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やばい、とんでもない状況になったぞ。
なんかスラムを抜けて人の多い場所に出ようかと思ったら、変なやつらがめちゃくちゃいた。というか三人の人間が路地裏でなにやら取り込み中のようだった。
あー、どうしよ。なんか女の子が一人で絡まれてるけど、俺は出しゃばらないほうがいいよな。俺なんて出ていったところで何もならないし、ボコられてひどい目に合うだけだ。
「おら、いくぞ」
あーでも女の子がどっか連れて行かれそうだ。本当にどうしたらいいんだ。でも俺は逃げたい。流石に見ず知らずの人を助けるほど俺の精神は成熟していないんだ。もう死にたい。こんな自分がもう嫌だよ。どうしたらいいのかな。やっぱりさっきの始まりの小屋に戻って、マットに顔を埋めて窒息死したほうがいいのかな。そうしたほうがきっと気持ちよくなれるし、超きもちすぎるわまじで、絶対そうしようあとで。でも今はそれどころじゃないよな。まじでやばいわどうしよう。
俺が内心葛藤している間にも、女の子は連れて行かれてゆく。
あー、俺にも力があればな。ムキムキの筋肉バカなら、あんなやつらボコボコにできるのに。でもそんなことないし、大人しく陰キャムーブするしか……
「ん? 力……?」
あれ、そういえば俺なんか能力貰わなかったか? そういえば天国でそんな話を神様とした気がする。そうだ、今思い出したけど絶対そう。どんな能力だったっけ? 確か俺が戦うのが怖いから、他に頼るような能力にした気がする。モンスターを召喚する能力だったっけな。あれだったらここで使ってみるか? そうだよなそれしかない。なんで今まで閃かなかったんだろう。俺が戦わずしていい感じにできる可能性があるんだから絶対やるべきだろ。むしろこの時のために選んだ能力なんじゃないかってレベルだ。仮に失敗しても俺ノーダメージだし、完璧な能力だなさすが俺。でも正直使える感覚とか全くないし大丈夫かな。
「いや、でもやるしかない。ものは試しというやつだろ」
俺は早速男たちの後を付けてみた。
路地を進んでいる。
あ、角を曲がった。
その角まで早足でいきまして……
俺は男たちに限りなく接近し、様子を伺う。
この距離なら流石に圏内にはいるんじゃないかな。まぁどんな能力化わかったもんじゃないけど、さっきも言ったようにデメリットはないわけだからなんでもやってみよう。
「……よし、いけ。能力発動! これでいいのか?」
俺はなんとなく男たちに手を伸ばしつぶやいてみた。
やばい、これ失敗したら完全にいたいやつじゃん。大丈夫かな?
しかしそんな俺の心配は杞憂に終わり、俺の手をかざした少し先の地面に魔法陣のようなものが浮かびあがった。こ、これは……!
「な、なんだ!?」
男たちも光によって流石に気づき、俺と同じく魔法陣に対し驚きの表情を浮かべている。
そしてその魔法陣から、とある何かがせり上がってきた。
それはライオンのような生物だった。
金色のたてがみに、黒い胴体。
体長は二メートル以上はあるだろうか。
凄くデカく立派で、ライオンというより熊に近いのかもしれない。
ライオンは現れたところで、その場で溜めの態勢に入った。グルルルぅと今にも飛びかかろうといったところだ
やばい、本当に召喚しちゃったよモンスター。これはもうとんでもないぞ。こんなことできるなんて自分でもびっくりだな。能力を貰ったというのはどうやら本当だったらしい。
そして驚く現場をよそに、ライオンは男たちに飛びかかった。
ものすごい速さで、一瞬消えたかと思うほどの躍動感だ。
「う、うわああああああああ!!」
男たちのうちの一人が、ライオンに押し倒され、肩から食われていた。
完全に肩がえぐられ、胴体の四分の一くらいがなくなっている。
男は白目を向いて、失神していた。
血も大量に吹き出てるから、もしかしたら死んだのかもしれない。
「な、なんだこいつぅぅぅううううう!!」
そして後ろを向いてもう一人の男も逃げようとする。しかしそれを逃さないとばかりにライオンは男に飛びかかり、押し倒して、かじっていた。
ぐがあああああああという断末魔を最後に、男は何も発さなくなった。
ああ……なんだこれ……ただの恐怖映像でしかないんですが。まさに弱肉強食。エレガントさの一欠片もないですよこれ。戦闘というより蹂躙だなこれじゃ。
「ひ、ひぃ……」
そして次にライオンが目を向けたのは少女の方だった。
銀髪の彼女は尻もちをついて完全にこわばってしまっている。
もう自分が死ぬであろうということを悟っているかのような表情だ。ああ、悪くないその顔。なんだかこの状況で考えることじゃないのかもしれないが、マジでいいわそれ。やばいな、俺変な癖があるのかな、いや、そんなわけない、俺は純情な男の子だ。そんな頭のおかしいこと思うはずがないじゃないか。
「やばいな、このままじゃ女の子普通に食われちゃうぞ」
どうしたらいいのか、俺は困ってしまっていた。
マジでどうしたらいいんだよおお!