第二十二話「三者三様の舞台」2
「二人はキャストなんだから、わざわざこっちの準備手伝わなくてもいいぞ」
浩二が自分たちの教室で舞台道具の最終チェックをしているところに、達也と唯花も一緒に同席して手伝いをしていた。
「いいのいいの、じっとしていると落ち着かないから」
唯花は笑顔で浩二に言った。ずっと演劇クラスをとして共に活動し、三年生になった唯花でも本番当日となれば武者震いのように緊張する気持ちはあるようで、気が紛れるからと一緒にクラスメイトと共に準備を手伝っていた。
「僕は元々出番短いからね、気にしなくていいよ」
達也は遠慮しないでくれと言った様子で唯花と同じように振舞う。
他のクラスメイトと共に三人は準備を終えて駐車場で続々荷物を詰め込み、バスに乗車する。
最後にやってきたのは神楽で、慌てた様子でバスに乗車した。
「どうしたの?」
光は自分の定位置という具合に空いていた隣の席に座った神楽の姿を見て、嬉しさと心配が入り混じった笑顔のまま聞いた。
「どうしたもこうしたもないよ。昨日、相談に乗ってたら深夜になっちゃって、起きたらギリギリだよ」
「ええええっ、それは大変だね、もしかして、スケートの人?」
光は周りの人に聞かれると困るので小声で聞いた。
神楽がフィギュアスケート選手として有名な夕陽千歳であることはクラスメイトには秘密事項なので自然とヒソヒソ話に変わった。
「うん、相手お酒入ってて、相手をするしかなくって……」
「うわぁ……、何て厄介……」
「こっちは昨日が大会だったからね、もう競技が終わってもなかなか帰してくれなくって」
二人でスケートの話しを周りに聞かれないよう小声で話し合う。その打ち上げ飲み会の席では神楽が主役だったのだろう、光は心中察して気の毒に思った。
「人付き合いは大切だって分かってるけど、大人の相手するのって面倒くさいよね……、こっちはアイドルじゃないって」
神楽は珍しく愚痴を言っていた。
確かに夕陽千歳のような若くて可憐なフィギュアスケートの選手は煌びやかな衣装でスケートリンクを回るのでアイドルのような扱いを受けがちである。
スタッフの中にも親切丁寧な人もいれば、さりげなく言い寄ってくるような人もいることは以前から聞いていただけに、光の心境は複雑だった。
「ご愁傷様だね……、でも間に合ってよかったね」
「うん、だって光といると安心するから」
隣り合って座り笑顔になって、こっそり手を差し出して指を絡め、手を繋いでくる千歳の姿を見て、光は一層千歳のことを愛おしく思うのだった。
「(あらあら……、はぁ、朝から見せつけてくれちゃってっっ)」
隣り向かい側の席に一人座る知枝は見ているだけで恥ずかしい気持ちになった。
空席である最前列の一つ後ろの席に陣取っていたため、後ろの席からは二人の姿はよく見えないとはいえ、なんたる大胆な求愛行動なのかと知枝はリア充を前にして憤慨する心境で、そっと視線を逸らして台本に目をやるか、外の景色を見るしかなかった。




