。俺の能力で俺が死ぬ……? いや確かにその辺を保証されてたわけではない。十二分にありえる話だ。


「に、にげるうううう!!」


 ということで俺は駆け出した。

 見境なしの全力ダッシュだ。

 とりあえず元来たスラムの方向に全力疾走。

 早く、早く、早く離れるんだ! もうあいつがどうなるか分かったもんじゃない。俺ですら制御不能だ。まぁもうこの街がどういうことになっても知らないもんね。俺の命のほうが大切だ。おのおの頑張って生き残ってくれ。いち早く危険を察知できた俺は、どこか遠くへ逃げちゃうよん。結局情報がものを言うのだ。情報を得られなかった情弱が辛い憂き目にあい、情報をつかんだ賢いものが生き残る。人の世はそういう仕様になってるのさ。


 そうとも。俺は走る。どこまで走るんだ。


 逃げる覚悟を固めた俺には、もはや一切の罪悪感など存在していなかった。

 自分の身を第一に考え、そのほかの全ては二の次だ。

 これが俺流。俺の素晴らしいところ。俺に全世界の人間がほれる瞬間さ。これがたまんないんだよな。俺ですらもう俺がやばい。やっぱり自己中心的な考えはほんとうにやめられないぜ。


「おい! どこいくんだー!? ちょっと止まれよ」


 スラム街を走っていると、割と近くをすれ違った男の一人に話しかけれた。

 と言っても多少は距離があり、男はそこそこ大きな声で語りかけてくる。

 なんだ? ちょっと見てみても何人もでたむろしてる感じだぞ。まだ歳は若そうだし、ヤンキー軍団といったところか? け、社会のクズかよ。なんかニタニタしてる雰囲気というか、社会を楽観視してる感じが死ぬほど気色悪いんだよな。例に漏れずこいつらも俺を引き止めてなにか暇つぶしでもしようって魂胆だろ。ガチできめーな。


「おりゃ、これでもくらえ!」


 俺は再び能力を使用した。

 少し離れた場所、男らの近くに、先程と同様の光る魔法陣が浮き上がる。

 そこから出てきたのは鎧を来た人間だった。

 全身を甲冑で包んでおり、兜で顔は伺えない。

 全体的に古めかしい雰囲気をまとっていて、大昔からタイムスリップしてきましたと言ってもなんの違和感もないような感じだ。いや、むしろ古のほこらからミイラとして出てきましたといっても信じられるかもしれない。

 でもモンスターじゃなくて人間かー、と思ってしまった矢先、男の手が人のものじゃないことに気づく。うじゃうじゃと、イソギンチャクのようなものが揺らめいているのだ。

 うん、これも十分気色悪いな。人間じゃなかったわ。


 俺が現場をダッシュで駆け抜けていくと、視界の端でイソギンチャク鎧モンスターが男らに襲いかかる光景が目に入った。

 それだけ確認し、俺は再び前を向いて走る。


 そしてひたすら走り続けた俺は、ある程度ゆとりのある通路に出た。

 これはあれか人通りは少ないが大通りと呼んで差し支えないだろう。

 お、目の前になんか門のようなところがある。

 関所とでもいうのかな。ここから外に出れるだろ。俺はいくぞ、もうつっきるぞ。


「おりゃあああ!!」


「おい、君、止まりなさい!」


 俺が関所を通り過ぎていくと、横から瞬時に声がかかった。

 この門に勤めているやつなのかな。

 俺は誰にも止めれないぜ。


「おーい、待て! 身分証を見せなさい!」


 門番の男は走りゆく俺を追っかけてきていた。

 なに? なんてやつだ。もう怖いよ。鬼ごっこいくぞ。いくぜ!


 俺はますます追いつかれるわけにはいかなくなり、速度をあげた。

 正直もうかなりきつい。かなり体力を奪われているが、ともかくそんなの関係ねぇな。俺はもうここから離れないといけないんだよ。あれ、ていうかやっぱり目の前が思いっきりひらけたな。街の外、建物の類なんか一個もないぜ。これは貰ったな。脱出成功だ。


 後ろを振り返ると、門番さんはもうギブアップしていた。きたこれ、最強!

 もうやばすぎ、俺に勝てるやつはマジでいないんだよ。これはもうほんとにやばすぎる。とにかくヤバすぎて、ヤバすぎ音頭を踊りたいくらいだわ。いくぞー、はい、やばすぎる! 公園に、行きたい! 腕立て伏せ! ふっ、決まったな。



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