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魔法使いと繋がる世界EP2~震災のピアニスト~  作者: shiori


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第二十一話「思い出は思い出のままで」5

 その後、リハーサルの方は私の不甲斐ない演技力もあって、目いっぱい時間を使う結果となったが、なんとか時間内に終わりを迎え、すっかり日が傾いてしまったが、後は明日の本番を迎えるのみとなった。


「(うぅ……、こんなドレスを着させられて恥ずかしい……、早く更衣室に行って着替えよう……)」


 私は慣れないヒールに足をガクガクさせながら、ピアノコンクールの演奏シーン用の白いドレスの衣装に身を包みながら思った。

 肩まで見えるデザインの貴婦人が着るような豪華なドレスを着たまま人と話すのは、恥ずかしすぎる。


 明日へ向けて興奮冷めやらぬ雰囲気で各々打ち合わせが続く中、私はこっそり抜け出して裾を掴みながら速足で控え室まで向かった。

 クラスメイトには好評でも、まるで自分とは思えない本番用の衣装とキラキラとした本格的なメイクはあまりに強烈で、私は周りの視線に耐えられず逃げるようにその場から離れた。



「——————だから、もう今から変更なんてできないって!」



 自分たちの控え室へ向かう途中、別の控え室から言い争うような大きな話し声が聞こえた。


「(これは、フォーシスターズの人の声だ)」


 今日のリハーサルでの演劇も見ていたので印象的に声も記憶に残っていた。


「だって、無理だよ……。あの衣装入らなかったじゃない……」

「無理よ、担当に顔向け出来ないでしょ? リズ、今更使わないなんてわがまま言ったって」


 会話を聞く限り討論になっているのか、どうやら、衣装のことで揉めているらしい。

 そういえば、ああ見えてあんまり仲が良くないって羽月さんがこっそり話していたっけ。

 あまり自分の演技で必死で印象には残ってなかったけど、そんなことをいつぞや言われたような記憶があった。

 でも、私がここで割って入る訳にもいかないし、気にしなくていいよね……。


 私は複雑な女子の人間関係に割って入る勇気はなく、言い争いは続いてる様子だが気にせずに通り過ぎることにした。


「——————知らないよ、勝手に追加衣装作られたって、好みってものがあるでしょう!」

「本番は明日なのよ? わがまま言わないで! 明日我慢するだけでしょう」

「天里ちゃん酷いよ……、私の話し聞いてくれたっていいじゃない。一生残るんだからっ、我慢なんてできるわけないよ!」


 喧嘩はさらにヒートアップしている様子で、私は巻き込まれないように自分たちの控え室へと急いだ。



 控え室に辿り着いたが、打ち合わせをギリギリまでしているためかまだ誰も帰ってきていなかった。


「……そういえば、着替えは唯花さんと神楽さんがやってくれたから脱ぎ方分からないんだった、はぁ……、二人の帰りを待たないといけないのかな……」


 私はずっと立っていた疲れもあり、控室の椅子に座った。

 唯花さんはハイテンションで私の着せ替え人形にしてくるし、神楽さんはもう気にしても仕方ないけど、一体衣装担当はどうなってるんだ……。


 私が自力で脱ごうとして失敗して破ってしまうのも怖く、どうすることもできずしばらく項垂れていると、唯花さんが様子を見にやってきた。


「あら、知枝さん待ってくれてたの? じゃあ記念撮影でもする、いえ、この際、私用に写真集でも作りましょうか」


「なんですかそれは、ずるいです。光のためにも家宝としておくので私の分も作ってくださいっ!」

 

 唯花さんの言葉に後ろから入ってきた神楽さんが便乗して援護していた。

 こちらに迫ってくる二人、いったい何の話が始まっているのやら……。

 いつの間に二人がここまで共謀する関係になっているのか。まるで私は会話に付いていけなかった。

 

 気付いてしまったんですけど、この人たち私の事好きすぎっ?!


「作りませんから……、撮影は控えてもらえますか……、破ってしまいそうで怖くて自分で脱げなくて待っていただけですから」


「目の前にこんな立派な被写体がいるのにお預けだなんて……」

 

 ガッカリする神楽さん、キャラぶれしてませんか……、あなた……。


「あらあら、脱がしてほしいなんて、知枝さんも大胆ね!」


 こっちはもっと深刻な勘違いをしてるしっ!

 唯花さんは私の言葉を履き違えて、身体を横に揺らして見るからに不審な挙動をしていた。


「稗田さん、こういうことには遠慮がちな純粋な乙女だと思ってましたが、見られるのに快感を覚えるタイプでしたか」


 唯花さんの発言に便乗してとち狂ってしまわれた神楽さん。

 この異常さ……、本当に話しを聞いてたか? と思うほどに、狂った反応をしていた。


「あの……、聞いてます?? 酷い聞き間違いをしているようですけど……」


 私は呆れ果てて認識を改めてくれることを心の底から望んだ。


「まぁまぁ、気にせず私に身を委ねて、悪いようにはしないから」

「うん、唯花さんの方だけ見ていてくれればいいよ」


 唯花さんが息のかかりそうな距離まで近づいてきて、私の衣装に手を触れる。

 一方、神楽さんは撮影可能なケータイ端末を手に持って、画面を食い入るように覗きながら私を見ていた。



「ちょっと?! どう見ても、着替えるところ撮影しようとしてるでしょ?!」



 私は半狂乱になる勢いで二人を止めるのだった。


「うーん、気を使って盗撮しないであげたのに」

「そういう問題じゃないからね、いっそ神楽さんの秘密を全部バラしてしまいましょうか……」


 主だった目に着けるコンタクトレンズタイプや時計型の端末機器は盗撮できないよう認可が必要な形で入念に設計されているわけだが、ケータイ端末やデジカメは昔のまま撮影が出来る。

 とはいえ、決して堂々と撮れば許されるということではない。


「あぁ聞こえない聞こえない……、せっかくだから、記念撮影記念撮影……っと」


「却下却下却下!! 撮るのは舞台の上だけにしてーー!!」


 私の悲鳴にも似た叫びが控室に木霊し、その後もドタバタ劇は続きながら、帰る頃には私は明日が本番にもかかわらず疲れ果ててしまったのだった。


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