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第13話 対決! 男二人

 戦士のような恰好をしており、腰には剣を携えている。

 背も大きく、俺を見下ろす怖い瞳が四つ。

 俺は恐ろしい二人の男から視線を逸らす。

 怖い。こんなの相手にしたくないぞ、俺は。


「お願い……助けて」


 右に曲がってと言われると左に曲がりたくなる。

 食べるなと言われたら食べたくなる。

 外で遊べと言われたら家で遊びたくなる。


 そして助けてと言われたら、どうも助けてあげる気が損なわれてしまうものだ。

 これって俺だけなのかな?

 女の子が困っているのは分かるが、しかしどうも助けてあげようという気が起きない。

 まぁ目の前にいる男二人が怖いというのがあるんですけどね。


「残念ながら、俺には助けてやれそうにないよ」

「え、ちょ……じゃあ私はどうすれば?」


 一緒に逃げるか?

 能力を使えば逃がしてやることぐらいはできるけれど。

 だが逃げ切れるものなのだろうか?

 まだこの道具を使ったことがない。

 瞬時に別の場所に移動できるなら問題無いが……相手に追いつかれたら?

 考えれば考えるほど不安になってくる。

 やはり、この子を置いて逃げるのが一番安全か。


「その女を置いていけ」

「…………」


 助けてと言われると助ける気が失せるが、しかし置いていけと言われると置いていきたくなくなる不思議。


「置いていけと言われて置いていくと思うか?」

「え? 助けてくれるの?」

「いや、助ける気はないけど……置いていけなんて言われたらそれにも抵抗したくなるんだよな」

「天邪鬼! 君は天邪鬼だ!」


 天邪鬼……そうかも知れないな。

 人が言うことと逆のことをしたくなる性格なのは間違いない。

 同級生たちが北に向かったから俺は南に向かっている。

 これもその性格のせいであろう。

 今まで人に言われることは無かったが、言われたらそうだと納得してしまう自分がいる。


「それで……お前は邪魔をするのか?」

「邪魔する気はないけど、でも、この子を追っている理由は? それを聞いてから判断する」

「なら、痛い目に遭ってもらおうか?」


 こいつらは話し合いという言葉を知らないのか?

 こちらは穏便に済まそうと考えているのに、話を飛躍して痛い目に遭わすなんて発想になるのだ?


 しかし、容赦なく男はこちらに腕を伸ばす。

 あ、これはやられる。

 俺は咄嗟に覚悟を決め、反撃に転じることにした。

 この町に戻って来ることもない。

 なので報復を恐れることもない。

 だから最低限の抵抗ぐらいはしてやろう。


 伸びてきた相手の腕を左手で払いのけ、右拳をみぞおちに叩き込む。


「んぼらっ!?」


 反撃が来る! 

 なんて身構えていたが……なんと男はそのまま倒れ込み、起きて来ないではないか。


「おい、どうした!」

「…………」


 あれ? 意外と弱い? この方々。


「てめえ……やりやがったな!」

「いや、やってきたのはそっちだろ。俺は降りかかる火の粉を振り払っただけで……」

「火の粉どころか、てめえは燃やして消し炭にしてやる!」


 仲間をやられて怒り狂った男は、剣を引き抜き、走り出す。

 いや、武器はまずいでしょ。

 だが消し炭にするなんて物騒なこと言ってるし、殺す気は満々ってわけか。


 武器を持った相手と戦ったことなんてないし、どうすればいいのだろう。

 と言うか、喧嘩だってまともにしたことはないのだけれど。


 凶器を所持した相手に一瞬だけ身体が竦み、行動が遅れてしまう。

 どうすべきか思案している時間も与えられない、どうやってこいつを無力化するか、俺は仕方なく攻撃に転じようとした。

 が、その前に、佐助が動く。


『ニャン!』

「痛――」


 佐助の動きは迅かった。

 相手の腕を爪で切り傷を付け、武器を落とさせる。

 そしてそのまま男の腹部へ頭突きを炸裂させた。


「――いひぃ!!」


 派手に吹き飛ぶ男。

 地面を滑走し、建物に衝突し意識を失う。


「凄い……猫……え、鉄? 鉄でできた猫!?」


 結果的に助ける形になった女は、佐助を見て目を丸くしていた。

 佐助はロボット型の猫。

 この世界の人間の目にはどんな風に映っているのだろうか。

 

 だが俺はそんなことを聞くよりも、この場を立ち去りたい気持ちで一杯だった。

 もう面倒事に巻き込まれるのは勘弁だ。

 このままこの場を去るとしよう。


「ってことで、君とはここでお別れだ」

「え、いや……お礼だってまだなんだけど」

「俺はいいから、お礼ならその辺のおじさんにしておいてくれ」

「関係ない人にお礼!? そんなの意味分かんないんだけど」


 俺は女から距離を取り、手に持っていた箱を開ける。


「じゃあな」


 箱を開くと、くす玉ほどの大きな黒い球体が姿を現せ、俺と佐助の体はその球体に飲み込まれていく。


「…………」


 気が付くと……なんと俺たちは森の小屋にいた。

 一瞬だ。

 一瞬でそれなりの距離をゼロにした。

 この道具は使えるな……便利アイテム、感謝。


「え? なんでこんなところにいるの?」

「……いや、お前がなんでこんなところにいるんだよ」


 俺と佐助だけがここに飛んで来たと思っていたが……どうやら女も巻き込んで移動してしまったようだ。

 巻いたとばかり思っていた俺は、その間違いに大きく嘆息するのであった。

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