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「やばいなぁ、変な転生しちゃったなぁ」


 俺は途方にくれていた。

 神様が怒ったかと思えば、いきなり異世界に放り出されてしまったのだ。

 しかも草原のど真ん中という最悪の場所に。


 あー、これ本当に異世界なのか? ひょっとしたら夢って可能性も……まぁないか。


「うっしゃ、まぁウダウダしてても仕方ないか。なんとかなるだろ!」


 俺は無理やり元気を出していくことにした。そうでなければやってられない。


「これからどうしようかな。異世界だろ? やっぱり異世界と言えば豪遊ハーレムだよな。まぁでも俺の場合女の子と話すのはちょっと緊張して無理だから、お金持ちになって遊ぶだけにとどめておこうかな」


 俺はそう決めた。

 やはり夢はでっかく持たなければだめだ。


「とりあえずここを脱出しないと……って、あれ?」


 そんなことを考えていると、ふと遠くのほうがいささか騒がしいことに気が付いた。

 なんだ、なんか生物の鳴き声が聞こえるな……それもかなり荒々しいんだが。ひょっとしてやばいんじゃないか。何がやばいのかは全くわからないけれど。


 そして次の瞬間だった。

 少し離れた場所にあった林っぽい場所から、一台の馬車が飛び出してきた。

 え!? 馬車? すごい、こんなところに来るなんて本当にすごいよ。もうたまんないよ。


 そしてその馬車の後ろに、何匹もの生き物が追従してきた。

 ぐえぐえ! という鳴き声に聞こえる。なんか人のようで、肌の色は緑色とか茶色っぽい色で、なんとも気持ち悪い感じの色だ。物凄い不潔な生活を送った人でも、こんな肌色にはならないだろうと思えた。


 いや、そんなことはどうでもいい。これは一体全体どういう状況なんだ? 見た感じ馬が猛スピードで走ってるぞ。馬が小さい人形の生き物を先導してる? いや、まぁなんとなくだが人形生物が馬車を追っかけているだけのような気がする……


 その馬車を引く馬は俺に気づいたようで、かなり急なカーブを描いて俺から離れていこうとする。

 しかし、それがいけなかったのか、勢いあまりすぎて馬車が横に転倒してしまった。馬も横にスリップし、こける。馬は怪我をしてしまったようで、立ち上がれないでいた。


 そして、当然そこには続いていた人形生物たちが群がってくる。


「う、うぎゃああああ! だ、だれか助けてええええええ!!」


 そして無慈悲にも馬車の中がこじ開けれ、中から人が連れ出されていた。

 こちらは普通の人間に見える。四十は超えているであろう男のようだった。なんとなく外国人っぽい顔立ちかな。

 そしてその男は何体もの人形生物に殴られ、引っ張られていた。


「や、やめてえええええええ、ぐぎゃああああああああああ!!」


 人形生物一匹はそこまでの膂力はないらしい。しかし数が集まればその力は膨大なものとなり、引っ張られた男の腕が引きちぎられていた。


 ああ、いたい、痛そう。見てるだけでヤバい、なんてグロ映画? もうやばすぎるわ。


「やばいな、これはもう巻き込まれないうちに逃げたほうがいいのかも……」


「ひぃ、きゃあああああ!」


 すると今度は女の声が聞こえた。

 見てみると、中からさらに人が引っ張り出されていた。

 声に違わず、その人物は女に見えた。

 それにまだ小さい、といっても中学生くらいかな。

 女は今にも人形生物たちにいいようにされようとしていた。男にならうのであれば、間違いなく殺されるだろう。

 こ、これは……やばい。流石に女の子を置き去りに逃げようものなら男の恥だよな……でも俺にはなんの力もないし、無理なものは無理であって……いや、そんなことを言ってる場合じゃない!


「決めるんだ。格好をつけるんだ。俺は男だろ? 違うのか」


 仮に死んでしまったとしてもいい。ここで助けず見捨てるという行動を取れば、それはほぼ間違いなく俺の一生につきまとってくる汚点となるであろう。そんなものを背負いながら生きたくなどない。

 ここはもう賭けるんだ。

 たとえだめでも、イチかバチかで女の子だけでも助かる可能性がある。

 やる、やるしかない。


「く、くそおお、震える足、鳴り止め! もう俺は怖くなんか……ない!」


 俺は目を瞑って駆け出した。

 もちろん方向は馬車の方向だ。

 怖い、正直怖い。これからほぼ死ににいくようなものだ。

 でも俺は男。仮に一瞬先どんな辛いことが起ころうとも、俺は耐えなくてはならない。それが男ってもんだ。俺は、絶対に、男を貫き通してみせる!!


「ふおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 俺はがむしゃらに突っ込んだ。

 叫んだことによって、人形生物たちが俺の存在に気づく。

 ああ、いいさ。こいよ。もう俺は死ぬ覚悟はできているぞ! さぁ、やってみろ!









 そうして人形生物たちの群れに突っ込んだ俺は、当然のように捕まってしまった。

 当たり前だ、俺はろくに武術なんかやったことないし、運動神経もそんなに良くない。筋肉も普段だらけまくってたせいで全然付いていない。

 そんなやつがこの状況を力で打破できるはずがなかった。


 俺は人形生物たちにいいように弄ばれ、さんざん苦しい悲惨な思いをしながら息絶えていった。

 でも大丈夫……俺は、男になれたんだからな。




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