第二十三話「聖者たちの攻防」7
「また、あなたですか」
力強い眼差しで知枝はホテルで一度襲撃してきたチャン・ソンウンの姿を眼前に入れ、言葉を言い放った。
一難去ってまた一難、新たな敵の登場を前に、知枝は強気に対応した。
「残念だが、行かせないよ」
意志の固い強い視線で拳銃を向けられ、三人は動くことが出来ない。
現れた男は先ほどとは全く雰囲気が違い、顔も隠していない。
金髪で若い容姿をしており、身なりの派手さと、日本人ではない中国人の顔立ちが特徴だった。
「また私の前に現れて、あなたの目的に興味はないのですが」
「そういうわけにはいかないよ、こっちも仕事なんでね。クラスメイトが死ぬ姿が見たくなければ、早く指示に従ってもらおうか」
緊張感が場を支配し、知枝は選択を迫られる。
彼の機嫌を損ねれば簡単に引き金を引かれてしまう恐怖が目の前にはあった。
「従う気はありませんし、あなたの行為を見過ごすつもりもありません」
強気に言葉を言い放つ知枝に対して、チャン・ソンウンは余裕の表情で、仲間が倒れているのにも目もくれず、気にしていない様子だった。
「君の力はこっちには効かないよ。それは君もよく分かっているはずだ。
大人しくしてもらおうか」
「そんなものがなくても、あなたの勝手を許しはしませんっ!」
「その強気な態度がいつまで続くかな? この前の女が助けに来てくれるのでも待っているつもりか? これ以上時間を与えるほど、こっちも優しくはないんでね、今度こそ引導を渡させてもらうよ」
こちらが有利であると確信し、自信満々のまま言葉を続けるチャン・ソンウン。何かまだあるのではという予感を感じさせるやり取りの中で、浩二はベランダの外、遥か先に赤い光を発見し、知枝が狙われているのが分かった。
「―――知枝っっ!!!!」
照準器が知枝を狙っている、命の危機が迫り、鋭い感覚で胸騒ぎを感じた浩二は迷わずに危機を察知して知枝に飛び込んだ。
次の瞬間、遥か遠くのビルにいる何者かから放たれたスナイパーライフルの一撃が、知枝のいた場所に放たれ、飛び込んだ浩二のおかげで間一髪のところで回避することが出来た。
「樋坂君っ!!!」
身体に覆い被さる浩二の姿に知枝は驚き、思わず声が出ていた。
「なんとか、間に合った……」
心臓に悪い瞬間的な判断をして助けに出た浩二は知枝の無事を確認し安堵した。フローリングの上に敷かれたカーペットに小さく煙を上げる弾痕が残り、生きるか死ぬかのギリギリのところであったことが分かった。
「ちっ!! まさか、気付かれるとは勘のいいガキだな、だが、背中がガラ空きなんだよっっ!!!!」
狙いが外れ、憎悪の感情を剥き出しに豹変したチャン・ソンウンはこの機を逃すまいと焦った様子で銃撃の助けに入った浩二の方に向け、間髪を入れずに、怒りの一撃を放った。
再び鳴り響く銃声、生死を争う混沌に包まれる状況の中、舞の身体がスローモーションになりながら、リビングの床に倒れていった。
舞はチャン・ソンウンが焦り、すぐに暴走するのを予見し、居ても立っても居られないまま、足を踏み出し浩二を庇って、銃弾をその背中に受け、あっけなくそのまま倒れ込んでしまった。
「“舞ぃぃ―――――――っっっ!!!!!!“」
浩二を庇ったがために銃弾をまともに受け、無常にもカーペットの上に倒れた舞の姿を目の前で目撃した知枝は絶叫した。
声もなく二人を庇い倒れる舞の姿を見て、満足げに笑みを浮かべるチャン・ソンウンの恍惚な表情が、その残虐非道な人格を物語っていた。




