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第44話 使命?

「て、敵は王国の北側に攻め込もうとしております」

「そうなの?」

「はい……まるでモンスターの津波です。来ていただいたのはいいのですが、あなたの力を持ってしても、あいつらには勝てないやもしれません」


 兵士は急ぎ足で町の北へとむかっていた。

 俺も一緒に走ればよかったのだが、しかしカタリナさんがいる。

 彼女を走らせるわけにはいかない。

 できることなら、おぶって走りたいところだが、普通に考えてそんなことさせてくれないだろう。ちくしょう。

 だから俺はカタリナさんと一緒にスクーターで兵士の隣を走った。


 まぁ、目立つよね。

 そりゃそうだよね。

 だってスクーターなんてこの世界に存在していないのだから。

 俺だって元の世界でモンスターなんか見たら驚くだろう。

 それぐらい、未知の存在なのであろう。


 町の外に到着すると――そこには大勢の兵士。

 そして、天王山たちの姿があった。


「ああ! 雲雀!」

「あなたは!」


 元クラスメイトたちや兵士たちが戸惑いと喜びの表情を浮かべる。

 どう接したらいいのか、何故ここにやって来たのか、困惑しているようだ。


「お前……俺たちを笑いに来たのか!」

「あー……そんな考えも思い浮かばなかったぐらい、お前らのことはどうでもいいよ」

「くっ……」


 天王山が悔しそうに歯を食いしばっている。

 元優等生で頼りになる男の姿はどこにいったのか。

 怒りと憎しみを込め、目をひん剥いて俺の事を睨んでいる。

 いや、本来なら怒るのは俺の方だからな。


「そんなことより、モンスターは……って、あれか」

「あれみたいですね」


 膨大で、甚大で、洪大。

 とにかくすさまじい数のモンスターが王国に向かって進軍している。

 あまりの数に、カタリナさんがゴクリと息を呑む。

 俺も隣で息を呑んでおく。

 

「…………」

「幸村さん、どうですか?」

「……どうでしょうか」


 正直言って面倒くさい。

 あれだけの数、勝てるかどうかも分かんないし、それに戦う理由がカタリナさんが守ってくれって言っただけだしなぁ。

 できることならやりたくねえな。


「あの……逃げてもいいですか?」

「逃げるんですか……? 流石の幸村さんでも勝てませんか」

「いや、カタリナさんが勝てと言えば勝ってきますよ。どうやったって」


 ええ。

 勝てない戦いでも勝ってみせましょう。

 愛の力で。

 カタリナさんへの愛の力で!


「じゃあ勝って来てくれよ! 俺たち、こんなところで死にたくねえよ!」

「頼むよ雲雀! 勝ってくれ」


 元クラスメイトたちが俺に懇願している。

 いや、お前らに勝ってくれと言われてもやる気何て出ないぞ。

 逆にやる気が無くなるから黙っててくれ。

 あ、いや、やる気がなくなった方が俺的には都合がいいのか?


「ふ、ふん。お前でもあれは勝てないだろうな」

「あー、それでいいよ、それで」

「お前は……何故そんなにもこちらの考え通りに動かないんだ!」

「お前の考えなんて知るかよ。やれって言われたらやりたくなくなるし、それにお前らを助ける理由なんて皆無だしな」


 どうやら、天王山は俺が思い通りにならないことに怒っているようだ。

 お前の都合のいい駒になんてやってたまるか。

 俺は俺の好きなようにやる。

 俺を動かせるのはカタリナさんだけだと思い知れ。


「同じ学校の生徒たちが命をかけて戦おうとしているんだ……お前はそのことになんとも思わないのか?」

「思わないね。ま、アドバイスをするとするなら、さっさと逃げればいいだろ。別にこの国を助けるような義理なんてないんだろ?」

「義理なんてない。だが、俺たちには使命がある!」

「じゃあその高尚な使命と共に死んでくれたまえ。俺は卑怯に生き延びますから」

「お前という奴は!」


 とうとう怒りを爆発させた天王山は、俺に殴り掛かってくる。

 殴り掛かってくるものだから、俺は条件反射で相手の顎を殴りつけた。


「げふっ!」


 膝カックンされたように、ガクッと倒れる天王山。

 意識は既に失っているらしく、起き上がってくる気配はない。

 そのまま寝てろ。


「はぁ……帰りますか」

「帰るんですか……?」

「うっ」


 カタリナさんが祈るように両手を合わせ、上目遣いで俺を見る。

 もちろん、その表情に俺の心は蕩けきっていた。

 顔を真っ赤にし、彼女から目を逸らしながらもチラチラとその美しい表情を見る俺。


「分かってます。分かってますよ。守ればいいんですよね? それがカタリナさんの願いなんですよね?」

「はい。私の勝手な考えですけど、やはり弱い人は守ってあげないといけないと思うんです。それが力ある幸村さんの使命だと思いますから」

「使命……」


 俺の心臓がドクンと跳ねる。

 それは使命という言葉にではない。

 彼女が俺の方をジッと見つめるからだ。


 もうどれだけ可愛いんだよ、この人は!

 そんな顔されたらやるしかないじゃないか。

 ま、そのつもりでここに来たからいいんだけどさ。


「じゃあ、俺の使命を全うしてきます。俺の力で、カタリナさんの願いを叶えてみせますよ」


 俺が歩き出すと、兵士たちが道を開ける。

 天王山たちの使命はバカにしておいてなんだけど、俺にだって使命があるのだなとしみじみ思う。

 いや、カタリナさんのために力を振るうのが使命かどうかは分らんが、それが俺の使命だと願うばかり。

 他のことはどうでもいいのだから。

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