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第40話 天王山、再び

「いやー、今日もいい仕事をしてきましたよ。魚のモンスターを沢山倒してきたんです」

「お疲れ様です。幸村さんの頑張りは、ポイントを見れば分りますよ」


 カタリナさんとの幸せなひと時。

 彼女がいるだけで、この空間が、この時間が、この世界が光り輝く。


「ユキムラ、やる気無かったじゃない」

「うっせー。そういうこと言うな。結果として俺は頑張ったの。お前の仕事やったのだって、俺と佐助だろ」

「ユキムラというか、佐助でしょ」

「佐助も頑張ったのね。偉いね」


 カタリナさんに抱っこされて目をハートマークにする佐助。

 俺も目をハートマークにしたいものだ。

 俺だって抱っこされたいよ。


 プライドなんて一欠片としてない。

 カタリナさんに抱っこされるなら犬や猫になってもいい。

 そんな変身できるような家電ないのかな?


「晩御飯には少し早いですよね」

「そうですね……」


 窓から外の様子を眺める。

 時刻は昼を回ったところ。

 夕方までも時間があるぐらいだ。


「何か映画でも観ますか、カタリナさん」

「賛成! 観よう観よう!」

「お前に言ったんじゃないよ」


 カタリナさんに言ったはずなのに、何故か反応を示すフレア。 

 フレアはテーブル席に着き、どんな映画を流してくれるのかワクワクして待っていた。


 どういうことなのか、フレアは日本語なら理解できているようで、邦画かアニメなら観られるようだ。

 洋画なんかは言葉が理解できず、観ることができない。

 何故かなんて考えたらきりがないので、ここは華麗にスルーする。


「カタリナさんは何を観たいですか?」

「そうですね……恋愛物なんかどうでしょう?」

「恋愛物……いいですね。俺も好きですよ」


 嘘ではないが、俺はアクション物の方が好きだ。

 だがカタリナさんが恋愛物を求めているというのならそれを流そうではないか。流されようではないか。


 西部映画でガンマンが拳銃を扱うように、俺はリモコンをクルクル回し、テレビに向かってボタンを押す。

 自分的にはカッコいいと思っているが……ダサいなんて思わないでね。

 やっておいて後悔していたりするし。


「じゃあ、これなんか観ますか――?」


 さあ映画を観よう。

 そう思った時であった。

 外から人の気配を感じる。

 

 草の上を走る足音。

 そして冷たい声と武器を手に取る音。

 一体なんの騒ぎなのだろう。


 俺はリモコンを手に持ちながら、玄関の扉を開いた。


「……なんだお前ら?」


 小屋の外――森の中には、大勢の兵士が立ち並んでいる。

 そしてその先頭に立っているのは……天王山だ。


「お前……世界を救う気はあるか?」

「無いね。微塵も無いね。残念ながら、全く無いね」

「なら……お前はここで死ぬこととなるが……いいのか?」


 少し血走った目つきをしている天王山。

 小屋の中から天王山たちの姿を見て、フレアが「ひっ」と声を上げている。


「死ぬことって……俺、殺されるようなことをしたか?」

「しただろう! 貴様、国王に手をかけただろうが!」


 してた。

 完全にしてたわ。

 国王を勢いで殴ったけど、こんな面倒になるとはな……

 

 しかし、まだ俺は死にたくはないぞ。

 死ぬつもりも無いし、無抵抗で死んでやるつもりも無い。


 俺は異空間からチェーンソーを取り出す。

 それを見て、青い顔をする兵士が数人。

 俺に水で流された連中であろう。


「ま、待て! まずは話を聞いてくれ!」

「話? どうやって死にたいかって相談だろ? 俺は死ぬつもりはないからそんな話し合いをするつもりはない。あ、お前らがどうやって死にたいかは聞いてやってもいいけど」

「違う違う! 君か俺たち、どちらかが死ぬような話じゃない!」

「?」


 天王山と違い、話し合いをするつもりがあるようだ。

 他の兵士たちは。


 天王山は舌打ちをし、俺から顔を逸らす。

 学校にいた頃は完璧超人って感じだったのに……今は癇癪を起している短気な人間にしか見えない。

 こんな奴だっけ、こいつ。


「この間、他の異世界人たちがとある洞窟に入ったのだが……魔族がそのことに怒りを覚えたらしくてね……我が国に攻め入ろうとしているんだよ、魔族たちが」

「ほーん」

「……それで、その……君なら魔族相手にも負けないだろうと、対処できるであろうと我が王は考えられた……そこでだ、君が国を守ってくれるというのなら、国王に手を出したことは不問にするということだ。どうだろう?」

「あ、却下で」


 ザワつく兵士たち。

 まさか断られるとは思ってもみなかったようだ。


 俺を嘗めんじゃないよ。

 俺は怒ってるんだからね。

 仏の顔も三度まで。

 いや、怒ったのは一回目だけど。

 でも、怒った仏は許しちゃくれないよ。


「却下……だと。では本当に、我々と戦うことになるのだが……それでもいいのか?」

「それでもいいけど? 十分以内に勝負をつけてやるよ」


 チェーンソーのエンジンをかけると、ピりっとした空気が周囲を走る。

 まさか本当に戦うことになるとは……


 兵士たちからは戸惑いと覚悟を感じる。


「雲雀……お前の名前は覚えたよ。俺の思い通りに行かない初めての人間……俺の思い通りにならないならここで始末する」


 ニヤリと笑う天王山。

 そうか。

 こいつらがここに集まったのは、天王山の差し金か。

 本当、面倒な奴。


 だが勝てると思ったら大間違いだ。

 こいつらの力は知らないが、この間のことを考えると大したことないだろう。

 

「やるぞ、佐助」

『ニャン!』

「今日は人間の狩りだ。好きなだけ痛めつけてやれ」

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