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第8話 食料品コーナー

 どれほど眠っていたのだろう。

 気が付くと外は真っ暗になっていた。

 あくびをしながら、お腹が空いていることに気が付く。

 そう言えば、食事はどうすればいいんだろうか。

 この世界に当ては無いし、食べ物を買うお金も無い。

 無いものばかりで、寝起きだというのに絶望で頭が一気に覚醒する。


「佐助」


 佐助はまだ戻って来ていないようだ。

 モンスター退治に出かけたままか。


 だが、外からガサガサと音がし、佐助が小屋に走って戻って来る。


『ニャン!』

「……おかえり」


 まるで俺の寝起きに合わせて戻ってきたような、それぐらいタイミングのよさを感じた。

 帰って来た佐助はこちらが指示する前に、ポイントがどれほど溜まったのかを表示させてくる。

 褒めてほしいのだろう。

 また頭を撫でてほしいのだろう。

 それなりの仕事をしてきたというのなら、どれだけでも撫でてやろうではないか。


「……二万五千ポイント?」


 俺は見間違いかと思い、ゴシゴシ目をこすり、もう一度表示されている数字を確認する。

 もう一度見てみるも、やはり25000と表示されていた。


「二万五千って……どれだけスライム倒してきたんだよ」

『ニャン!』


 尻尾を振り振りしている佐助。

 俺は半笑いで佐助の頭を撫でてやる。


 喜ぶ佐助を横目に、これだけポイントがあればそれなりに商品を買えるであろうと心を躍らせる。

 いや、心が躍るのはカタリナさんに会えるからであろう。


 俺は立ち上がり、【家電量販店】のスキルを発動させる。

 さあ、カタリナさんと俺の……幸福な時間の始まりだ!


 小屋の中の壁に扉が現れ、左右に開く。

 その扉の先には、女神が笑顔で俺を出迎えてくれている。


「いらっしゃいませ、幸村さん」

「いらっしゃいました。カタリナさん」


 彼女の笑顔を見るだけで身体が熱くなり、心がとろけてしまいそうだった。

 俺の顔はみっともない笑みを浮かべているのではないだろうか。

 少し不安になり、無理矢理顔をキリッとさせる。


 だがそんな彼女を前にしても空腹が満たされることはない。

 情けないことに、カタリナさんの目の前でお腹がグーッと鳴ってしまう。


「お腹が減っているんですか?」

「は、はい……食べる物が無くてですね」

「それでは、食品コーナーをご用意(・・・)しましょうか?」

「食品コーナー……そんな物あるんですか?」

「ありますよ」


 是が非でも食事をしたいと考えていた俺は、思考する前に脊髄反応で「お願いします」と彼女に伝えた。


 するとカタリナさんは、バスガイドが乗客に観光名所を案内するように手を上げる。


「それでは、食品コーナーをご用意します」

「!?」


 彼女の言葉と共に、景色に変化が起きる。

 遠くの()に向かって景色が飲み込まれていく。 

 量販店であったはずのそこは、真っ白な空間だけが広がっていた。

 しかし次の瞬間、景色が飲み込まれていった方向と真逆の方向から新しい景色が飛び込んで来る。


 そして俺の立っていた周囲は食品が立ち並ぶ、スーパーのような景色に変化していた。

 店の造りじたいは量販店のままだが……野菜やお菓子、他にはジュースなど様々な食品関係ばかりというラインナップ。

 本当に食品関連の物が用意されている。


「えっと……家電量販店ですよね、ここ」

「はい。でも日用品も全て用意しているんです。家電量販店なんて、名前だけですね」


 可愛らしい笑顔のカタリナさんを見ると、細かいことはどうでもよくなってくる。

 彼女が笑顔でそう説明しているからいいではないか。


 お腹が減っている俺は、早速商品を見て回ることにした。

 しかし俺はここで大事なことを思い出す。

 調理器具が一切ない。


 ここで商品を買ったところで、調理する環境がないのだから意味が無いのでは……?

 レモンを手にしながら俺は呆然とする。


 するとカタリナさんは俺の様子に気づいたのか、ニコニコしながら口を開く。


「調理器具もありますよ。もちろん、有料ではありますが」

「ありがたい……さすがカタリナさんですね」

「用意したのは私じゃありませんけど」


 俺はホッとため息をつき、食品をまた見て回ることにした。

 商品の値段――ポイントがどれぐらい必要なのか、それも確認しておかないと。


 レモンは100ポイント。

 ブロッコリーは200ポイント。

 なるほど……ポイントはほとんど日本円と変わらないと考えても支障はなさそうだ。

 

 現在俺が所持しているポイントは25000。

 食品関連なら好きに購入できる。


 佐助は何か食べるだろうか。

 って、あいつはロボットだから何も食べないか。

 チラリとあいつがいるであろう方向を見ると……なんと佐助は、カタリナさんの胸の中にいるではないか。


「この子、故障していてどこにいったか分からなかったんですけど、幸村さんのところにいたんですね」

『ニャン!』

「あはは。幸村さんに心を貰ったんだね。良かったね」


 カタリナさんの胸に納まる佐助の目が、デレデレのマークになっている。

 そこを代われ! と俺は考えるが、しかし佐助を抱くカタリナさんが嬉しそうだったので、その顔を見れるだけで良しとするか。

 と、彼女の胸に納まれるはずのない自分を無理に納得させるのであった。

 羨ましい……

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