第十八話「本当に大切なこと」6
手を繋いだ瞬間、全てが満たされるような感覚がして、どうしても手放したくない気持ちになった。
浩二は優しい、ずっと甘えていたい。
彼の前では気を使わなくてよくて、ありのままの私でいれた。
誰にも渡したくない、誰にも触れさせたくない、私だけのものであってほしい。
そんな、感情が溢れてたまらなくなる。
私は寒空の下、この暖かな気持ちが逃げないように、ギュッと手を握って、彼の横を歩いた。
私は彼さえいてくれれば、それでいいからと。
*
羽月はその後も浩二とアトラクションを回りながら、満たされる気持ちでいっぱいだった。
二人にとって大切な誕生日の時間、一秒でも長くこんな幸福に満たされた時間が続けばいい、それは誰もが抱く感情であったことは間違いなくて、でも、そんな願いとは裏腹に刻一刻の別れの時が近づいていた。
浩二にメッセージを送ったのは唯花だった。
羽月の視線が外れたほんの隙間時間に浩二はメッセージを確認した。
そこにはこう書かれていた。
「“真奈ちゃんの体調が悪いので、私の家で一旦預かって様子を見ています”」
浩二は確かめるように短いメッセージに目を通し、今起きていることを認識しようとした。
唯花は今日羽月と浩二がデートをすることを事前に知っている。
つまりは、唯花は二人を気遣って、それでも伝えることをやめられなくて、このメッセージを送ったということだ。
唯花に苦労させていると分かり、浩二はちくりと罪悪感を覚えた。
「(真奈、大丈夫かな……)」
浩二の心が揺れた、大切な妹である真奈のことを心配な気持ちには変わらなくて、出来ることなら早く真奈の傍にいてあげたかったから。
————————でも、そんな感情が芽生えても、浩二は“真奈の元に帰りたい”と羽月を前にして、伝える勇気はなかった。




