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起きたら高校一年生  作者: 未来の知恵で小狡いことをする高校生
3/3

高一の夏

史実では俺は高一のの夏で部活を辞めている。



部活の先輩とどうしても折り合いがつかず、やむを得ず辞めてしまった。


そのことを何年経ってもずっと後悔していた。

人間関係で悩んでも、努力してずっと続けておけばなぁというのは大人になってからの方が、より後悔を募らせた。



二度目の今回では前回の轍を踏むことなく、

なんとなくうまくやれており、人間関係も良好である。

いや、良好であるとは言えないか。


納得できないことがあれば先輩だろうと先生だろうと容赦なく食ってかかる。

でも、それなりの結果を出しているから文句は言いにくいという感じ。



学業も部活も順調すぎて怖いというほど順調なわけではないので、精神の均衡は保たれている。



「おはよー。」


「けーすけ!!!」

さやかだ。

こいつとは運命でもあるのだろうか。

席替えなんてくじ引きの結果でしかないはずなのに

何度やっても前後1マス以内の席に収まっている。

なんなら前回の高校時代よりも席が近いような…。


「さやかもおはよう。」


「おはよう!」

さやかはあまり長文を話さない。

具体的にいうと俺とだけ長文を話さない。

俺の顔を見ては表情がコロコロ変わるところをみると、脳内で会話をしているのかもしれない。

あと基本語尾にハートがついている気がする。

なので正確には、

けいすけ!!!

ではなく、

けいすけ♡

が正しい。

おはよう!

も、

おはよう♡

が正しい。

でもそれは俺だけにしか見えてないのかもしれない。


「今日1時間目なんだっけ。」


「現代社会よ!」


「今の現代社会っちゅーのは基本金と権力が回しとるってことなんよ(ダミ声)」


間髪入れずに現代社会の教師のモノマネを入れる。

ちなみにクオリティは自分でも惚れ惚れするほど高い。

前回の時に習得したモノマネだけど、一部のコアな俺のファンの前でしか披露したことはなかった。

帰せずして今生での初披露と相なった。


「似すぎ!!!!」

腹を抱えて大爆笑するさやかを見て満足する俺。

左の口角だけをあげて授業の準備を淡々とこなす俺。



そう言えば今は夏。

そろそろ期末考査が始まる。

そして部活では夏のコンクールが始まる。

吹奏楽部生に夏休みはないので、たいして心も躍らない。


授業でも、ここ期末出すぞーという先生の定型文が頻発するようになった。

ちなみに前回の中間考査では500人中78番といったなかなかの成績だった。

なかなかの進学校なのに、ひと学年500人ってマンモス校だよなぁ。

これが2年に上がると60人2クラスの特進と、220人7クラスの文系、220人7クラスの理系に分かれ、三年になると私文、国文、私理、国理にさらに細分化される。

ちなみに特進の生徒は現段階で入試成績上位60人で、

学年末の試験の成績如何では、希望者は入れ替え試験を受けることができる。

なかなかに現代では珍しい競争を煽るスタイルだ。



「さてさて、今日のお弁当は何かなぁ〜。」


「なんじゃろうね〜」


今日もさやかとお昼ご飯である。

さやかは本当にきれいにご飯を食べる子で、

食事のマナーが素晴らしい。

ちゃんといただきますも言うし。

箸の持ち方も綺麗だし。


「お、豚とみょうがの味噌和えだ。」


「おいしそー!

けいすけのお母さんは料理上手やね!」


「たしかに。手が混んでるよね、いつも。」


「うん!冷食入ってるの見たことないし。」


たしかに、冷食が入ってないのは前世でもそうだった。

母さん曰くコスパ悪いとのこと。


「大感謝ですね。」


「大感謝です。」


ご飯を食べた後はいつも適当に駄弁って昼休みを潰すのだが、最近は…


「はい!デザート!」


「ありがとう。今日は何?」


さやかがデザートを作ってくれている。

最近お菓子作りにハマっているらしく、手作りで持ってきてくれている。

ありがてえな。


「カステラ焼いてきました!」


「カステラ!?!?」

俺はカステラが大好物だ。

ざらめがあるやつもないやつも両方好き。


小さい頃に叔母がカステラをよく作ってくれて、

それで好きになったっていうのもある。

そんな叔母も中学の時に亡くなっちゃったんだよなぁ。


「カステラ大好きなんだよなぁ。

ありがとう!」


「どういたしまして。」


「ではいただきます。」


「どーぞどーぞ。」


「うま!!!!

え、うま!!!!!」


卵がたっぷり使われた、甘すぎないカステラは

懐かしい味がして、とってもおいしかった。

手作りのカステラを食べるのなんて何十年ぶりだろうか。

美味しくて泣いちゃいそうだ。


「そうでしょう!」

さやかは得意げな顔だ。

そうそう、この顔。

この顔が好きだったんだよ。


「さやか神だね!」


「神?」


「うん、マジ神。さやかみ。」


この時のさやかは

頭に衝撃が走った顔をしていた。


「さや、かみ?」


「そう、さやかかみだからさやかみ!」


「さやかみ!

