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魔法使いと繋がる世界EP2~震災のピアニスト~  作者: shiori


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第四話「たった一つの願い」3

 私と浩二は生徒会室を見渡した。

 会議室とほとんど同じ部屋の間取りや配置になっている慣れ親しんだ生徒会室には、中央に大きなテーブルがあり、そのテーブルを囲むように今日の緊急会議の出席者が並んでいる。


八重塚(やえづか)先輩! 皆さん揃っていますのでお座りください」


 遅れてやってきた私と浩二は真面目で遠慮がちな部分もまだ残る生徒会長によって急かされた。

 10人は軽く座ることのできるテーブルの一番手前側、廊下側の席が空いていたので私と浩二はそこに並んで座る。


 正面の奥の席に座るのは私の後輩でもある生徒会長で、そのサイドには生徒会の生徒が並んで座っている。右奥には先生が座り、私から見て両サイドにはクラス委員長の二人が真剣の面持ちで座っている。


「部活会議の時間にもかかわらず集まっていただいてありがとうございます」


 丁寧にそう話を切り出した生徒会長は説明を始めた。

 それは私が事前に聞いていた通りの話しだった。


「それでは、現状について、意見や提案のある方はお願いします」


 説明を一通り終えた生徒会長がその言葉を言うと、前年、映画研究部をしていたクラス委員、周防圭介(すおうけいすけ)が手を挙げた。


 因縁を持つ彼が挙手したことで、私は予想をしていた展開通りになる予感を感じ、浩二と共に緊張感が走った。


「同じ部活が複数あるのが好ましくないというのであれば、ここは一つ互いの実力の程を計り、判断すべきでは?」


 “やはり、そうきたか”、私は直感的にそう思った。

 彼は去年に浩二たちの演劇クラスに大賞を取れられたことを悔しがっている。


「では、どうやって判断するのがよいかアイディアはありますか?」


 会長がそう問いかける、それは彼へのアシストでは? と即座に思ったが、どうやら会長はすぐに結論を出した方が、余計な争いを収められると判断しているのだろう。

 

「簡単です。どのクラスが最も演劇を上手に公演できるか勝負をすればよいのです。

 去年の学園祭で一定の需要があることは確認されていますし、ホールを一つ借りることくらいは可能でしょう。

 そこで、最も評価の高かったクラスが、一年間演劇クラスとして活動できることにすればよいのですよ」


 つまりは三クラスでの合同演劇公演会を開こうという意見である。

 分かりやすい、はっきりとした対決姿勢。すでに彼の意思は固く、その視線は横目ではあったがライバル視する浩二に向けられていた。


「そちらのクラスの意見は分かりました。では、糸原先生のクラスはどうですか?」


 会長は演劇クラスを希望したもう一つのクラスの方に意見を求めた。

 私たちのクラスを最後に選んだ、これは会長の優しさか。

 それぞれのクラスの要望を言わせた後で私たちに決断をしてもらおうとしている、そんな意図が見えた。


 この凛翔学園では各クラスを数字やアルファベットで表記もしなければ呼ぶこともない。

 部活名でそれぞれのクラスを分別している。各学年に同じ名称の部活名が許されていないのもそこに一つの要因があるといわれている。


 面倒なことだが、部活名で呼称することにした方が、より部活に力を入れている学園であることが印象付けられるため、このようにしているという話を聞いたことがある。

 余談ではあるが、そういう事情もあり、このような問題は多くはないが、たびたび発生する。


 穏便に相談をして決まることもあれば、こうして一つの座を懸けて争うことを選択することもある、それが凛翔学園の風習である。


 競争自体を悪と捉えることもできるが、競争することで意識が高まり、よりパフォーマンスが上がることも期待できる。

 大変ではあるが、理にかなっているともいえるだろう。


「賛成です。話し合いで決めるには、難しいかと思いますので。

 実力を見せられれば納得できますし、我がクラスとしてもチャレンジできる機会があることはありがたいことです」


 そう話す去年、古典芸能研究部をしていた糸原(いとはら)先生のクラスの委員長柊明人(ひいらぎあきと)

 彼らもまた演劇の素晴らしさに触れ、自分たちもやってみたいと感化されたクラスなのだろう。


“いよいよ退けなくなった”、それが私の正直な感想だった。


 私は彼らの話しを聞き、浩二の方を伺って意見を仰いだ。

 浩二は決意を固めた表情をしていた。


“自分たちが負けることはないと、その表情が語っていた”


 面白くなってきたとさえ浩二は思っているのかもしれない。

 確かに彼らの本気度を見るに、それぞれがどんな演劇を見せてくれるのか、興味がないと言えば噓になる。

 浩二の意思も確認でき、私もまた決心ができた。

 

“分からせてやればいい、私たちの実力と、演劇に対する思いの強さを”


 要は勝てばいいのだと、そう思い、私は真っすぐに会長の方を見る。

 会長と目線が合い、私の意思を受け取ったように会長は私に向けて口を開いた。


「では、漆原(うるしばら)先生のクラスはどうですか? 同意見であれば、満場一致となりますが」


 彼もまた、私の決意を理解してか、“面白いことになった”と受け取っているだろうと思った。

 そうだ、大勢の人が期待し、楽しんでもらえるものになるのなら、断る理由なんて微塵もないはずだ。

 話し合いで解決なんて無粋な真似はするつもりはすでにない。

 

 私は揺るぎない意思を持って、質問に答えた。


「賛成です。ご希望であれば、正々堂々受けて立つことにしましょう。

 ただ一つの座を懸けて、演劇の舞台を開きましょう」


 私の言葉に、誰も異論を唱えるものはいなかった。

 こうして、賛成多数、満場一致で私たちの演劇クラスの座を懸けた戦いの日々が始まった。

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