第十五話「フォーシスターズ」3
「今日はどうだった?」
リーダーの天里は自室のベッドに座り、リラックスした姿勢でクラス委員長の明人と通話していた。
明人の声はハンズフリーに切り替えられ天里の耳に届いた。
「いつも通りかな」
「いつも通りじゃわからないだろ」
普段の報告に上がってくる会話を聞いている限りでは、四人の個人個人の現状は明人には見えづらかった。
ファンの前での活動となるとその特徴はデータとしてもよく分かるが、こうしていると普通の女の子と少し外見がいいだけでそれほど変わらないと、明人は思っていた。
「うーん、どうなのかしらね。本番までにはなんとかなるんじゃない」
年相応の女子が抱く悩みもあるだろうと思いつつも、天里の会話はあまりに内容のないもので、余計に明人は現状把握に困っていた。
「心配だな」
「そうね、みんな疲れもあるから、本番前くらいは休み入れた方がいいかも」
「リズの遅れはいいのか?」
明人もリズの遅れは無視できず天里に聞いた。
「そこは本人の頑張り次第でしょ。どうしても気になるならあなたが聞けばいいんじゃない? ああ見えて、あなたに興味あるかもよ?」
「茶化すなよ、そんなこと一ミリも思ってないくせに」
「くすくす……本当あなたって不気味なくらい真面目なんだから」
目まぐるしく過ぎる毎日の中で、天里も疲れていた。
明人は天里の苦労をひしひしと感じていて、浮いた話をする余裕はなかった。
「俺からも声掛けはするが、頼むから仲良くしてくれよ、本番近いんだからさ」
(リズが明人に悩みを相談するなら、それは相当だろうけど、あの子に言える勇気があるわけないわよね)
リズは奥手で、男相手だと本音なんて言えないと天里は分かっていた。
だからこそ、天里は余裕を持って明人と接することが出来た。
「分かってるわよ、言われなくても」
天里は感情的にそれだけを伝えて通話を切る。
ベッドに横たわると途端に眠気が襲ってきた。
スマホの時計を見ると気付けば今日もまた日を跨いでしまっている。
天里は板挟みのような形になるのは面倒で考えるのも疲れてしまっていた。
「自分達だけで練習すると言っておいて、勝手なやつ」
通話が切れた後で、明人は溜まっていた愚痴を我慢できなかった。
こうして、事態は改善する気配を見せないまま、フォーシスターズはこのままリハーサルの日へと向かうのだった。




