第二十六話「私も人だから」1
自分のことを魔法使いと呼ぶ私は人からどう見えるのだろう?
尊敬? 嫉妬? 畏怖? 恐怖?
力のことを隠して、誤魔化して生きていけるのはいつまでだろう。
いつか、その力を危険なものと判断され、魔女と恐れられてしまう日が来るなら……。
せめて、祖母のように立派な魔法使いでありたい。
でも、その前に私は、立派でなくていいから人でありたい。
みんなと同じように生きて、悩んで、思い出を共有しながら、支え合って生きていきたい。
それが私の、改めてみんなと過ごしながら思い立った願いでした。
第二十六話「私も人だから」
私は退院の日を迎え、式見先生の家にしばらくお邪魔することになった。
式見先生は遠慮しなくていいと言ってくれたけど、近い将来、ちゃんと先生の好意に報いる形で、自分と向き合わなければならないだろう。
余震も減り、徐々に心の平穏を大分保てるようになったが今もまだ片耳は聞こえないし、声も出せない。
原因をこれ以上追及したところで身体が良くなるかは分からないから、当面は式見先生の家で暮らしながら様子を見るのが最善ということになった。
器官自体の損傷は見られないそうで、きっかけ次第で回復することはあるそうだが、無理に声を出そうしても自分を傷つけるだけだと分かった。今は過度な期待をしないのが賢明だろう。
こんな状態でピアノに触るのは怖い。
一度触らなくなるとその傾向は顕著に感じるようになった。
ピアノと真剣に向き合っても思うように演奏出来なければ出来ないほど、きっとピアノを嫌いになってしまう。そんな事を考えると不安になってしまって触れることが出来なかった。
こんなにピアノが私を苦しめるのは今まで生きてきた中で初めての経験だった。
ピアノはいつもそばにいてくれた友達のようであり、心の支えだったのに。




