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「う、うぅ……おばけ怖いよう…………うわ! や、やめろ、そこは俺のズボンの裾だああああ!! ……あれ?」


 俺は気づけば知らない場所にいた。

 周囲は真っ暗……いや、薄暗い。

 どうやらどこかの部屋にいるようだった。

 なんかほこりっぽいし、机やら椅子やら小道具やらが散乱している。

 マジでどこですかここ。


「どっかの部屋なのは確かだけど、もしかして誘拐されたとかか?」


 そんなべたな考えが頭をよぎるが、近くに窓があることに気づく。

 カーテンで仕切られていて、外から僅かな光が差し込んできていたのだ。


 俺は近寄って開けてみる。

 そこには汚い建物が並んでいた。

 どこかの裏路地感がある。


「やばい……何がどうなってんだ」


 ともかくこんなところで止まっていても何も始まらない。

 俺は横たわっていた体を起こした。

 どうやら汚いマットのようなものの上で寝ていたようだ。

 うわー、ホントにほこりっぽくて嫌だなぁ。もうどうかなりそうだわ。


 俺は散らかったものに気をつけながら部屋を縦断する。

 部屋には窓の他にドアもあり、そこを開くと、廊下のような場所にでた。

 といってもほんのちょっとした玄関のような感じだったので、目の前にあった扉から外に出れた。


「うわあああああああああああ!!」


 俺は意味もなく叫んでみた。

 外は普通に明るく、昼間のようだ。

 景色は窓から覗いたときと変わらず、やはりどこかの裏路地っぽい場所だ。

 なんというか……あんまり華やかな感じじゃないな。ちょっと先にある小屋なんかボロボロで半壊しちゃってるし。マジでどうなってるんだ?


「あ、あんたは、どこのものかね」


 すると突如として話しかけられた。

 目を向けてみると、年老いたおばあさんかおじいさんか分からない人が、杖を付きながら俺に寄ってきていた。


「すみません、実は自分も何故ここにいるのか全然分かってなくて……。もしよければここがどこなのか教えていただけませんか?」


「こ、ここは、スラムだよ。あんたみたいな、若くて健康そうな者が来る場所じゃない。帰る場所に帰るんだよ」


 そんな風に進言してくれた。

 スラムだって? スラム街とかってこと? そしくよく目の前の人物を見てみれば、かなり薄汚い服装をしていて、肌も汚れている感じの色だ。えー、ここってそんなに治安が悪い場所なの?


「ここってなんていう名前の地区なんですか?」


「さ、さぁ、ここの名前なんざとうの昔に忘れちまったよ。まぁリグチャの街の一部なのは確かだが」


 リグチャの街? そんな地名日本にあったか? いや、あるわけない、となるとここは日本以外の場所か?


「ねぇ、おじさんかおばさん。日本って場所しってますか?」


「に、ニホン? 聞いたことないね」


 マジかよ。ここ異世界じゃーん。


「思い出した。俺転生したんだったわ……」


 そうだった、俺は神様の計らいによって異世界に転生したのだ。

 しかも二回目の。

 一回目は訳の分からない森の中だったが、今回は一応どこかの街、リグチャって言ったっけな。ともかく街の中に転生させてくれたというわけだ。そこはまぁナイスだな。ただ結局どこか分からないからそこは教えておいてもらいたかったけども。


「て、転生? なんの話さ?」


 目の前の人物は首をかしげていた。

 やべ、転生について話を聞かれてしまった。これはもう消しておくしかないのかな。いや、でも別に転生したことがバレたとしてもどうということもないか。しかもこんな変な老人にバレたところでどうなるというわけじゃない。ただちょっとどもっててなんか微妙なんだよな。目障りというか。でもそんな感情でこの人を殺してしまったら、俺は完全に悪い人になるからな。そこは流石に俺も人間だから節度は守らないとな。


「というか、えーっと、おじさんかおばさんはどうして僕に話しかけてきたんですか? もしかして僕と勝負したいんですか?」


「しょ、勝負? 何を言っておる?」


「いや、ていうかなんか喋り方も変ですし、ちょっと気持ち悪いのであなたのような人は僕にあまり話しかけないでも貰えますか? 周りから同類と思われたら悲しくなっちゃうんで、そこはお願いします」


「は、最近の若者は随分とけったいになっちまったねぇ、ま、まぁそういう奴らが集まるところがここだからねぇ。気にかけた儂がバカじゃった」


 そう言っておじさんかおばさんは背中を向けてどこかに去っていった。

 あー、なんだったんだろう、この時間。もうホントに無駄な時間を使ったとしか思えないな。

 でもまだおじさんかおばさんの姿は見えてるぞ。これはまだ間に合うんじゃないか? あの人をどうにかして殺せれば、今の俺の行動には意味が見出され、無駄な行動をしたということにはならないんじゃないか?


 どうする? どうやってあのおばあさんかおじいさんをやる?


「ねぇ、おにさん、何してるの?」


 と、そこでさらに後ろから話かけられた。

 そこにいたのは子供だった。

 たぶん男の子かな。こいつも汚いな。


「ま、もう何だっていいや!」


 俺は純粋な子供を見ていると、もう何もかもどうでもよくなり走り出した。

 凄く走り回って、疲れたところで元いた小屋のマットにダイブした。

 あー、ほこりが舞っている。くしゃみがでそう。しかも固くて寝心地悪い。がおおお!! もう人間やめよ!



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