第十六話「広いこの舞台の上で」6
眠りの中で、私の意識がそっと覚める。
今の状態を言葉にするなら、覚醒夢のようなものと言えるだろうか。
私が今見ているのは宇宙のような光景で、ところどころに光輝く星が付いたり消えたりしているのが分かる。
私は知ってしまった、接続してしまった。
今なら、鮮明に羽月さんの記憶を思い出せる。羽月さんの見てきた景色や思い出を。
私が羽月さんの気持ちを知りたいと思ってしまったばかりに力が暴走して、無意識に接続し、記憶を取り入れてしまった。
そして、樋坂君と視線が合い、樋坂君の記憶まで流れ込んできている。
樋坂君と羽月さんの記憶が一緒に流れ込んできたことで、二人の記憶から整合性を求めて、客観的な真実に基づく二人の思い出が、作り上げられていく。
二人の愛の始まりから、その終わりまで、二人の記憶を探りたいとは思わなくても、この機に至ってうっかり興味を持ってしまった私。
ジャーナリストでなくても、人は他人の恋路には無意識に興味を持ってしまうものだ。
それは私だって、例外ではなかった。
クラスメイトになって、二人と関われば関わるほど、二人の恋路を知りたいと思う気持ちは膨らんでいった。
知らないからこそ知りたい、興味を持ってしまうのは仕方なかった。
一度付き合って別れた二人が、どんな気持ちで毎日一緒に過ごしているのか、気にしないフリをしようとしてもどうしても気になってしまう。
二人はこの間まで付き合っていた。
でも、二人が恋人同士として仲良くしている姿は、想像するしかなかった。
それが、また、私に知りたいという欲望を持たせてしまった。
知りたい……、知りたい……。
今の気持ちも、付き合っていた頃の気持ちも。
普段は気づきもしない内なる欲求が目覚めてしまう。
思えば、これだけの欲望を持ってしまったのだから、こうなることは時間の問題だったのかもしれない。
でも、これでやっと疑問がなくなる、モヤモヤした感情だってなくなる。
それならそれでいいのではないか? 私がこんな人ならざる力を持って人の記憶を覗き見たとしても。
罪悪感はありつつも、私は手に入れてしまった記憶を、受け入れるしかなかった。
私は諦めのような感情で、記憶を受け入れることにした。
だから、これから見るのは、嘘も偽りもない、真実の記録だ。
私が初めて知る事ばかり、興奮しないわけがない。
でも、私が真実を知って、何を思うのか、それは全てを閲覧するまで分からないだろう。
私は次にいつ来るか分からない覚醒の時を忘れたまま、時系列を組み合わせてできた記録にアクセスした。
暗闇から光のある方へ向かって進んでいくように、記憶の扉をゆっくりと私は開いた。




