第十三話「映画館へいこう!」6
目の前に置かれた可愛らしいケーキが次々と舞の胃袋に消えていく、凄い食欲を目の当たりにして、胃が持たれそうになりながら知枝は話を続けた。
「そういう環境で育ってきた主人公は成人となる一年前の15歳の時に思いきって冒険に出るの。この国では16歳から成人だからね。
きっかけは、レジスタンス活動を続ける組織から逃れるためだけど、主人公は一年後の成人の時には自分の選ぶ性を決めなければならない、それは主人公が次期女王の立場であるから国の方針すらも左右することで、その大事な選択をどうするか考えるために、世界を巡って、どちらがこの国の取るべき選択なのかを真剣に考える旅に出る決意をしたの。
そうして、色々と危機が迫る中、国外脱出した主人公は砂漠を歩いて隣国である国に辿り着くの。
その国は主人公のいたシチリア国と違って、両性が当たり前に共存する国で、そこで主人公はその国の王女様と出会って、一緒に旅に出ることになるの」
「へぇ、一気に話が最後の方飛躍していったけど、面白そうだね」
光はその出会いに運命的なものを感じながら聞いた。
「全部説明すると長くなっちゃうからね、さすがに端折るところは端折らせてもらったけど、大体そういう感じ。それで、旅の終わりに、世界の歴史が残されたサテライトって作品では呼んでる衛星からのデータを受信して、主人公と王女様は、誰も知らない過去の戦争の歴史や、これまでの人類の歩みを知って、男女による恋愛や婚姻の大切さを知りながら、惹かれ合っていくの」
「王道的なロマンス展開ねっ! そういうのが入ってくると、難しい話も読みやすくていいわね」
鋭く舞が突っ込みを入れる。話しが飛びながらも、そういう部分にはつい、飛びついてしまうのは舞らしかった。
「舞は、今でも少女漫画好きだからね」
「それは、関係ないでしょっ!」
「うん、僕はいいと思うよ、舞らしくて」
光は意地悪な笑みを浮かべながら、刺々しくなる舞のことを可愛がって見せた。
「あたしらしいって、はぁ……、妙に引っかかる言い方なのよね、それって」
「気にしすぎだって……」
二人の会話のやり取りを聞いて、知枝は姉弟としての二人の仲の良さに微笑ましい気持ちになった。
知枝は、一度呼吸を整えて、そこから最後の説明に入ることにした。
「そこから主人公は母国に戻って内乱を止めたり、未来のための選択を二人がしたり、本当に色々考えてるんだけど、入れたいシーンをどれもこれも描写しようとすると尺が取られて、どうしても凄い大作になっちゃうから、なかなか現実的じゃないのよね」
知枝は考えるだけでは実行性がなくて、現実味がないと思いながら苦笑した。
そんな知枝に光は共感して、現実性の足りない物語だと感じる知枝の力になりたいと思った。
「うんうん、面白そうで聞いて楽しかったよ。
大変だと思うけど、お姉ちゃんの夢なら、ちょっと頑張ってみるのもいいかも」
「ちょっとではないでしょ、光ったら知枝には甘いんだから。
実際に制作するとしたらかなり大変よ。
テンポをよくしようと構成を整えたって、話しの繋がりをどう持たせるかとか、登場人物の見せ場とか、ちゃんと見せるものとして作り込まないといけないから、かなりの難産になるわよ」
中途半端な出来になるのを危惧して舞がもっともな意見を言って、一旦説明は終わった。
舞が満足いくまでケーキを食べ終わった頃には、ずいぶんと時間が経っていて、バイキングの時間も終わりを迎える時間だった。
「お姉ちゃん、また聞かせてよ。ちょっと小説に書いてみたりしても面白いかも」
「うん、また聞かせるね。色々創作するなら、一人よりみんなでする方がいいかなって思ってるから、機会があったらまた提案するかも」
知枝と光の話しは店を出た後も尽きず、仲の良さを存分に表していた。




