表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いと繋がる世界EP2~震災のピアニスト~  作者: shiori


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/136

第四話「たった一つの願い」2

「それで、作戦はあるのか? せっかく去年体育館の使用権までもらったのに、肝心の演劇ができないとなると大問題だぞ」

「作戦といえるものは思いついてないかな……、だから浩二を呼んだの」


 厄介なことになったことが浩二にも通じたようで、浩二もこの事態は予想していなかったようで考え込んだ。

 三年生ともなると多くのクラスが他クラスとは被らないようにして希望する部活を選んでくるから、こうした事態は嫌がらせ行為ともいえるが、起きてしまったことには冷静に対応をしなければならなかった。


「去年の浩二のクラスに感化されたんだと思う、演劇クラスを希望してきたのは、去年、二年生の時に映像研究部と古典芸能研究部をしていた二クラスだから」

「いや、古典芸能研究部に関してはそうかもしれないが、映像研に関しては私怨だな」

「私怨?」


 浩二から思わぬ言葉が出たので私は聞き返した。


「去年の学園祭の時に誤差でうちのクラスが大賞になって、悔しがってたから、雪辱を果たそうとして、今回矛先が向けられたのかもしれない……」

「それなら、映像研の目的は」

「ああ、聞けばわかるさ、予想はつくけどな」


 私と浩二の中で見解が一致した。


 不思議だった、気づけばあの頃のように、付き合っていた頃や学園祭で奔走していた頃のように自然に通じ合うように会話ができている。


 大変なことにはなったけど、これはこれで、話しやすくなるきっかけになってくれているのかもしれない。



 正直、ずっと悩んでいたから


 どんなふうに向き合えばいいのか


 私にとって、卒業までの最後の一年間を同じクラスで過ごすのはとても長い


 出来ることなら、自然に話せるようにはなっていたい


 浩二は気にしてないのかもしれないけど、私は怖かった


 どうしようもないほどに、情けない話だけど



 ほとんどの生徒に私たちの関係は知られてる。

 そんな中で、どう取り繕えばいいのか、どう誤解のないように向き合えばいいのか迷いに迷ってきた。

 噂や憶測を気にして、気に病んだり、意識してしまうのは馬鹿らしいことだとは分かっていても、聞こえてしまう周りからの声は、意図せずとも私を傷つけていく。


 個人的な私の価値観によるものがこうした事を招いていることだということも分かってる、でも、浩二には迷惑を掛けたくないから、距離感を見誤りたくはない。


 そんなことを悶々と考えていると、不器用なぐらい話しかけづらくなっていた。


「浩二、協力してくれる?」

 

 私は今一度確認した、返答は分かってる、でも、私は浩二の声で確かめたかった。


「当たり前だろ」


 あっさりとそう言ってのける浩二の言葉を聞いて、胸が苦しくなる。

 あの頃のように優しくされると、どうしようもないほど内に閉じ込めてきた気持ちが溢れてくる。


 恐ろしい。

 欲望に溺れないようにと、これ以上迷惑をかけないようにと、言い聞かせてきたのに。


 私は今一度、緩みそうになる表情を整えて、真剣に今の状況と向き合う。

 自分のことばっかり考えている暇なんてないから、みんなに迷惑をかけないように、期待にこたえられるように、約束を果たせるように、私はちゃんと自分を律してしっかりしなければならない。


「じゃあ、私は信じる。約束だから、もう、逃げたりしないよ」


 私は、浩二に向けて誓いの言葉をかけた。

 立ち止まり視線を送る私に、浩二は立ち止まり、真剣な目で私のことをよく見て、納得して頷いた。

 ちゃんと目線が合い、分かり合えたのはいつぶりだろう、私は懐かしい気持ちになると同時に、救われたように感じた。


 目の前には生徒会室の扉、もう、ここから先は退くことはできない、どんな展開が待ち受けていたとしても。


「行きましょう、さすがに待たせちゃっただろうから」

「ああ、羽月、元の表情に戻ったな、安心した」


 私は頷く、今まで着けてきた仮面が外れた瞬間だった。

 気づけば、また浩二にいとも簡単に私の内側に踏み込まれてしまっている。

 でも、そんな自分を私は受け入れようと思った。

 自分の気持ちに嘘をつくのも、もう面倒で、疲れてしまっていたから。


 私は決意を新たに、生徒会室の扉を開いた。

 

 私たちが最後だったのだろう、生徒会室にはすでに全員が揃って着席していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