私今日からさやかみになる!」


「おめでとう。新しい神が一柱誕生したね」


前世でもさやかにはさやかみというあだ名をつけたのだが、そのあだ名をえらく気に入ってくれて、ずっと使ってくれていた。

アドレスにもさやかみと入っていたと記憶している。



「よし、そろそろ戻るか。」


「はーい。」


「午後からなんだっけ?」


「すーがくA!」


「はーい。」


飯の後はどうにも眠くなるが、数学なら暇しないから耐えれるね。


午後の苦行を耐えたところで、お楽しみの部活タイムだ。


「けーすけー!」

今日も飽きずにみなみが迎えにきた。


みなみが俺のことを迎えに、後ろ扉から教室に入ってきた。

俺の先は窓際一番後ろで、さやかみは俺の席の右側である。


つまり必然的にさやかみとみなみはニアミスする。

今日に関してはニアミスするその瞬間二人の間に火花が散った。

「おお、行くか。」


「うん!今日も個人基2時間と全体基礎1時間だよ。」

みなみは勉強はからきしだけど、面倒見の良さから部の一年生幹部で執行部員なので練習メニューを把握している。

毎回俺がメニューをこのタイミングで聞くため、最近は先手を打って教えてくれるようになった。

「了解。」


「いってらっしゃい。」

さやかが声をかけてくれる。

頑張れそうだ。


「はい、いってきます。」

おいみなみ、さやかを睨むな。



楽器の保管庫に着き、俺は自分の楽器を取り出して、楽器と楽譜、譜面台だけ持ち、必要な小道具はポケットに詰め込む。

そして、いつも使ってる練習場所に向かう。

合奏室から近場だけど誰もいない穴場である。

そして調子を確かめるように、一音一音を大切にロングトーンでウォームアップする。

しっかり息を入れて、腹筋で音を出せばチューニングなんて何もしなくても大体合う。

もちろん合奏の前には微差も許さずきっちり合わせるが、それは今じゃなくていい。

むしろ今からどんどん音を出していくのに、今合わせると音程が狂う。



基礎練をみっちりやったところでまたみなみが呼びにきた。


「けーすけ!

そろそろだよ!」


「あいよ。」


お気に入りの練習スポットを手早く片付けて、合奏室に向かう。


自分の席に着いたところで人心地着くのだが、部長の方を見ると合図があった。


合図があったので、俺がB♭の音をロングトーンで伸ばす。


すると周りにもそれが伝播し、皆んな思い思いにハモったりあわせたりする。

最近始めた新しい習慣である。

なんかオーケストラみたいでかっこいい。


音を合わせていると偉そうな顧問が入ってきて、指揮棒で指揮者用の譜面台をコツコツと叩く。


そして、何も言わずに指揮棒を振り、いつも合奏の頭に吹くコラールを合わせる。


「うん。うんうんうん。

良くなったね。ハーモニーをちゃんと聞けてるね。」


前は学生指揮が、基礎部分を担当していたが、最近は顧問が直接指揮し始めた。

レベルが上がったからなのか、それとも他の理由があるのかは良くわからんが、俺が基礎練習を学指揮がやることについて一度噛みついたのは関係ないと思いたい。



「今日も疲れたね〜。」


「いや、そこまででもなくない?」


「けーすけは捕まった事がないからだよ!」

捕まるというのは逮捕されるということでなく、曲練習のときに、うまくやれずに集中的に指導されるということである。

全体合奏の時にそうなると地獄である。

今日はみなみが捕まった。

というか、みなみも吹いているセクションが捕まった。

みなみの音は綺麗で伸びがあるので、悪くないと思う。


「まぁたしかに捕まったことはまだないね。」


「なんで捕まんないの?」


「捕まりそうなとこくらいわかるから、そこから集中的に潰してる。

セクションもそう。

ここ捕まりそうだから今日のセクション一緒に練習してもらってもいいですか?って言ったら大体そうなる。」


「なるほどね…。」


「だって時間の無駄だからさ。

抽象的な指導で、同じとこ何回やらされてもできるようになるわけないじゃん。

顧問も悩んでるんじゃない?」


「そっか…。

ちなみに、次私が捕まりそうなとこってどこかある?」


「うーん、サックスだけでメロディと裏メロやってる練習番号Eのとこかな。

今日の通し聴いたらやばそうだった。特にお前。」


「え!?わたし!?」


「うん、たしかにここ拍感狂いそうになるけど、お前はもう狂ってた。手遅れ。

譜読み苦手なら家で原曲死ぬまで聴いてこい。」


「う…。

はーい。」


「よろしい。

じゃ、俺ここだから。」


「うん!教えてくれてありがとう!

また明日ね!」


「はーい、またあした。」


みなみと別れて俺は塾の入っているビルの中に消えていく。



「こんちは〜」


「こんにちは!」


「あ!東田さん!」

俺の名前を呼んだのは他の高校に通う萌ちゃんである。

以前、たまたまひょんなことから英語を教えたところ懐かれてしまった。

ちなみに一年先輩の高二である。

背が高い。

胸は無い。


「あ、萌ちゃん。どうしたの?」


「この前教えてもらったところ!

しっかりテストに出ました!

ありがとうございます!」


「よかった。

点数取れました?」


「はい!

バッチリでした!

自己最高点取れました!」


「おー。」

よかったよかった。

嬉しそうなので何よりです。


「東田さんのおかげです!ありがとうございます!」


「どういたしまして。

その調子で頑張ってくださいね。」


「頑張ります!」


やる気があってよろしい。



俺はそろそろ期末考査に向けて勉強するので、塾のカリキュラムは一時ストップする。

とにかく復習する。

復習アンド復習で教科書とワークを進める。

何も見ずに解けるようになったら点数が取れないわけがないので、簡単な話である。


ガツンと集中して夜の11時。

閉校時間だ。



「おつかれした〜。」


「お疲れ様。

次回の期末考査も頑張ってね。」


「ういーす。」

この時頭の中には晩御飯のことしかない。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 2回目をしっかり楽しんでいるところ。 [一言] 時間が出来たら、また書いてくださいね。
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