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魔法使いと繋がる世界EP2~震災のピアニスト~  作者: shiori


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第二十二話「三者三様の舞台」6

 多くの生徒が映画研究部による舞台演劇を見ようと会場内の客席に座っていく中、知枝は一人控え室のモニターで舞台の様子を見ていた。

 まだ自分の出番ではないとはいえ、否応なく緊張の糸は張りつめていく。


「アンリエッタ……」


 ライバルの名前が自然に声に出てしまう。

 意識しないようにと考えても一騎打ちとなった今、意識しないわけにもいかない。

 彼女を超える演技が出来なければ、主演失格だと、知枝は自分に言い聞かせる。


「あなたの演技、この目でしっかり見させてもらいます」


 もう、知枝はアンリエッタが素晴らしい演技を繰り広げようとも、目を背けることをやめた。


 お互いにこれまでやってきたことを信じて、最後まで演じる切るしかないと覚悟を決めていた。


 眩いばかりの舞台の照明が付き、軽快な音楽が鳴り響く。

 ミュージカル版“巴里のアメリカ人”が開演され、最初からテンポのいいドラマとダンスが展開される。


 主演女優としてリズ・ダッサン役を演じるアンリエッタの堂々とした演技、知枝はその姿に圧倒されるような気持ちで釘付けになってしまう。


「……凄いな、本番なのによく声が出てて、ダンスもしっかりしてる。やっぱり、本当にプロの舞台役者みたい。堂々として、あれだけ声を張って激しいダンスも迷いなく踊って」


 息を付く間もなく繰り広げられるミュージカル、知枝はモニターに釘付けになりながら一つ一つの演技に稽古の成果を感じさせられた。

 完璧に近づけるために努力を続けること、それは心の芯の強い人にしかできない、知枝はアンリエッタは自分に厳しい努力家なのだと改めて気づかされた。



“トントン”



 画面に見入っていると不意に扉を叩く音が聞こえた。


「はい、どうかしましたか?」

 

 一体、こんな時に誰だろうと思いながら、知枝はずっとモニターに見入っていたこともあり、警戒することなく控え室の扉を開いた。


 そして、扉が開いた次の瞬間、扉の外にいたニット帽を被り、黒いマスクをした不審な男に回避する間もなくハンカチを口に押し付けられ、そのまま腕を掴まれ反抗する前に知枝は反射的に息を吸ってしまう。


「ううううぅぅう!! うぅうぅぅぅっ~!!!!」


 強くハンカチを押し付けられ、声も出せない。

 控え室にいれば安全であると、油断していたのが仇となった。


 目を見開いたままバタバタと手足を動かし必死に抜け出そうとするが、男の力で押さえつけられ抵抗できずにそのまま数秒経過すると、暴れようとして余計に息を吸ってしまったためか、一気に意識が遠のいていき、男に腕を腰に回され支えられたまま、倒れるように知枝は気絶した。

 控室に来たのが一人であるのは把握できたが、男の正体が何者であるかもわからぬまま、意識を失ってしまった知枝は男によってそのまま連れ出されて、何の抵抗も出来ずに誘拐されてしまった。


 

「“作戦の第一段階は問題なく成功、これより搬送車輌により目的地まで移動します“」


 控え室を出て、会場の外に一気に出た男は無線を使い何者かに連絡を入れて、間髪を入れずに知枝の身体を抱えながら、男は一人手慣れた動作で足音を立てずに素早い動きで駐車場に止めている仲間の車両まで向かう。

 

 車両に到着した男は運転手の男に一言“よぉ”と話しかけ、後部座席に知枝を無造作に乗車させて、自分は助手席に満足げに乗り込んだ。


「魔女は確保した、臆することもなかったな」


 不敵な笑みを浮かべながら運転手の男に話しかける誘拐犯。


「魔女と言われてはいたが、本当に見た目は普通の女子高生か。すやすやと眠っていてくれているし、簡単な任務だったな」


 運転手の男は順調な任務の滑り出しに喜びながら、何事もなかったかのように乗用車を走らせる。


「本当にこんな小娘に超能力があるのかは知らんが、これで大金が手に入るなら、お安い御用だな」


 魔法という世間で知られていない異次元の力の真実を何も知らない金銭目的で雇われただけの二人の男は、意気揚々と車を走らせ、指示された合流ポイントまで向かった。


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